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Trace


「勇者様!お待ちしておりました!」


 ほとんど休憩を取らず、馬に乗って町についた途端、町長であろう男が共を連れ、飛び出してきた。

町長の発言を聞いた民衆がざわざわとし、こちらに寄ってくる様子も見られた。


「行方不明者が出ていると聞いたが」

「はい、ビアンカ雪渓のほうでおよそ10名、行方不明になっております。中にはCランク冒険者も含まれており…」

「そうか」

「本日昼頃には大規模な地鳴りや轟音の報告があり、調査隊を派遣しました」

「調査隊…無事帰還したか?」

「はい。1名意識不明者を救助しましたが、未だ意識が戻らず…」

「わかった。ビアンカ雪渓に案内してくれ」


 昼頃に地鳴りや轟音か。

ぜひ救助された者の見たことを聞きたかったのだが、仕方ない。


 雪の上を滑るように走るパティナカーネが数頭で引くソリに乗って現地に赴く。


「寒いですぅ〜。みなさん大丈夫ですかぁ?」

「寒いところには慣れているから、平気よ」

「俺は涼しくて気持ちいいくらいだぜ?」

「いきなり誰かさんがいなくなった時の方が冷えましたね、肝が」


 王城で勇者として王に謁見した際、魔物の討伐のためのパーティーを持たされた。

アーチャー、魔術師、戦士、賢者、勇者の仲間として相応しいメンバーを揃えた、らしい。


「もうすぐ着きます!」


 ソリの操縦をしていたものが声をかけてくる。

騒がしくおしゃべりしていた者もその声を聞いて黙る。

こと戦闘に関しては頼りになると言っていいメンバーである。


 現地に着き、ソリから降りて雪渓を見渡す。

…おかしい。


「たしかにここで戦闘があった跡はあるわね」


 魔術師のコーズィ・アクアズがかじり取られたような木々や歪に隆起した地面、さらに言うなら巨大な生物が歩いたであろう足跡を見つめ、声を落として言葉を紡ぐ。


「おいおい、すでに敵さん逃げたんじゃねぇか?」


 戦士のパイラ・ジョヌスが腕を組み、物足りなそうな顔をする。


 いや、そもそも、


「瘴気を感じない」


 肌にまとわりつく嫌悪感も、濡れた服を着せられたような重量感も感じない。

勇者の立場から言わせて貰えば瘴気が見えないことも理由に挙げられる。

すでに敵は討伐されているようだ。


「えぇ!?Cランクがやられた高レベルの魔物なのにぃ?」


 アーチャーのリシア・ロズリンが驚きの声をあげる。


「討伐できるものなど、私たちを除いているものですか?」


 賢者のルラキルナ=サイファが怪訝な顔でこちらを見る。


 何かに惹かれて、木々が横たわる場所に近づくと、雪の量が少ない一箇所に目がいく。

薄く被った雪を取り除き、土を少し掘ると出てきたものに目を見張る。


あの時と同じ。十数年ぶりに、この繋がりを見つけた。


「聖女が、ここにいたんだ」


 自分の発言に4人がざわめくのを遠くに聞きながら、黒い石板を握りしめる。

この機会を逃す気はない。


「必ず…」


 紡いだ言葉は雪の中に消えていった。

シエル目線でした。

ボケ担当封印でちょっと物足りない…

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