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23話 緊急クエスト発令と世界の危機

 俺たちは地上へ帰還した。

 あの後ローエンの断罪は私がやるっすと言って担当してくれるようになったハデス。


 俺から権能を奪われる原因が目の前にいるのだからよっぽどチャンスだと思ったらしい。


「後4人だね」


 俺たちの宿でそう声を出したのはエリー。


「そうだな」

「でもあの人たちがリオン様と因縁があるなんて聞いた時は驚きましたね」


 リーナは俺から話を聞いた時のことを思い出しながら驚いていた。


「私もリオン様の復讐お手伝いしますよ!あんな人でなし達生きている価値なんてありません!」


 そうやって言ってくれるリーナ。

 俺は本当にいい仲間を持ったようだな。


 そう思いながら立ち上がる。


「とりあえずヒュオン達の様子でも見に行こうか」


 そう言って俺たちは宿を出てとりあえずギルドを目指すことにしたのだが、その道中で声をかけられた。


「あ、あのエリーさん達ですよね?!」


 女の子だった。


「そうだけど、どうしたの?」

「貴方たちの大ファンなんです!私!」


 そう言ってエリーの手を取ってくる少女。


「え?ファンなの?」

「はい!ファンです!これからも頑張ってください!魔王なんかに負けないで幸せな世界を作ってください!みんなエリーさん達に勇者になってほしいって言ってますよ!!!!」


 彼女は元気よく答えてぺこりと一礼してから去っていった。


「普段の行い、だな」


 そう言ってやると


「全部リオン様のおかげ」


 そう謙遜する彼女だった。


「とにかく、これからもよろしく頼むよ」


 そう言ってから俺はギルドに向かうことにした。

 カランカランと音を鳴らしてギルドに入ると


「ようエリー」

「あら、こんにちはヒュオン」


 ヒュオンが俺達に近付いてきた。

 こいつらのパーティはいつも通りではなくローエンが欠けていた。


 その光景に俺の影響が出ていることを実感し、復讐の成功を同時に感じるのだった。


「ちっローエンのせいで悪評立っちまった」


 そう愚痴るヒュオン。

 そして、その悪評のせいなのか。


 俺達の方を見てぼそぼそと話す声が聞こえる。


「おい、あいつら違法薬物を販売してた奴らだろ?まだ潰れてないんだな」

「何されるか分かんねぇし近寄れねぇな。つぅかこの国から出てってほしいわ。いや、世界から消えた方がいいかww」

「でもエリーさん達は話してるぜ?」

「ばーか。あれはエリーさん達に絡んで自分たちは正常だと周りに思わせたいだけだよ。今最も勢いがあって、話題のエリーさん達だぞ?そんな人たちといたら噂もなくなるって思ってんだろ」

「そっか、エリーさん達も大変だな。早く手を切ればいいのにな」


 そんな会話が聞こえてきた。

 俺が流した噂でここまでなっているなんて流した甲斐があったものだ。


「大変だね。でも人の噂も何とかって聞くし直ぐになくなると思うよ」

「そうだといいがな。主犯のローエンは亡命した訳だしな。とんでもねぇ置き土産(みやげ)残しやがってクズが」


 当然といえば当然だがもう完全に仲間だとは思っていないようだ。


「ヒュオン。起きてしまったことは仕方ないアル。信頼を取り戻していくしかないアル」


 カグラがやれやれと首を横に振りながらそう口にした。


「そうだな」


 と口にしてエリーに目をやるヒュオン。


「俺らは断じて違法薬物なんて関係してねぇ。それだけは信じて欲しい」

「信じてるよ。仲間だしね」


 そう口にするエリー。

 その時だった。


「大変だ!」


 バンとギルドの扉を開いて慌てた様子で駆け込んでくる男がいた。

 その男は真っ直ぐにカウンターに向かう。


「ギルドマスターはいないか?!」


 その言葉に反応したギルドマスターが奥の部屋から出てきた。


「何の騒ぎだ」

「そ、それが!」


 慌てた様子で口を開いているせいかたどたどしく話し始める男。


「魔王軍が攻め込んでこようとしています!」

「な、何だと?!」


 男の声にギルドマスターは大声を上げてここに集まった人間に向けて口を開いた。


「ただ今より緊急クエストを発令する!」


 ギルドマスターの綺麗な声はこの場全体に届きその言葉を聞いた誰もが呆然としてしまっていた。

 当然の話だ。いきなり魔王軍が攻めてきたのだから。


 そんな中ギルドマスターと男の会話が続く。


「向こうの兵力は?」

「具体的には分かりませんが3000はいるかと」

「今どこにいる?」


 ギルドマスターはそう会話を進めながら職員たちにあれこれと指示を出して緊急クエスト発令の準備をさせる。


「ヘブンズヴァレーですね」


 ヘブンズヴァレーというと、ここからしばらくいったところにある谷だな。

 魔王領と人間領の丁度境くらいにある場所だ。


 そしてその谷から南下したところにはミズガルズ王国という王国があったはずだ。

 という事は王国が襲われる危険もある。


「ミズガルズは問題ないのか?」

「それが、ミズガルズから救援要請があり」

「同盟国だ。助けをやらなくてはな」


 そう言いながらギルドマスターは色々と行う。

 そんな中、男の元に鳥の使い魔がやってきた。


 そいつはボロボロの体で持っていた紙を男に渡すとそっとテーブルに降り休息を取り始めた。

 そしてその届けられた紙を見て声を上げる男。


「た、大変です!ギルドマスター!」

「今度はどうした?」

「それが」


 そこまで言ってその先は言い淀む男。


「モンスターの増援があり更に増えた魔王軍は二手に別れて………片方はこちらへもう片方は明らかにミズガルズへ向かっているそうです!そして………ミズガルズ側に向かった方にはSランクモンスターのケルベロスが何匹も確認されたみたいです」

「な、何だと?!ケルベロスが複数?!確実に潰しに来ているな!」


 そう告げられてざわつき始めるギルド内。

 その理由は直ぐに分かることになった。


「おいおい、ミズガルズって今魔王領に攻め込んでいて強い冒険者達が不在だったよな?!」

「そうだぜ!どうすんだ?!」


 今ミズガルズに強い冒険者達や衛兵はおらず戦力になる人間がいない。

 それは俺も聞いていたことだ。


 俺も含めてここに集まった人間の視線がギルドマスターに集まる。


「どうするんですか?!ギルドマスター?!」

「このままじゃミズガルズが陥落しちまう!いや、それどころか手薄のミズガルズから崩されて世界的にも危ない!」


 全員がギルドマスターにそう一斉に声をかける。

 しかし


「………くそ、どうすればいい………無理だケルベロスに3000のモンスター達など………」


 何も話せないギルドマスター。

 みんなはギルドマスターの声を求めるが


「はい」


 突然声を上げたのはギルドマスターではなく、エリーだった。

 ここにいる人間の視線を全部集めるエリー。


「私たちがミズガルズに向かうよ」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>「同盟国だ。助けをやらなくてはな」 同盟国でなければ他国のギルドメンバーを見棄てても良いとも取れる言い回しに見えます。 この世界は、ギルドはそれぞれの国の従軍扱いなのでしょうか?
[一言] 保険金詐欺で殺人やらかしてる奴等が麻薬にかかわってないとか信じられねえ これは俺の島だみたいに分業して悪さしてるかもしれないけど
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