咆哮
「もう少ししたら群生地に着くよ。危険だから短時間で済ましてしまおう」
「ありがとうございます。では二手に分かれて取りましょう」
「いや、危ないし一緒に行動しよう」
チッ
二手に分かれよう作戦が失敗した。
どうにも離れる気はない様子のレットに手伝ってもらい、青くてみずみずしいシュペルの実をとっていく。
外国の人はそう思わないかもしれないが、素材の色を大事にする日本生まれの日本育ちの私の前世がシュペルの実の見た目と香りのギャップにまだ混乱している。
木の枝に登ったレットがもぎもぎした実を私が受け取りバッグにどんどん詰めていく。
依頼書の内容は10個ごとで銅貨5枚、ローサルジュの市場では5個で銅貨2枚だったのでかなり高価な買取価格である。
逆に考えると、高価な報酬を払ってでもシュペルの実が必要な状況にあるということだろう。
「勇者が今夜くらいに到着するらしいから、今日明日の宿に困らないくらいの報酬をもらおう。討伐後にまた依頼を受けるといいんじゃないかな」
なかなかに情報通な男である。
もうこの依頼をさっさと成功させてレットと別れ、もう一度雪渓に向かったほうがいいのかもしれないと諦め始める。
「そのバッグは容量どれくらいあるの?結構取ったと思うんだけど」
「あー容量はまだあるので大丈夫ですよ」
「すごいね。高かったでしょう?」
「いや、知り合いからの貰い物なので値段は知らなくて」
「お金持ちの知り合いがいるんだなぁ」
「そうですね」
このバックはセレスト村で薬草を山のように摘んでくる私の様子を見ていたシエルが誕生日にくれたものだ。
空間魔法のかかっているこの手のバッグは容量によって値段が高価になっていく。
もらった時には容量の説明がされなかったので、そんなに大きいものではないだろうと思っていた。
しかし、一度気になって容量いっぱいまで物を詰めてみようと実験した結果、どこまでもすんなり入ってしまい、限界量がわからなかったのだ。
実験の後、シエルに説教したのが懐かしい。
「そろそろおしまいにして酒蔵に行こう」
木の上からストンと身軽に飛び降りたレットから最後の一個を受け取りバッグに詰め込む。
さっさと帰って、もう一度来なければ、勇者にばったり遭遇してしまう。
早く戻ろうと声をかけようとした時、
オオオオオオォォォォォン……
どこからか汽笛のような、サイレンのような、地を這うような咆哮が聞こえた。
知り合いから、レットさんはモブかそうじゃないか聞かれましたが、自分でもよくわかりません。
確定させると後々出したくなったとき困るので。




