7話 可愛い女の子が喜んで仲間になってくれた
俺は奴隷達が入れられた檻を地獄の剣で破壊し中にいた奴隷2人を外に連れ出した。
月明かりに照らされて初めて顔を見たがどちらも美少女だった。
年齢は2人とも俺くらいで1人は黒髪に黒目の少女。
もう1人は金色の髪に金色の瞳を持っていて更には
「エルフか」
エルフの少女に見えた。
珍しいな。
「………」
俺を睨んでくるエルフ。
エルフと人間の中は最悪だ。
昔に色々あってエルフの大半が人間を嫌っている。
「安心しろ俺は味方だ」
そう言ってエルフの頭をポンポンと軽く叩いた。
「信用出来ないってんなら今からエルフの森にでも帰ってくれたらいい」
俺としても嫌々ついてきて欲しくはないからな。
「………帰る場所なんてない………」
しかし彼女はそう漏らした。
「私は売られたから」
そう言って涙ぐむ彼女。
「………」
無言で抱きしめた。
「えっ?」
「辛かったろ?もう、大丈夫だ」
「ふぇぇぇぇぇ………」
泣き始める彼女の背中をさすってやる。
辛いことにエルフも人間も関係ない。
それは家族のように信頼していた仲間に裏切られ俺だからこそ分かる。
辛いことは辛いのだということを。
「あなたは?王都警察の人、じゃないですよね?」
もう1人の少女が少しビクビクしながら聞いてきた。
「悪いが違う。ただ通りがかっただけだ」
そう答えると俺は本題を切り出すことにした。
「もし良ければ俺の仲間になってくれないか?」
「仲間、ですか?」
そう聞いてきた少女に頷く。
「俺は王都に行って冒険者になりたいと思ってる。そのためのメンバーが足りなくてな」
「私なんかでいいんですか?戦えませんよ。私は、だから奴隷だったんですから」
「勿論教えるさ」
そう言って頭に手を伸ばそうとしたら
「ひっ!」
彼女はビクビクしながら両手で頭を覆った。
「叩かないよ」
そう言って頭をポンポンした。
奴隷に見られる反射だった。
こうやって手を持っていくと叩かれると思ってしまう人達が奴隷には多いのだ。
「え?」
「辛かったな。もう、大丈夫だ」
「ふえぇぇぇぇぇ………」
彼女も泣き始めて俺にしがみついてきた。
仕方ないな。2人が泣き止むまで少し待とうか。
そう思って歩きながら少し待っていた。
先に泣き止んだのはエルフの少女、それから俺を見て話しかけてきた。
「あ、あの助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
素直に感謝は受け取っておこう。
「………」
少し彼女は俯いたけど暫くしたら顔を上げた。
「私の名前はエリー」
「俺は、リオンだ」
自己紹介していなかったのでしておくことにした。
「私をリオン様の仲間にして欲しい」
そう言ってくる彼女。
「いいのか?」
「うん。私を助けてくれたリオン様の役に立ちたい///何でもするから捨てないでほしい」
そう言って顔を赤くする彼女。
少し顔を逸らしていたが、それでもその赤い顔は見えてしまった。
照れくさいんだろう、そう思いながら俺は口を開いた。
「契約魔法使っていいか?とある出来事で裏切りが怖くなっていてな」
「うん。いいよ」
そう返事をくれたので俺は地獄の縛鎖を使うことにした。
地獄の権能はスキルであり俺の固有スキルのようなものだが、説明も面倒なので魔法ということにしておいた。
「これで、契約完了だ。裏切れないようになってるから」
「分かった。本当にありがとう人生でこれより胸が暖かくなったことはないよ。リオン様の優しさで涙出てきちゃった………」
そう言って涙を拭いながら頷く彼女を見てから俺はもう1人の少女に目を戻した。
彼女にもどうするか聞こうとしたが先に声をかけてきた。
「あ、あのリオン様。私はリーナです」
そう言って名乗った少女リーナ。
「ん?」
「私もリオン様の仲間になりたいです」
そう言ってくれた彼女。
「さっきの話は聞いていたよね?それでもいい?」
「はい。むしろ光栄です」
「光栄?」
俺の仲間になることが光栄なんだろうか?
