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5話 現世へと戻る

 慌ただしくノックされた扉を開けることにした。

 そこに立っていたのは初老の男だった。


「王!ご説明を求めます!」

「俺が王になった。それだけだ」


 そう答えて扉を閉めようとしたが


「な、もう少し!お話を!」


 閉めようとする扉に足を挟んで止めてきた。


「逆に何を聞きたい?」

「どうやって王になられたのかなどについてお聞きしたいです!」


 俺は軽く今までの事を話した。


「な、ならば貴方は地上からやって来たのですか?」


 頷くと扉から手を離して男を部屋の中に招いた。


「あぁ。俺は元仲間に裏切られてここに落ちてきた」


 そう言うと男に目を向けた。


「俺を裏切りシェラを殺した奴らに地獄を見せたい。そこをどいてくれないか?俺は地上に戻るつもりだ」

「な、なりません!」

「黙れよ」


 男の顔を掴んだ。


「ふがっ!」

「うるさいな俺が今は王なんだろう?口答えするな」


 ギリギリと力を入れていくと


「あっ」


 べきっと骨が割れるような感触がしたと思えば男が死んでいた。

 しまった。


 力を入れすぎたか。

 まぁいいか蘇るし。


 それにしても地獄の権能は基礎能力も上がるみたいだし、この辺りの下限というものは徐々にだが覚えていった方がいいな。でなければ今のようにまた誰かを殺してしまう。

 そう思いながら男の蘇生を待った。


「し、死にましたよ!サイ様!」


 普通なら死にますよ!というところだと思うのだが地獄だと違うんだな。


「お前が邪魔をするからだ」

「と、仰られましても前任者のハデス様がいなくなった日から業務が滞っているのです」

「はぁ?」

「連日やってくる死者達への対応が追いついていないのが現状なのです!」


 そう告げてくる男。


「そんなものに興味無い。俺に降りかかるはずだった仕事はハデスにでもやらせておけ」


 そう言うと俺はハデスを牢獄から解放しようと思った。

 その瞬間。


「わぁっ!!!」


 ハデスが牢屋から瞬間移動して目の前にやってきた。

 どうやら思うだけで大抵のことはできるらしいな。流石神だ。


「ひ、ひぃぃいいぃぃ!!!」


 酷く怯えているハデスが目に映った。

 権能が移っただけでこの変わりようだ。


 流石、絶対的な力というやつか。

 そう思いながら念のため俺は地獄の縛鎖をハデスに使った


「俺を裏切るなよ?」

「わ、分かりました」


 震える口でそう話したハデス。


「俺は今から行くところがある」


 そう伝えると地獄の権能を使った。

 何となく使い方は分かるのだ。

 色々な機能がある中テレポートを選択する。


 テレポートというと魔力を消費して好きなところに転移出来る超上級魔法として地上にも存在したが、この地獄では無制限に俺はテレポート出来るらしい。


 死んでまで手に入れた権能だがその効果はやはりすさまじいものだ。


「で、ですが?!業務の方はどうなさるおつもりですか?」

「ハデスに任せておけ」


 どうせこいつは俺を裏切れなくなったのだ。

 それに俺にはそんな業務とやらをやっている暇はない。


「やっておけよ?ハデス?」

「は、はい!」


 その返事を聞いて俺はシェラに目を向けた。


「行こうか、俺たちの復讐を始めに」

「はい」


 彼女はニッコリと微笑んだのだった。



 テレポートで移動してきたのは地上へと繋がる大穴の下。

 目の前には1本の蜘蛛の糸がぶら下がっていた。


 それが風によって揺れる。

 それを見てから風が吹き抜けてくるような穴を見上げながら呟いた。


「あいつら許さねぇ」

「お兄ちゃん」


 俺の左隣で左腕を掴んでくるシェラ。


「凄く冷たかったです………死ぬって言うのは凄く悲しいことだって、寂しいことだと思いました。最後にお兄ちゃんの顔も見れずに………死んでいきました」

「シェラ………悪かった」


 そう言って彼女を抱きしめた。


「俺があいつらを───────1人残らず死んだ方がマシだと思うような生き地獄にたたき落とす」

「お兄ちゃん………」

「だからお前は俺の横で見ていてくれ」


 そう言うと大穴を見上げた。


「待っていろヒュオン………お前らを俺が………」


 そこまで言った時だった。

 同行してきたハデスが聞いてくる。


「サイ様本当にお戻りになるつもりっすか?」

「現世に戻ろうと思ってな。俺の居場所はあそこだから」

「サイ様考え直してくださいっす」


 ハデスがそう言ってくる。

 何故考え直さなくてはならない?


「サイ様が出ていけば地獄の主がいなくなるっす。そうなれば秩序が」

「それはお前が保てばいいハデス」

「で、でも私には権能が」

「やばそうなら戻ってくる。それまでの業務を頼むだけだ」


 そう言うと俺はハデスにはもう用はないと態度で示して蜘蛛の糸を目指して歩くことにする。


 胸は高鳴っていた。

 これだけの力を手に入れたのだ。


 何度も死んだとは言え地獄の神として君臨する事が出来るほどの絶大な力を手に入れた。

 昔の俺では考えられないほどの力だ。


「俺はヒュオンを地獄へと叩き落とす」


 そう呟いた俺は蜘蛛の糸の前まで辿り着いていた。


「ほんとにやばそうなら帰ってきてくれるんすよね?私権能がないと何にもできないポンコツなんすよ」


 再度確認してくるハデスの言葉に頷いた。

 それにしても自分でポンコツというなんて素直な奴だな。


「私に権能がなかったらそこらの鬼にあんなことやこんなことをされても抵抗できないんすよ。なんで守ってほしいんすよね。ほら私非力な女の子なので抵抗できないんすよ」

「へぇ、それは見てみたいものだな」

「お、鬼っすか?!か、勘弁してほしいっす」


 そんなことを話していたら彼女は改まった顔を作る。


「注意して欲しいことがあるっす」


 そう口にした彼女に続きを促した。


「地獄の権能は現世ではフルに力を発揮できないっす。あまり過信しないで欲しいっす。それだけっす」


 そう言うと彼女は1歩下がった。

 もう言うことは無いのだろう。


 俺を止めるつもりはもうないようだ。


「なら、俺からもひとつ、地獄を頼んだ」

「了解っす」


 その言葉を聞いて俺はシェラの手を掴んだ。


「さぁ、戻ろうシェラ。あいつらを地獄に叩き落とすんだ」

「はい!」


 俺は現世へと繋がる細い細い糸を掴むとそのまま登っていく。


 長く細い蜘蛛の糸を。


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