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還る
咳がでる
咳をする音だけが木霊する
頭の後ろが痺れるような、力が入らない
喉に痰がいつでもあるような
天井が透けて見える
遥か先の無窮の空が
更に先の群青色の天が
目蓋が重い
身体が軽い
思考が加速する
夜帷が落ちる
我は生きている
暗い、辺りは暗い
指先を伸ばしても誰も居ず
声も出ない
誰か、誰かいないのか
毛布を被ると暖かく
疲労が布団から抜け
100年も居れば大地に還るだろうか
1000年もすれば風に還るだろうか
1万年も経てば星々へ還るだろうか
更に経てば始原へと還って廻るのだろうか
その時、まわりには誰かいるのだろうか
寒気を感じ目蓋を開ける 天井が見えた
暗くて、静かな部屋の中だ
毛布を被って、目を閉じる