変異
「そういえば目的って?」
頭を叩かれてもびくともしない、むしろちょっと嬉しそうにしてるシエルに問いかける。
乗合馬車に乗った中継地点の町で(井戸端会議を盗み)聞いた話では、レベル上げのためにジルコニアの森に向かったと聞いたけど。
「パーティーのレベル上げとジルコニアの森で確認されていた高レベルの魔物の討伐だ」
「ああ、噂で聞いたかも。どんな魔物だったの?」
聞き耳立てた井戸端会議でも確かに高レベルの魔物の被害があるらしいと話していた。
どんな魔物なのかまでは聞けなかったので、少し気になってはいたのだ。
「変異したと思われるラビルだった。レベルは40くらいだったと思う」
「40?!」
それは初心者冒険者の被害が多発するわけだ。
レベル40にもなるとベテランの冒険者、Bランク程度でなければ討伐することができないくらいではないだろうか。
しかも、変異した魔物、となると多少特性が変わったり耐性があったりと元になった魔物より厄介である。
元になったラビルはウサギ似た魔物で基本的には草食の魔物だ。この魔物による被害の多くは農家に侵入して農作物を食い漁ることと繁殖期になると少し凶暴になり噛みつかれるなど、言い方は悪いが可愛いもの。
「穴を掘って身を隠したり、前歯を鳴らして平衡感覚を失わせたり、なかなか討伐するのに手こずった」
ここまで言うのだ、なかなか、なんかでは足りないくらいには大変な討伐だったであろう。
「お疲れ様。無事でよかった」
ほっと息を吐くと、シエルの顔も少し緩んだ気がした。
「…用事が済んだし、そろそろ戻る」
「うん。気をつけて」
慣れなければ分からないほどだが、少ししょんぼりした様子のシエルに、先ほど叩いた頭を今度はくしゃりとかき混ぜる。
さらりと艶のある髪が指の間を流れ、くすぐったい。
ふっと笑ったような顔が覗いた瞬間、目の前にポトリと。
「…なんでカタツムリにしたの…」
チェンジリングは生き物同士での入れ替わりしかできないため、なにかしらの生き物が自分の元に送られてくるのはわかっているが、なんというか、そのチョイスに力が抜ける。
山育ちの私だからいいものの、他の娘にやったらきっと悲鳴をあげるだろう。
私だってセミのような生き物と入れ替わった時には「ヒィッ」と声をあげたくらいだ。
かわいそうにいきなり宿のベッドに飛ばされたカタツムリは、夕飯のついでに外に逃してあげた。
日付が変わってしまいました。
起きていればもう1話くらい書きたいですね。




