ローサルジュ
その後、特に何かのトラブルに見舞われることもなく、感覚的には午後3時くらい時間に市街地に到着することができた。
乗り心地の良い馬車で、運賃を渡す時に思わず、とても良い旅でした、と運転手さんに告げるほどの快適な旅路だった。
るんるんと軽い足取りで街を進む。前回はお尻の痛さにすぐに宿を取って死んだように倒れ込むのに、体の負担がない分、今回は1日目から行動ができそうだ。
やはり時は金なり、お祭り状態らしいので、まずは宿を確保し、余った体力でとりあえず、毎回ポーションを納めているお得意先に行くことにした。
王国でも1、2を争う市街地、ローサルジュの街は、もともと人が賑わう街なのだが、以前訪れた時よりも明らかに人の数が多かった。
それもこれも勇者であるシエルが、勇者に覚醒したのがこの街での任務に当たっている時だったようで、それはそれはすごい光景だったとそこらで吟遊詩人が歌っていた。
なんでも空から一筋の光が降りてきて、ひとりの騎士の元に注がれた。
次の瞬間、まばゆいばかりの光に包まれ、視界を奪われた中、男とも女とも取れぬなんとも響きある声で勇者となった騎士に称号が与えられたそうだ。
へぇ、それはそれは、とても目立つ現れ方ですこと。
神様というのは存外派手好きなのかもしれない。
何件か宿屋を回ってなんとか納得のいく部屋を確保し、そのまま外に出る。
部屋に置いてこなければいけないほど荷物はないので、バッグひとつを持って目的の店へと向かった。
大通りの人の賑わいを避け、1本中に入ってしまえば喧騒も遠く、しばらく進んでいくと黒猫の看板を掲げた店が見えた。
表の入り口は客用なので、納品しにきた私は角を曲がって、打って変わって小さくボロい扉のある裏手に回って、ノックを5回。
返事を待って扉を開けると、薄暗い店の奥からぬうっと1人の老婆が姿を現した。
「リリィじゃないか。手紙では明日の予定じゃなかったかい?」
「今日乗った馬車がとてもいい馬車で、いつもと違ってお尻が痛くなかったから今日来れたのよ」
「へぇ、それは運のないお前さんにしてはラッキーだったじゃないか」
ヒッヒッヒ、と引き笑いをする、いかにも魔女、と言った容姿の彼女はメイシス・ポルポラ。
彼女の店は知る人ぞ知る、という魔術師の中でもニッチなものを取り扱っている、変わり者のための魔道具店である。
彼女自身、膨大な魔力を持ち、水と火の魔法を得意とする優秀な魔術師であるのだが、いかんせん気分屋で魔道具を作ることに没頭すると仕事すらシカトする様で、王城の魔術師団に並ぶほどの実力を持つのにどこにも属さずこの小さな店の主人している変わり者だ。
街の名前も人の名前同様考えるのが苦手です。
変な名前ですが流してください。そうめんのように。




