不穏
「どうかしたの?」
とりあえず問いかけてみる。
シエルの背景にはどうやらヴァイスネージュと思われる雪景色が広がっている。
「今、ヴァイスネージュという山岳地帯の町にいる」
「へぇ、寒そうだね」
白々しいけれど、見てわかることを返答するしかない。
知っている町を知らないとは言えない。
「リリィは薬草採取か?」
「そう、そろそろみんなに配った薬がなくなってくる頃だしね」
自分のことに話がうつり、ホッと胸を撫で下ろす。
このまま日常のたわいない会話をしているうちに通話を終わりたい。
「またダンジョンの途中で話してるの?危ないから切るよ?」
よしっ、この流れで切ろう。
「それが、行方不明者が相次いでいる場所に討伐しに行ったんだが、すでに討伐された後だったようだ」
ああ〜切れなかったぁ…
「誰か倒しちゃったってこと?」
「ああ、たぶん、聖女が関わっていると思う」
ドッと心臓が押しつぶされたような圧迫感、冷や汗が出てきた。
たしかに瘴気がほぼ無くなったのはたしかだけれど、魔物が倒されればそれなりに薄くなる。
なんで聖女だと、勘づかれたのだろう。
「聖女?」
「ああ。助けられた時に残されたものと同じものを見つけた」
ゴソゴソと胸元を探り、2枚の黒い板を取り出した。
まさかあの時のレリーフをシエルが持っていたとは。
それに、ヴァイスネージュで土に埋めたはずのレリーフを見つけ出すなんて…
「そう。で、その町にいたの?」
「いや、見つかっていない。町民に尋ねたが青い髪の少女を見たものもいない」
そりゃここにいますから。
それにまさか神様と結託して聖女であることを隠し通そうとしてるなんて思わないよね。
「だが、彼女が治癒したと思われる者がいるから、話を聞いてきた」
あ、まずい。レットさんの存在をガッツリ忘れていた。
かなりの寒さ対策をしていたが顔を見られているし、略称とは言え名乗ってしまっている。
あれ?結構ピンチなんじゃないか?
「どうも記憶がないようで、魔物と遭遇して死にそうだったことしか覚えていないらしい」
「え?」
記憶がない?そんなこと、ありなのか?
不自然だ。彼はスフィアトルに襲われた際に頭に怪我を負ったわけではない。
治癒の段階で全身チェックされて、負傷した部分は絶対だ。間違いはない。
何が起きている?私の知らないところで何かが起きているのかもしれない。
「またレベルを上げるための旅を再開する。また連絡する」
悩み始めた私を取り残してシエルとの通信が切れる。
蟠りの残る胸の内、不安が大きく募っていく。
はい、ここで一部終了って感じでしょうか。
早く折り返しに辿り着きたいです。




