8話 初めての依頼とリーナの暴走
2人が服を買って店から出てきた。
「わ、私なんかに似合うでしょうか、こんなに高い服。本当に、かっこよくて優しくて素敵なリオン様に服を買っていただけるなんて私は幸せ者ですが、同時に恐れ多くもあります」
少しおどおどしながらそう聞いてきたリーナ。
別にそこまで謙遜しなくてもいいのだが。
「似合ってるよ。それよりもそこまで自分を卑下するなよ」
そう答えると今度はちょいちょいと俺の脇腹をつついてきてエリーも口を開いた。
「私はどうかなー?」
「似合ってるよ。2人とも凄く可愛いよ」
そう言ってあげると2人とも顔を下に向けた。
あまり褒められるということに慣れていないのかもしれない。
そんなことを思いながら口を開いた。
「次はギルドに行こうか」
俺達はギルドに向かうことにした。
そうしてたどり着いたギルド。
中に入り受付に向かうと受付嬢に話しかける。
「冒険者登録したいんだが」
「初めての方ですか?」
「あぁ。後ろの3人も一緒に」
そう返事をすると女性は何処からか紙を取りだした。
「ここに必要事項の記入をお願いします」
俺は3人分の情報も書いて女性に返す。
「次はステータスの測定を行います。こちらに手を当てて貰えますか?」
そう言って差し出してきた水晶に俺たちは手を当てて測定を終える。
「はい。こちらギルドカードです。無くさないでくださいね。再発行にはお金がかかってしまいますので」
そう口にした彼女から俺はカードを受け取ると声をかけてくる受付嬢。
「リオン様?」
「ん?」
「見たことないくらい凄く高いステータスですが以前何か?」
「いや、何も」
そう答えて受付を離れた。
兎に角冒険者としての登録は完了したのだが
「Eランクスタートか」
俺達のランクはEランクだった。
対してヒュオン達はSランク。
並ぶのにはそこそこ時間がかかりそうだな。
そんなことを思いながらも
「とにかく依頼をこなすしかないな」
さっきの女性の話では依頼をこなしていくとランクが上がっていくとの話だった。
「早速何か受けてみようか」
そう言うと3人が頷いてくれたので俺たちはクエストボードに目をやった。
「どんなのがいいんでしょう?」
隣に立つティアラが問いかけてきた。
「うん。そうだな」
昔の俺はとにかくゴブリンなど討伐が簡単な依頼を初めは受けていたことを思い出したので
「とりあえずゴブリンから行こうか」
そう言ってゴブリン5匹の依頼を手に取った。
その依頼を受注してから俺たちは草原に向かう。
吹き抜ける風が草を揺らす白昼の草原で俺は権能の一つである地獄の目を使う。
周囲の敵の反応を調べるスキルだ。
何匹かゴブリンがいたが、その内の1匹を遠距離から透明になった鎖で絡めとると一気に俺たちの方に引き寄せた。
「ギィッ!」
いきなりのことで驚いたゴブリンがこちらに吹っ飛びながら叫び声を漏らした。
「ひ、ひぃぃい!!!ゴブリンですぅ!!!」
だがリーナは俺の後ろに隠れてしまう。
リーナやエリーにもそれぞれ武器を持たせているが初めてのことで緊張しているのだろう。
それなら仕方ないな。
俺は昔使っていた剣を持つと適当にゴブリンの体力を減らして瀕死状態にしてからティアラに目をやった。頷いてくれた。
「ふっ、ついてこれますか?」
ティアラが素早い動きで切り刻んで倒す。
それを見ながら思った。彼女は盗賊に向いてそうだ、と。
「こ、怖いよリオン様」
エリーも結局俺の後ろに隠れてガクブル震えているだけだ。
俺も元々最初から倒せるとは思っていなかったのでこんなものかと思って
「初めはこんなものだよ」
そう言って残りのゴブリンを同じように引き寄せて討伐してしまう。
五匹のゴブリンの死体を積み上げて適当な部位を剥ぎ取るとアイテムポーチにまとめて放り込んだ。
証拠としてギルドに提出しなくてはならないからだ。
「戻ろうか」
既に泣きかけの2人と何故か嬉しそうな顔をしたティアラを連れて俺は王都に戻るのだった。
※
その日の夜宿を借りた俺はパーティの編成について皆に話しておくことにした。
「とりあえずティアラは盗賊、だな」
「私が盗賊なんですか?!やったー!」
何故か喜んでいる彼女を置いて俺は他の2人を見た。
「どうせ、私なんて………」
「足を引っ張ってしまいました………」
2人は何も言っていないのに既に葬式モードになっていた。
「2人には後衛職を任せたいと思う」
俺はそう言って順に何を担当してもらうかを話す。
「エリーは賢者でリーナは聖女を頼めるか?」
賢者は魔法を使って遠距離攻撃を行うジョブで聖女は補助魔法などを使って味方のサポートを行うジョブだ。
「私に出来ますか?」
「私も不安かも」
2人ともそう口にしているが
「出来るよ」
そう言ってあげることにした。
始める前から諦めていては何も出来ないし。
「初めは出来なくて当たり前。俺も昔パーティに入っていたけどダメダメだった。だから気にすることないよ」
初めは誰だってこんなものだ。というより俺も急ぎすぎてしまった感じはあるし。
でもこんなところでグズグズしている場合でない事もまた事実だ。
何か対策をしないとな。
「とにかく今日は2人ともよく頑張ってくれたね」
そう言って2人の頭を撫でる。
2人とも初心者なのだから出来なくて当たり前だ。
「明日も頑張ろう。とにかく今日は寝ていいよ」
2人とも疲れていそうな顔をしていたので今日は早めに寝てもらおう。
俺もこの後やりたい事があったので寝てくれた方が色々と都合がいい。
そう思って部屋にベッドに俺も潜り込んだ。
のだが、何故かリーナは俺の布団に潜り込んできて手を掴んできた。
そして小声で
「あ、あの………」
「どうしたの?」
俺がそう聞くと顔を赤くする彼女。
「御奉仕させてくださいぃ………」
そう言って俺の胸に抱きついてきた。
「え?!」
「私にはこんなことしか出来ませんけど、これくらいなら出来ます。初めてで怖いですけど………」
そう言って彼女は目を閉じた。
これは………ゴクリ。
いや、だめだ。
「そうやって安売りしないでくれ」
そう言って俺は彼女を引き剥がすと自分のベッドに戻した。
「とりあえず寝てくれ。疲れてるからそんな考えになるんだよ」
「ほ、ほんとですか?」
そう言いながら不安そうな目で見てくる彼女。
現に疲れたのだろうエリーは既に寝ているし。
「ほんとだよ」
「こんなに優しくされたの初めてですぅ………一生ついていきますぅ………」
そう言って子供のように涙を流すリーナの横に添い寝して寝かしつけることにした。
しばらくするとスーッスーッと寝息を立てて寝始めたので
「ティアラ」
「はい」
彼女に声をかけることにした。
「2人が寝ている間にいったん地獄に戻ろう。ハデスの言った通りこちらでは権能の力が弱まってるし、それに向こうで色々と試したいことがある」
そう言って彼女を連れて一旦地獄に戻ることにした。
とりあえず接触するためにもヒュオン達の動向も知りたい。
ここでは無理なようだが地獄からなら奴らの観測もできるだろう。
それからエリー達のパワーアップもできればやっておきたい。
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