ネージュ酒
夏でも溶けない永久凍土が残るヴァイスネージュの町には隣国との境界に高々と聳える山々が連なり、山脈を形成している。
雪深くなると毛皮以外に、労働者や冒険者の体を温めるためにネージュ酒という度数の高い酒が多く出回る。
そのネージュ酒は穀物から作られたものにシュペルの実で香り付けしたものの中でもビアンカ雪渓でしか得られない”雪花の雫”を使っているものだけがネージュ酒を冠することができるのだ。
その関係でどうしても酒蔵の位置は雪渓の近くになるのだという。
先に依頼主会うのが慣習であるが、雪渓に行くのを止められるのが関の山。
ならば先に雪渓に行って事後承諾が手っ取り早い。
除雪した道が途切れ、ここからは獣の足跡を探しながら進む他ないようだ。
「雪渓は見通しがいいところが多いし、すぐに見つけられそうなもんだけど」
見渡しても一面の雪景色、魔物がいればすぐに見つかると思うのだが、スフィアトルの特性を考えると油断ならないのは確かである。
スフィアトルは丸い甲羅を背負ったカメのような魔物で、比較的大人しいのだが、土の中に潜って隠れたり、土魔法で攻撃してきたり、レベルの割に厄介な魔物である。
さらに、甲羅が硬く攻撃が内部まで届かないことから討伐することが難しい。
「どんな変異を起こしてるのか分からないのも面倒だよね」
道中ぴょんぴょん飛び跳ねるラビルや群れだって移動するビアンカティガなど、討伐に来る冒険者が例年より少ないことで様々な魔物がいた。
魔物側にはあまり影響がないのかな?
さてと、そろそろ役目を果たそうか。
どこにも人の目がないことは確認したし、万が一を考えて木が生い茂っている場所で魔法の発動をしようと考えていると、
「おーい!やっぱりいた」
不意に聞こえた元気な声に、どきりと心臓が跳ねた。
えーなんで来た。
「路銀のこと気にしてたし、何か依頼受けたんじゃないかって心配になってね。よかったら同行させてよ」
にこっと爽やか笑顔で言い放った冒険者、レットにため息が出た。
完全にありがた迷惑だ。
「…あははは〜心配ご無用ですよ〜」
引き攣った笑顔を貼り付け、心の中で怒りを必死に抑える。
「なんの依頼?手伝うよ」
「…シュペルの実を酒蔵に収めようかと。売り時に不足しているそうで、報酬に色をつけてくれるんだそうです」
「へぇ。じゃあ群生地まで行こうか」
「はい」
なんとか振り切らねば。
私の前を歩いて先導してくれる、親切心100%であろう彼の行動を流石にこれ以上無碍にもできない。
どう彼と分かれようかともんもんと頭を悩ませることしかできなかった。
早く勇者出したいです。
雰囲気ぶち壊したい。




