9話 地獄の様子とヒュオン達(追放した側)の動向
地獄の部屋へ戻ってきた俺たちを出迎えた奴がいた。
「あー!やっと帰ってきたっす!」
ハデスだった。
「もう手伝って欲しいんすけどー、地獄に落ちてきた人達の受け入れ作業が終わんないんすよ〜」
そう言いながら俺に近付いてくるハデスだったが
「お前は俺の奴隷だろう?必死にやれ」
「そ、そんにゃ〜」
膝をついてしまった彼女だが俺はこいつに散々な目に合わされた。
情けはない。
「サイ様意地悪っすね」
「その名は捨てた。リオンと呼べ」
「わ、分かったっす!」
ところで、と彼女は口にする。
「せ、せめて私のクローンを用意してくださいよ!な、何でもしますから!気持ちよくさせてあげるっすから!」
そう言いながら俺の腰に抱きついてきたハデス。
もう既に泣きそうな顔になっていたのと、クローン?と思ったから権能を使うことにした。
そんな機能があるんだな。
【ハデスのクローンを増やしますか?】
ホントに作れるらしい。
のでとりあえず10人くらい作ってみた。
「「「「「わぁぁあぁあ!!!ありがとうっす!」」」」」
10倍うるさくなった。
ハデスはどちらかというと顔もいいし美少女の部類に入るだろうがここまで多いとうるさいし気持ち悪いな。
「「「「「これでお仕事も捗るっす!!!」」」」」
そう言いながら10人全員で仕事に取り掛かるハデス達。
「というより何で俺の部屋にいるんだ?」
「「「「「いつでもかっこよくて素敵なリオン様をお迎え出来るようにっす!」」」」」
同じ思考をしていてもここまで一字一句同じ発言をするのだろうか?
そんなことを思うがどのみちうるさい。
「うるさいからオリジナルだけ喋れ」
「了解っす!」
ちゃんとオリジナルだけが反応してくれるようになった。
「それよりっすね〜」
ぺちゃくちゃ話し始めたハデスの声を右から左に聞き流して権能を使って、この王城の部屋の確認を行う。
いくつも空き部屋があるのでクローン達の方を空き室に移動させた。
これで同じやつがいる気持ち悪さはなくなった。
「聞いてるっすかー?リオン様?」
「え?何だって?」
「もー聞いてなかったんすか?」
「で、何だって?」
そう聞くと手をスリスリさせて俺に媚びを売ってくる彼女。
「あ、あのですね」
「うん」
「何でもしてあげるっすのでもう少し扱いを良くして欲しいなぁ♡」
「何でも?」
「何でもっす」
彼女が俺の下半身に目を向けてきた。
考えていることは容易に想像できるが。
「噛みちぎられそうでやだ」
「そ、そんなことしないっすよ!」
2人でそんなアホな会話をしていると今まで黙っていたティアラが混ざってくる。
「噛みちぎるって何をですか?」
「お前はピュアだから知らなくていい。そのままピュアでいてくれ」
「??????」
そう返して俺は机に向かった。
これは地上の様子を確認できる地獄の鏡というアイテムらしくそれが机に埋め込まれている。
机にはとある物が映し出されていた。
過去の地上の様子だ。
※
地獄に繋がる大穴があったそこにヒュオン達はいた。
「やっと雑魚が消えたな。足手まといすぎたな」
そう呟いたヒュオンの周りに集まってくるのは俺を追放した元メンバー達。
人が1人死んだというのに誰一人涙など流していない、それどころか
「見たアルか」
「見た見た。泣きながら飛び降りてったよねー」
カグラとマーニャがそう言いながらクスクス笑い合っている。
「それにしても大変でしたね。彼がパーティを抜けたいと言った時は終わりかと思いましたが」
「そうですね。あのまま抜けられてはこの計画はご破算でした」
ローエンとヒルダがそう話しながらヒュオンに目をやった。
リーダーである彼は視線を受けてパーティメンバー全員に目をやった。
「さて、ゴミ捨ては終わったわけだし明日はギルドにいって保険金でも受け取るか。うーし明日は豪勢にいこうじゃないか」
「やたーアル!!!」
カグラが飛び跳ねて喜ぶ。
誰も俺を殺した事について罪悪感を抱いていなかった。
※
「仲間だって思ってたのは俺だけか」
あの日の出来事を見た俺は顔を上げた。
分かっていたことだが。
「くそ」
あんな奴らを仲間だと思っていた自分に腹が立つ。
「大丈夫ですか?」
俺の横に来てそう聞いてきたティアラ。
俺が溜息を吐いて椅子にもたれかかったのを見て心配してくるているのかもしれない。
「問題ない」
そう言って立ち上がった。
それ以上は何も言わずにもう一度机に映る地上の様子に目をやった。
「ゴミくず野郎どもが」
あいつらは俺を裏切りティアラにまで手を出し得た金で豪遊していた。
酒を飲み美味いものを食い幸せそうな時間を過ごしていた。
そして、これからもそうなのだろう。
「素直に言ってくれていたら」
俺はもう足でまといだってそう言ってくれて抜けさせてくれたらまだ何も言わなかったし納得もした。
でも、なんだこれは。
初めから俺に保険をかけたのはもし何かあった時のためなんかじゃなくて、初めから俺を殺すつもりだったなんてな。
俺やティアラを何とも思っていなかった。
それが許せなかったし、それならば
「俺だって手加減する必要は無いよな」
そう言ってティアラに目をやった。
「どうしたんですか?」
「戻ったばかりだが地上に戻ろうか」
俺がそう言うとハデスが泣きついてきた。
「えー?!!!もう帰るんすか?!!!」
「俺が戻ってきたのはとりあえず地獄と地上であの後何が起きたかを確認するためだ。奴らは予想通り王都に向かった」
権能を奪い取った時にどんなことがこっちで出来るのかについてはある程度確認していた。
その結果この机を覗き込めば過去地上で何が起きたかは分かるようになっていた。
今回戻ったのは過去の事それから奴らの動向確認をするだけだった。
だから目的は果たした。
「だが、その前に」
俺はティアラに振り向いてとある事をした。
彼女の額に手を当てるとポウっと淡い光が彼女を包む。
「あ、あれ?」
彼女の短かった髪の毛が腰まで伸びる。
そして彼女の手に剣が現れた。
「こ、これは?」
「ヘルソード」
「へるそーど?」
「地獄の剣だな。地上にも持っていけて大体の敵はそれで倒せる」
「へー、そうなんですねー」
そう言いながら彼女が剣を軽く振ったら、ズゥゥゥゥゥン!!!!と遠くの方から音が響いた。
それを見て口を大きく開けるティアラ。
「や、山が崩れましたよ?!」
今のはティアラの一振のせいだ。
地獄の剣は地獄にある限り何処までも届く絶対の一撃。
「も、もう!試し振りで山を崩すのはやめてくださいっす!クレームくるっすよ?!」
それを見てそう悲鳴をあげるハデスだったが、面倒ごとはハデスにいき俺には関係ないからどうでもいい。
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