はじめまして
もそもそと口を動かすシエルの皿には、パンケーキが8枚、はちみつたっぷり、ジャムがこんもり、大食いの甘い物好きなのがありありとわかる状況である。
「ん?そういえばどうやって戻ってきたの?またチェンジリング?」
「いや、今回は、」
ガチャ
「まさか、パンケーキ食べるために戻ってきたんですか」
「え?」
誰だ。
「ど、どちらさまで?」
透けそうなほど色素の薄い肌色に、煌めく濃紺の髪が儚い印象を持たせるけど、キリリと釣り上がった眉と引き結んだ薄い唇、細いフレームの眼鏡が神経質そうな印象を与えている。
とにかくかなりの美人さんである。
「勇者パーティーのものです」
そっけなく返ってきた返事にムッとする。
明らかにこちらを見下している声音と態度がとても失礼である。
「賢者のルラキルナ=サイファだ」
何事もなかったかのようにパンケーキをもそもそ食べながら侵入者の名前を答えた。
名前までなんだか綺麗な響きですね…
「今日ここへはルラキルナの転移魔法で来た」
「先に言いなさいよ!!」
ドスッとシエルの頭にチョップを喰らわす。
確かに私ももう少し早くどうやって来たのか聞くべきだったのかもしれないけど、誰かと一緒に来ていたのだったらシエルももっと早く言うべきだったと思う。
「シエルがごめんなさい!お茶入れて来ますね!」
私が見下されたことに対してはまだ腹が立っているものの、今回先に礼を欠いたのはシエルだ。
これはお茶の一つでも出さなければいけないだろう。
「ほら、シエルも手伝って」
「ああ」
少しホクホクした顔でキッチンについてくるシエルに、入れた紅茶とはちみつとミルクを持たせて席に戻らせる。
私もシエルもまだパンケーキを食べている途中だし、残った生地でパンケーキを焼いて訪問者の分を作る。
食べないことも考えられるけど、まあ、その時はシエルが食べるだろう。
チラリとテーブルの方を見てみると、2人が何かを話しているのがわかる。
休養日というのは正しいのだろう、相手はシエルに怒っているようではなさそうだ。
「どうぞ」
焼けたパンケーキを2枚、皿に盛って持っていくと、先ほどとは少し違う雰囲気のルラキルナがこちらを向いた。
「いただきます」
ふわふわとしたパンケーキを丁寧に切って何もつけずにパクりと口に入れた。
紅茶にティースプーンが入っていないところを見るに、甘いものはあまり得意ではないようだ。
「いつもシエルがお世話になっています。幼馴染のリリィディアです」
「幼馴染?ここは勇者の家ではなかったのですね。いきなりすみませんでした」
驚いた表情に、少し申し訳なさを覚える。
ここに来る時、シエルは目的地をなんと言って転移させてもらったのだろう。
シエルはルラキルナに出されたパンケーキを狙っていましたが食べられてしまいました。