そう思って聞き返しながら首を捻った。
彼女は横目で先ほど自分たちが入っていた馬車に目をやる。
「私はあの箱の中から見えていました。私たちを運んでいた奴隷商人が黒竜に襲われているのを。見えたのはそこまでですけれど、出た時には黒竜がいなくなっていました。これはリオン様が撃退したということですよね?」
何か勘違いしているらしいが説明も面倒なので俺はとりあえず頷いておくことにした。
「やっぱりそうなんですね!そんなにお強いリオン様のご活躍を見られただけでも光栄ですのに、更にお仲間に加えていただけるなんて恐悦至極です。こんな大チャンス逃す事は失礼ですので、是非ともお仲間に加えていただきたいです!これからもリオン様の活躍を見られるなんて私はなんと幸せ者なのでしょうか!」
そう言ってきた彼女。
盛大に勘違いしているらしいが一応は了承を貰えたらしいので彼女にも地獄の縛鎖を使っておいた。
これで2人とも俺を裏切れない。
「ところで」
そう言ってリーナはティアラに目をやった。
彼女は2人に出会ってからずっとフードを目深に被っていて喋らないままだった。
「あちらの方は?」
「俺の仲間だ」
そう答えるとティアラが頷いた。
「そうです。私は仲間ですのでお気になさらず」
そう言っている彼女だが見た目だけでは怪しさが凄いな。
「まぁ、頼りになるやつだから」
そう言って俺は視線を戻した。
目指すは二ムガル王国。
※
色々と調べていて分かったことだが地獄の鎖は透明にすることもできるみたいだ。
その特性を理解した俺は30メートルあると伝えられている二ムガル王国を囲む壁を乗り越えた。
夜は目立ちにくいため容易に忍び込むことが出来た。
身分証明書のない俺たちは真昼間に入ると城門の所で弾かれる恐れがあるため忍び込むような形になった。
そうして俺たちは二ムガル王国内の人のこない森の中で日が昇るまで待っていた。
「これからどうするの?」
エリーの質問に答える。
「ギルドに行きたい。冒険者になるなら先ずはギルドに行って冒険者登録をしないといけないからな」
ギルドカードは身分証明書にもなる。
それに冒険者としてヒュオン達に接触するのならやはり身分証明書として持っておかないと接触も厳しいはずだ。
のだが
「先に2人の服を買おうか」
そう言って2人の姿を見た。
エリーもリーナも2人ともボロボロの布を身に着けているだけだからだ。
「ギルドに行くのは服を買ってからにしよう」
「で、でもお金ないです」
不安そうにリーナがそう呟いた。
その顔には涙が浮かび始めていた。
「俺が出すから」
「そ、そんなの勿体ないですよ。こんな私にお金を使うなんて。ご主人様であるリオン様の使いたいことに使って頂かないと恐れ多いですよ」
彼女は両手を振ってそう言ってくるが、2人を見てから口を開いた。
「俺は2人にマトモな服を着させてあげたい。俺はそうやって金を使いたい」
何よりも2人をこんな姿で何時までも歩かせてなんていられない。
下手をすれば奇異の目で見られるし。
「そうだな」
俺はそう言ってアイテムポーチから上着を取り出した。
それを2人に渡した。
「男物で悪いけど新しい服を買うまでそれを羽織っていてくれないか?」
「わ、私汚いですよ?」
遠慮するリーナだったが
「汚くなんかないよ。可愛いよ」
そう言って俺は彼女に羽織らせた。
すると
「//////」
顔を赤くしていた。
そうしてから俺は口を開く。
「服屋に行こうか」
ようやく頷いてくれた2人を連れて服を見に行くことにした。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
少しでも面白い、面白そうと思っていただけたらブックマークをして頂けるととても励みになります。
ここから少し下にスクロールしたところに広告がありその下に☆☆☆☆☆という評価項目がありこの作品の応援もできます。
なのでそこからも応援していただけると励みになります。
よろしければよろしくおねがいします。