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地獄の釜
阿
闇が湧くよな雲に、マグマのよな陽が沈む。
何という景色だろうか。
まるで終わりの日のようだ。
しとしと雨が降る音を聴きながら、畳の上の布団で横になっている私も
夏の暑い陽に照らされながら、海と砂浜に寝転びながら空を見上げている私も
桜舞い散る中、春の陽だまりに独り、そこにたたずむ私も
セピア色の思い出にニ度行けぬことを、気が狂いそうに締めつけられる私も
あの日、小学校の窓から眺めた遥か先の山の頂上の松の先に思いを馳せた私も
冬の寒い日に炬燵に入って、受験勉強して、姉弟で蜜柑を食べた私も
全部全部、嘘で意味がなく、あの地獄の釜の中のような、マグマのような、底に落ちて、消えて、消えて、無くなるとしたら
素晴らしく美しい
吽