15話 最初の標的
「ガルゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」
3つ首を持った地獄の番犬が声を上げる。
「なっ!馬鹿な!ケルベロスだと?!」
ギルドマスターがようやく構える。
しかし
「ひ、ひぃぃいい!!!!!ケルベロスだ!!!!!逃げろ!!!!!」
ここにいる冒険者達は我先にと逃げ出す。
「待て!退くな!構えろ!」
ギルドマスターがそう口にしているが
「ケルベロスなんて相手出来るわけねぇよ!!!!」
そう言って逃げ出し始める低ランクの冒険者達。
「そうだ!ケルベロスは1匹で小さな村を数分で焼き払えるんだぞ?!地獄の番犬だぞ?!逃げろ!!!!!」
人々がそうやって逃げ始めた時
「ガルゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
それを見てケルベロスがついに動いた。
俺達に向かって。
速い。
先程までの雑魚とは比べ物にならない速さで迫り来るそれは
「ガァァァァァァ!!!!!」
走りながらブレスを吐き出した。
「「「うぎゃぁぁぁあぁぁ!!!!!」」」
俺たちの横を走り抜けた炎のブレスは無防備な人々を何人も焼き始める。
「何だ?!この火力?!あのケルベロス強いぞ?!」
「確かにな!ここまでブレスを届かせられるケルベロスはいない!ギルドマスター!撤退した方がいいな!」
ギルドマスターとヒュオンが素早く現状確認を行った。
そうしている間も今も尚火だるまの中から悲痛の声は届く。
「ぎゃぁぁああ!!!たすけてくれぇぇぇえ!!!!」
その声にいち早く反応したのはリーナだった。
「癒しを!ヒール!」
彼女がそう叫んだ瞬間炎は消えてそこには無傷の人々が立っていた。
「なっ!初級魔法のヒールでこの回復量だと?!」
「何だ今の回復量!」
驚いているギルドマスターやヒュオンだがそんな暇はない。
「ガァァァアァァァ!!!!!!」
今も尚ケルベロスは駆けて来ているからだ。
そして
「ひ、ひぃいいぃいい!!!!」
突然の事で動けずにいたローエンに襲いかかるケルベロス。
「ローエン!!!!くそ!なんて速さだ!歴戦のケルベロスだぞ!」
そう言いながら剣を抜くヒュオン。
「うぉぉぉぉ!!!!毘沙門天の加護よ!!!!!」
そう言っているヒュオンだが、それじゃ間に合わない。
だって今既にケルベロスはその前足をもたげて鋭い爪でローエンを切り裂こうとしているのだから。
故に、ヒュオンが準備をしている間に俺は先に動き
「がっ!」
棒立ちのローエンを突き飛ばした。
そして
「「リオン様!」」
その様子を見ていたエリーとリーナの声が耳に届いた。
次に届いたのは
「リ、リオン………」
尻もちを付いたローエンの声。
ケルベロスが振るった爪は本来こいつを切り裂くためのものだった。
しかしそこに本来の獲物はおらずいるのは俺だった。
ならば誰にその爪は降りかかるか。
それは勿論俺だった。
「リオン………をよくも!!!」
左腕で身を庇ったが血を垂れ流す俺を見て剣を抜いて走り出すヒュオン。
しかしその前に
「よくも!リオン様を!フレア!」
エリーが魔法で焼き尽くした。
「ゴアァァァァァァァァァ!!!!!!」
途端に火達磨になるケルベロス。
それが燃え尽きるのに時間は要らなかった。
「………」
それを見てから俺は無言で気絶するフリをした。
瞳を閉じたため暗闇の中で聞こえる俺を呼ぶ声。
しかし、それも無視して倒れ込む。
後はティアラが上手くやってくれるだろう。
◇
次の日俺は目を覚ましたフリをした。
「目覚めましたか」
そこにいたのはローエンだった。
それから距離を取っているがマーニャにヒュオンもいた。
カグラとヒルダは席を外しているようだが。
「あぁ」
頭を抑えながら上半身を起こした。
「すごい回復力の速さですね」
ローエンが話しかけてきた。
「私は職業柄色んな人を見てきましたが貴方ほど回復の早い人は初めて見ました」
そう言ってくる。
「そうだろうか」
「そうですよ。かなり優れています」
そう言ったローエンは改めて俺の顔を見た。
「ありがとうございました」
そして礼を言う。
それを聞いてヒュオン達も俺に礼をしてきたが
「サポーターを守るのが俺らの役目だ。気にするな」
そう言って立ち上がる。
幸いマスク代わりのマフラーは外されていない。
ティアラが根回ししてくれたのだろう。
「で、ですが、私はあなたに救われた。本当に命の恩人ですよ」
そう言ってくるローエン。
その彼がヒュオンに目をやると彼は出ていった。
しかしマーニャが
「これ、果物。あなたのために剥いたから食べてね」
涙が出そうな顔でそう言って果物の入ったバスケットを俺に預けて出ていった。
それを見送ってローエンが口を開いた。
「貴方と2人で話がしたかった。貴方は男と2人きり、はあまり好ましくはないかもしれませんが、とにかくお礼を言いたかった」
そう口にするローエンの顔は笑顔だった。
それを見て俺は内心笑いそうになっていた。
全部仕込んだ事なのにな。
ケルベロスが来たのは俺が仕込んだからだ。
そしてあれが普通のケルベロスの何倍も強かったのは俺が仕込んだから。
そして俺がこいつを救うのも、俺が助かるのも全部計算していたことなのだから。
何故かって、こいつをこいつらを地獄に落とすための下準備。
だからこそ俺はここでこいつらとの信頼関係を確かなものにするためにこう口にする。
「───────仲間を守るのは当然だろ?」
「リオン………あなたは何て立派な人なんだ」
そう言って涙を流し始めるローエン。
泣くほど嬉しいことらしい。
この茶番が。
そして続けて口を開く。
「もう俺の前で誰かを死なせることはしない。全員で来たなら全員で帰る」
そう言ってローエンの横に立つ。
「それはあんたも対象だ」
「リオン………本当に感謝しております」
そう言って膝をついて首にかけた十字架の下側を両手で掴んで瞳を閉じた。
「感謝します。神よ………」
涙を流して神に祈る男。
こいつが事ある事にこうやって神に祈るのは仲間だった俺だからこそ知っている。
彼は十字架を離して立ち上がった。
そして俺に手を差し出してきた。
「リオン、突然ですがこれからお時間はありますか?」
「あぁ」
「私についてきてくれますか?貴方を紹介したい人達がいるんです」
そう口にするローエンに頷く。
「分かったよ。ついていく」
「ありがとうございます」
最初に地獄を見るのはお前だ、ローエン。
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