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空腹と地酒


「おまちどおさん」


 チャキチャキしたおかみさんの元気な声と共に、コトッと目の前の木のテーブルに置かれた皿からは白い湯気がもうもうと立ちのぼり、スパイスの効いた美味しそうな匂いがふわりと漂う。

無意識にごくりと唾を飲み、フォークに手を伸ばす。

ビーフシチューのスパイスが効いた版、と表現できる料理は肉がメインの野菜少なめ、じゃがいものようなホクホクした芋が入っていて食い出がある。


「ふはぁ〜」


 口に入れた肉をはふはふと頬張り、空腹を満たす。

外が寒かった分、温かい料理のおかげで身体が芯から温まっていくのを感じる。


「いい食いっぷりだね。どこからきたんだい?」

「旅をしていまして。南の方から来ました」

「寒かったろう?温かいもんでも飲んでいきな」


 サービスだよ、と置かれたのはお酒。

この国の成人は年齢が決まっていない。そのかわり地域によって「これができたら一人前」みたいなものが決められていて、それができると成人とみなされている。

セレスト村での一人前認定は一人で狩りができることだった。

だからお酒も飲んでいいのだが、日本の法律と同じ、二十歳になってから飲もうと心の中で決めている。


「ごめんなさい、お酒は飲めなくて」

「そうかい、それは残念だね。この町は酒が有名だっていうのに」


 寒い地方に酒を飲んで体を温める習慣があるのは元の世界と変わらないんだな、と思いながら、ご飯のあるところには思わぬ情報が転がっていることがあるので、いろんな人の会話に耳を傾ける。


「武器屋で最新のモデルのレイピアが出たらしい」

「最近女房が勇者勇者ってうるさくって」

「ネージュ酒がどこも品切れになっている」

「なんか最近肉少なくないか?」

「勇者様が来る前に新しい服が欲しい」


 ここでも勇者様は人気だなぁ…

というか、良さそうな話が聞こえた。


「酒蔵がシュペルの実を切らしたのが原因らしいぞ」

「ああ、雪渓の近くに群生地があるしな」

「いつもより依頼書の報酬に色つけてるけどだれも受けようとしないんだってよ」

「まあ、Cランクでも今は近寄んねぇからな」


 これだ!

先程ギルドの掲示板からもぎってきた依頼書を見るとやはり入っていた。

シュペルの実はこの地方の地酒、ネージュ酒の香り付けに使われているもので、寒い地方に生えるシュペルという木に成る青い実である。

じつは数時間前に朝市でゲットしたあの青くて苦そうな見た目のくせに甘いフルーツである。

ラッキー!買っておいてよかった!

これを採取してきたことにして、雪渓に向かうことに決めた。

お酒ネタ、いずれやりたいと思います。

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