契約としっぺ返し
「はあ、まったく。あれほど口酸っぱく漏らすなと…」
ぶつぶつと小言を言いながら、ちょっと不機嫌になったメイシスが奥の部屋に戻ってきた。
「なんかもめてたけど大丈夫だった?」
怒りからかシワが深くなり、なんだかさらに老け込んだゲフンゲフン。
「まあ大丈夫だ。内密に使うことと購入元を言わないよう契約したんだがね、”契約違反”だ」
「うわ…じゃあ今頃その人大変だね」
変わり者御用達のこの店は、さまざまな商品を取り扱う代わりに、購入した後の約束事が厳しいものがある。
それは店主のメイシスとの契約であることもあれば、作り手である職人とに契約であることもあり、契約内容も多岐にわたる。
例えば薬草の一種、ファイルレドは一介の冒険者ではお目にかかれないほどレアで高級な物であるのだが、ある職人が極秘で養殖を成功させ、それをこの店で取り扱っている。ゾッとするほど高額な商品だが研究者やランクの高い冒険者ともなると必要な場面もあり、金で買えるのならいくらでも払おう、というほど欲しい一品である。
しかし、生産量や買い占め防止の観点から、店の常連しか購入することはできず、「購入した後半年は再購入できない契約」と「購入元を漏らさない契約」がメイシスと結ばれ、さらに職人からは「購入目的とその用途を報告させる契約」を結ぶこととなる。
この契約はメイシスのユニークスキル”コントラクトチェイサー”により、購入後であっても契約が守られているか追跡され、万が一契約が守られなかった場合、それ相応のしっぺ返しを喰らうことになる。
一度契約不履行者の行く末を見てから、絶対にメイシスとの契約を守らねばと決意したほどである。
「その商品の不履行者にはどんなしっぺ返しがいくの?」
「とりあえずは記憶の削除だね。契約不履行日からこの店に来た日の記憶が完全に破棄される。安全性を取るならこれが一番だからねぇ」
「ちなみにそれって何日くらいの記憶が消えるの?」
「だいたい1ヶ月、といったところかね」
「え、じゃあ前に私が納品したのもそれくらいだから、そこから今日までってこと?うわ、勇者の覚醒すらすっぱり消えちゃうのね」
記憶を消すほどの商品なんて、やはり素晴らしい物なのだろう。なんせ”奇跡”と言われる逸品だ。
「リリィ、そろそろ日も暮れるよ。宿屋に戻らないのかい?」
「もうそんな時間?長々と居座ってごめんなさい、メイシス」
「暇な店だ。またよっとくれ」
外に出てみると空は星を散りばめた紺色が燃えるオレンジ色の夕焼けを遥か西の空へと追いやっていた。
女子供に優しいとは言い難い世の中、さっさと宿屋に帰った方がいいだろう。メイシスに手を振り、大通りに出た私は一路宿屋へと向かったのだった。
仕事ツラい…家に帰ってご飯食べたら風呂に入ってもう寝るしかなかったです。
マイペースに更新していきますが、できるだけコツコツ書きたいです。




