24話 俺の作戦が場の空気を変えた
「なにっ?ミズガルズに向かってくれるのか?」
ギルドマスターが驚いたような声でエリーにそう聞き返す。
「えぇ、行くよ。同盟国のピンチなら駆けつけないとね」
そう口にする彼女。
随分とリーダーっぽくなってきたな。
「ならば君たちはミズガルズへ向かってくれるか?」
「分かった」
エリーがそう返事をして俺たちのミズガルズ行きは決まった。
「流石エリーさん達だぜ!そう言ってくれると思ってたぜ!」
「だよな!エリーさん達はどんなピンチにだって駆けつけてくれる!」
その瞬間俺たちのことをそうやって讃えてくれる奴らが現れた。
その言葉はどんどんと広がり
「エリーさん達頑張ってくれ!」
「ミズガルズを守ってくれ!」
そんな声がギルド内全体から聞こえた後に
「きゃー!!!!リオン様頑張ってー!!!!」
何故か俺のことを呼ぶ声もあったが無視して成り行きを見守ることにする。
そんな中
「ギルドマスター」
ギルドマスターを呼ぶ声があった。
その声の主はヒュオン。
「俺達もミズガルズへ向かおう」
「お前たちもか?」
その言葉に頷くヒュオン。
「ローエンの件で俺たちの信頼が落ちているのは自分たちでも分かっている。だからこそ行かせてくれないか?」
なるほどな。
危険地帯に自ら出向いて信頼を得ようとしているのか。
考えたな。
「1度失った信頼を簡単に取り戻せるなんて思っていない。だが行かせて欲しい」
「分かった。ならば私も同行しよう。しかし、この人数では物足りないな」
そう言って見回すギルドマスター。
「誰か?!他にミズガルズへ向かってくれる者はいるか?」
その言葉を聞いても誰も手を挙げなかった。
理由は1匹でも討伐難易度の高いケルベロスが何匹もいるのと、ヒュオン達がいるからだろう。
その後色々とギルドマスターが頑張ったが結局ミズガルズ行きのメンバーは増えなかった。
「ミズガルズの方はエリーさん達が何とかしてくれる」
というよりここにいるヤツらの殆どがエリーをかなり信頼していた。
俺たちならミズガルズを何とかしてくれる、と。
ま、人数が集まらないのならばどの道仕方ない話だな。
「早く行こう」
俺たちはギルドマスターの言葉に頷いてミズガルズへ向かうことになった。
◇
移動方法はテレポート。
ミズガルズにたどり着いた俺たちはまずそこのギルドへと向かった。
どこのギルドも作りは同じだ。
手前に簡単な椅子やテーブルがあって奥にカウンターがあるというどこにでもあるギルド。
カランカランと音を鳴らしてギルドの中に入ると視線が一気に俺達に集まる。
かなり緊迫しているらしい。
「救援要請に応じた。ギルドマスターはいないか?私は二ムガル王国のギルドマスターであるアリシアだ」
「私がそうだが」
アリシアの声に答えて奥からここのギルドマスターが出てきた。
この王国でも女性がギルドマスターをしているらしかった。
しかし
「ど、どうしたのだ?その傷は?」
アリシアが血まみれのギルドマスターに駆け寄る。
「ケルベロスだ。いるとは知らずに下見に行ったところな………私は限界だ。アリシアここの指揮をとりあえず任せていいか?」
そう言って呻く彼女に答えるアリシア。
「あぁ。分かった」
そう答えると彼女はここにいる人間に向かって話しかける。
「私は二ムガル王国のギルドマスターだ。これよりここの指揮は私が執る。緊急クエストに参加する者は集まってくれ。作戦について説明する」
そう言うと彼女はカウンターに地図を広げる。
しかし
「無理だよ」
「そうだ」
ここにいた連中は誰もアリシアの周りに集まろうとはしなかった。
「相手は魔王軍どころかケルベロスもいんだぜ?!無理に決まってんだろ?」
1人がそう口にすると
