12話 防衛作戦への参加と腐った奴ら
あの後俺たちはお互いのパーティメンバーの名前を軽く紹介しあってから食事を共にすることにした。
「にしてもEランクから一気にSランクとはすごいな」
「リオン様の教え方がすごく良かったからだよ。このお方は強いだけでなく物の教え方もすごくお上手なんだよ!」
リーダー同士の会話を横で聞き流す。
矛盾が出ないように俺はヒュオンには2人を拾ったことを既に伝えてある。
これは別に隠したところで意味は無いし。
「メガネ、それ寄越すアル」
「カグラ食べ過ぎです。健康にわる「うるさいアル黙って寄越すアル」
カグラがヒルダから食事を奪っていた。相変わらずなようだ。
勿論ローエンとマーニャも同じで。
本当に俺がいなくても何の問題もないパーティで、涙が出てきそうだ。
でもこんなところでは流せない。
こいつらに………俺と同じ絶望を。
俺はこの憎悪を、絶望を原動力にしてこいつらに地獄を見せる。
俺とティアラは殆ど喋らないことを理解していてヒュオン達も無理に声をかけようとはしてこない。
それどころかこの会食はヒュオンとエリーのリーダー格が話すだけのものになりつつあった。
「へー。じゃあ君ら本当に冒険者パーティとして動き出したばっかりなんだ」
ヒュオンがエリーにそう聞いていた。
「うん。本当に冒険者としては駆け出しで右も左も分からない」
「じゃあさ。とりあえずの助言なんだけど防衛作戦は絶対参加しといた方がいいぜ」
「そうなの?」
「あぁ。報酬がいいし、なによりランクがあがるんだよ」
ヒュオンも強い奴とは繋がっていたいからかまともなアドバイスをしているようだ。
「どうする?」
小さく聞いてくるエリー。
「参加しよう」
初めから参加するつもりだったが一旦ギルドマスターとの会話をやめさせたのはヒュオンの接近に気付いていたからだ。
奴がどう動くのか、ヒュオンの出方が知りたかったから切り上げさせただけだ。
出方としては分かったので参加一択だ。
「分かった、参加する」
エリーがヒュオンにそう返事をした。
「OK。あんたら新人だが筋は良さそうだ。ってレベルじゃないか。かなりハイレベルだ。まぁ、これから一緒に頑張ろうぜ。よろしくな」
そう言って去っていくヒュオンだった。
◇
ヒュオンと別れた俺達は宿に戻ってきていた。
勿論防衛作戦の参加表は既に提出してある。
それにしても狙い通り、というかそれより早い段階でヒュオン達と接触出来たのは僥倖だ。
後は俺がサイ本人だと気付かれずに上手くやり通さなくてはならないな。
そんな事を思っていたらエリーに声をかけられる。
「リオン様?」
「ん?」
「ほんとに私がリーダーでいいの?」
「頼む」
「でも、不安なんだよね。あんなのでいいのか」
「そのうち慣れるさ」
そう言って頭を撫でてやる。
そうしてから剣を持って立ち上がることにした。
「何処か行くの?」
「少し、な。先にティアラ達と共に寝ていてくれ」
そう言い残して外に出ると俺は周りに人がいないのを確認してから地獄へと移動することにした。
地獄への帰還は俺のスキルで自由自在に行うことが出来る。
「あ!待ってたっすよ!リオン様!」
「ハデスか」
パタパタと足音を鳴らしてハデスが駆け寄ってくる。
「へっへっへ、うぇーるかむっす。今日は何の御用っすか。ご飯にする?お風呂にする?それとも私っすか?」
そう言ってくるハデスを無視して部屋にある机に向かう。
そこに映し出されるのは現世の様子だ。
「何を見てるんすか?」
「地上の様子だ」
そこにはヒュオンとヒルダが映し出されていた。
『それにしてもあいつら凄かったな。えーっとエリーだったか』
丁度宿で俺たちのことについて話しているようだった。
『そうですよ。アルガバーンを通常のフレアで倒してしまうなど、とてつもない魔力量の持ち主ですね。長い歴史を見てもここまでの手練れはそう居ないでしょう』
『お前がそこまで言うくらいの存在なら出来れば親しくなっておきたいところだ。今日話してみたところ田舎から出てきたばかりの連中らしいし上手くいけばいい関係が築けそうだな』
そう口にするヒュオン。
『そうですね。ところで気になったのですがあのリオンという男についてどう思いましたか?』
不審に思われているか?
と一瞬思ったがどうやら違うようだ。
『今の冒険者ランクは高くないようだが筋はいい。そのうちSランクになれるだろうってところだな。あとあの女の子二人に色々と教えられる知識量は化け物クラスだな』
『同感ですね。初めは顔を隠しているので不審に思いましたがティアラという少女と共に兄妹で盗賊として育てられた、と聞いて納得しました。盗賊として育てられた人々はあぁやって顔を隠すことが習慣になっていると聞きますし』
『俺の経験上あの手のヤツらはあぁ見えて誠実だ。こちらも誠実な対応をしていれば裏切ることは無いだろう』
『そうなると利用し放題というわけですね』
『そうだな。右も左も分からないところを教えてやったという恩義があればある程度は俺たちのいい駒になるだろう。うまくいけばもう働かなくていいかもな』
そう言うと笑い出す2人。
「根本は本当に腐ってるっすねこいつら」
俺の横でそう呟いたハデス。
だが、ここまで腐っていてくれると躊躇いもなくなるというやつだ。
「俺も騙されたからな」
この顔に、この態度に、騙された。
「所詮は人を利用することしか考えていない連中だ」
俺のことも汚い金目当てだった。
俺だけならまだいい。
「妹にまで手を出したのは許さない」
俺は机に映し出された映像を切った。
そしてハデスに目をやった。
「地獄を任せる」
「言われなくてもそうするつもりっすけど」
そう言って俺の顔を見る彼女。
「もしかしてあいつら全員こっちに送るつもりっすか?それなら受け入れの準備もしておくっすけど」
「いや」
首を横に振る。
「まだだ」
「と言うと?」
「向こうでたっぷり苦しめてからたたき落とす。だから直ぐに仕事は増えないから安心しろ」
「どっちみちまた仕事増えるじゃないっすかーやだー」
喚いているハデスだが無視して横を通り抜けるとソファに座って次の一手を考えることにする。
さて、どうしてやろうか。
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