表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/41

ある村にて


「ということで、旅をしながらレベルを上げつつ、聖女様を探すことになった」

「なんで報告しにきた」

「いつもしているだろう?」


私が何を言いたいのかわからず、目の前でキョトンとした顔をしているのは、シエル…勇者アンシエル・トパズその人である。

全国民がその名を知っていると言っても過言ではない。今をときめく話題の人。


「なんでこんな小さな村のチンケな村人に、勇者様が旅立ちの挨拶なんかしにきてるんだって言いたいのよ」

「もう両親には報告したのだから、次はリリィの番だろう?いつもそうだったじゃないか」


斜め上にずれた発言に頭を抱える。

そうだ、この男にはもっとストレートに言ってやらなければ言いたいことの半分も伝わらないのだった。


「あなたは”勇者様”になったのです。国民を魔物から守る尊い人。そんな”勇者様”がこんな小さい村にいていいわけないでしょう?ましてや村長でもない孤児の村娘なんかに旅立ちの報告なんて、身分が違いすぎます」


本当は貴族であるただのシエルでさえ、略称で呼んだり、敬語を使わずに話したりすることだって身分違いだったのに、”勇者様”になったのだからなおさらだ。

立場があまりにも違うので、ここで明確に線引きしよう、と意味を込め、はっきり言い切って目を開けると、いつもの空色が見る間に潤み始める。


あ、やってしまった。


一粒ぽろりと落ちればもう止まらない。はらはらと空色から降り始めた雨がとめどなく。

昔から涙腺の弱さは変わっていないのだが、いかんせん見た目が美少女から美貌の青年になってしまったものだから見てはいけないものを見てしまったような気まずさが半端ない。しかも無表情のまま。慣れない人が見たならばギョッとすることだろう。


騎士団に入隊したと報告された際には耳を疑ったものだ。よくこの様で小隊長が務まると、何度思ったことか。


「……」

「……」


小さな頃なら「大丈夫?」と駆け寄り、背中をさすって慰めたことだろうが、先ほど言ったように①美青年②無表情③王立騎士団小隊長あらため勇者にする必要性を感じない。

しかもここで絆されてしまってはこの幼馴染はいつまで経っても勇者という立場の自覚なく、村から長期的に離れるときには報告に来るのだろう。


「リリィ…」

「……」


沈黙が5分続いただろうか。

大きなため息ひとつ。結局自分は嫌になる程幼馴染に弱いのだ。


ようやく主人公の登場です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