「そうだ!無理に決まってる!」
「ケルベロスが討伐難易度Sランクなの知ってんのか?!」
「そいつが何体も出てくるなんて無理に決まってんだろ?!しかも魔王軍のモンスター3000体もいるんだろうが?!こっちは何人いる?ここにいるヤツら多く見積ってもせいぜい100人とかだろうが?!それにギルドマスターは不在!どうやって戦うんだよ!」
そいつに続いて何人もが無理だとアリシアに向けて言い放つ。
初めから諦めているらしい。
「ははっミズガルズはもう終わりだよ。あんたらはさっさと帰んな」
そう言って首を横に振ってギルドから出ていこうとする男がいた。
「ま、待て!やってみなくては分からないだろう!」
呼び止めようとするアリシア。
仕方ないな。
そう思って俺はギルド全体に聞こえるくらいの声で口を開いた。
「待て、勝算ならある」
俺の一言でギルド内の視線は全て俺に集まった。
「「「はっ?」」」
誰もが意味の分からないと言ったような顔をして
「さっきの話聞いてなかったのか?!つんぼ野郎が!ケルベロスが何びきもいるんだぞ?!」
「そうだ!そのケルベロス相手に何をどうするつもりなんだよ!てめぇは!俺たちなんか食い散らかされて終わりだぞ?!」
そう罵倒してきたのを聞いて
「黙れ!リオン様を罵倒するな!」
エリーが反応していたが俺はエリーを片腕で制してから口を開いた。
「お前たちの言った通りここにいる人間は100いくかいかないかだろう。それで3000体を相手にするなんて確かに無理な話だ。1人30体無理なことは誰だって分かる」
「なら話は決まっ………「勝算があると言ったろ?」
そいつの言葉を最後まで聞かずにそう口にした。
「3000という数に囚われすぎなんだよ。要は3000を相手にしなければいいだけの話」
「どういうことだ?」
そう聞いてくるアリシア。
「これから俺たちが向かうのはヘブンズヴァレーという谷で底の部分は横幅が狭い。故に横に広がって戦うというのは俺達も向こうもできない。この言葉の意味が分かるか?」
聞いてみても首をひねるだけの奴ら。
俺は分かりやすく図を描くことにした。
━━壁━━
俺 VS モ1モ2モ3
━━壁━━
「極端な話をしたがこれで分かるか?バカ正直に相手すれば確かに厳しいがこうやって一度に戦う数を極限まで減らし持久戦に持ち込む。ケルベロス以外は雑魚の群れだ。雑魚相手に負け続けなければ俺達が勝てる」
俺がそう説明した直後ギルドは静寂に包まれた。
あれ、なんか変な事言ったか?
「なっ!こんな作戦があったなんて!確かにこれだと3000を一度に相手にせずに済む!」
ギルドマスターがそう口にした瞬間諦めムードに包まれていたギルド内は再び活気を取り戻す。
「たしかにこれだと勝てるな!」
「何だあいつ!天才だろ!」
「何処かの王国の名軍師か?!あいつすごいな!」
そんな声が聞こえてくるが俺としてはこんなことも思いつかなかったのかと言いたいくらいだった。
普通に考えて勝てないなら頭を使うしかないだろう。
「これは凄いですよ!リオン様!」
「確かに!これだと誰でも勝てそう!」
リーナとエリーがそう言いながら俺の両腕に抱きついてきた。
ティアラは
「相変わらず頭が切れますね」
と口にしていた。
アリシアに視線を戻す。
「今の作戦を聞いたな?!私たちの勝ちは揺るぎない物になった!この作戦でこの王国を守る!参加したい者は名乗りを上げてくれ!」
そうして上がる手の数は予想以上に多く、というよりギルド内にいた人間全員が俺の作戦に賛同したようだった。
どうやら作戦は決行されることになりそうだな。
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