持ちつ持たれつ
「今日は薬草採取からはじめますか」
無事日常を取り戻した。
キャラメル色の髪を揺らして山に入る準備を整える。
ヴァイスネージュの一件を終え、なんとか神様たちに会えた私は、スフィアトルの変異の様子と瘴気を抑えたことを伝え、髪の色を戻してもらうことができた。
ローサルジュの神殿に送ってもらい、すぐにセレスト村に帰りたいところだったけれど、すでに夜が近づいていたため、チェックアウトしたはずのあの宿に戻ってきたのだった。
翌朝すぐに乗合馬車に乗り込み、昼頃には自宅に帰ってくることができた。
ちなみに乗合馬車ガチャは残念な結果になったため、今も少しお尻が痛い。
「そういえば、神殿で呼び出し石が鳴った気がしたけど…」
気になるけれど、もしなぜ出なかったのか、と聞かれたとしてもなんて答えればいいかわからない。
自分が聖女であることは隠し通したいが、できることなら嘘をつきたくはない。
「あれから連絡もないし、まあ、いいか」
ザクザクと山道を少しはずれ、目当ての薬草が生えているポイントに向かう。
今回はポーション用ではなく、切り傷や火傷に塗る傷薬で、得るものではなく村の人に配るためのものである。
基本的に山の幸や畑でとれる作物を市場で売ることで生計を立てている村なので、命の危険はあまりなくとも生傷を負うことの多い生活を送っているため、大きな怪我は医者にかかるけど、小さな怪我は家庭で簡単に治療して済ませてしまう。
薬草自体は山に生えているものがほとんどなので、村で唯一薬草調合のスキルがある私が各家庭に作った傷薬を無料で配っているのだ。
その代わりと言ってはなんだけど、村のみんなは私に畑でとれた野菜や狩りで手に入れたお肉をお裾分けにいただいたりしている。
「あ、あったあった、ヒールピー。今回は大量だなぁ」
ヒールピーという豆の一種は、だいたいどこの森林にも自生しており、そのまま茹でて食べることもできるが、苦味が強く、薬効は魔力を通さなければ得らないので好んで食べる人は少ない。
見た目は前の世界のそら豆みたいな感じだけれど、色がまずピンク色で、可愛らしいというより毒々しい。
「あとはルオーリナの葉があれば、いいかな」
家にある薬草を頭に思い浮かべる。
他の材料はストックがあるので、傷薬を作るのに事足りるだろう。
チリンチリン
ぎくりと体が固まるような感覚。
ついに電話(ではないんだけど)が来てしまった。
お願いだから昨日のことは聞かないでくれ。
意を決して呼び出し石をバッグから取り出しせば、いつ見てもイケメンな顔が映し出されていた。
日常パートになります。
基本はこっちがメインです。まだ。




