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天使


「シエル、身分差についてはちゃんと頭に入れておいて。”みんなの勇者様”の言動に、誰もが期待してるの」

「…わかった。でも今まで通り話して欲しい」

「この村の中でなら」


現金にも既に二つの空色はからりと晴れて、いつも通りの様相に戻っている。

全く、いつまで経っても何も変わらない幼馴染だ。多少表情筋の硬さに難が出てきたが。


温かいお茶をすする様子を眺め、初めて会った日のことを思い出す。

あれは例年より気温が下がった秋の日のことだったか。


ジューム王国の南、市街地の賑やかさとは無縁の山村に、天使が現れたのだ。



人口はわずかに100を超える程度の小さな村、セレスト村には成人していない子供が片手で数えられるほどしかいない。

太陽を眺めては畑を耕し、季節ごとの山の幸をいただくのどかな、しかし変わり映えのない日常に、成人を迎えた村人は飽いて都会に行ってしまうのだ。

感じ方は人それぞれだ、しょうがない。でもこんな村が私は今も昔も変わらず大好きなのだ。


肌寒くなってきたある日、集会所として一部開放している村長の家が騒がしかった。

何事かと遊び場の山から降りると、村では滅多に見たことのない馬車が停まっていた。


(どんな人が乗っているんだろう)


好奇心からうろうろしていると村長の方から私に声をかけてきた。


「アンシエル様に一番歳の近いものにございます。ほれ、リリィ、挨拶なさい」


背中を押されて前に進むと、天使のような姿の子供がいた。

思わずこちらから近づくと、身なりのいい女性の背に隠れられてしまった。


「ふふっ、ごめんなさい。びっくりしてしまったみたい。この子体が弱くって、お外で遊んだこともないの。よかったら一緒に遊んであげてちょうだい」


こちらも天使のような女性に、声も出せずにコクリと頷いて答える。

女性に勇気づけられて、おずおずと顔を覗かせた天使の声を聞いた。


「アンシエル・トパズ、です。以後お見知り置きを…」


かああ、と頬を染め、また女性の背に隠れてしまった。

どうやら天使は人見知りするらしい。

早く話を進めろよ、とお思いの方。

私も同じ気持ちです。

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