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11話 Sランク昇格と接触

 俺達は少し走って決戦の地へとたどり着いた。

 周りは断崖絶壁に囲まれて逃げ場などない円形の拓けた場所だ。


 真ん中に1本の川がまだ繋がっていていること以外は何も無い空間。

 それがこの決戦の地という場所だった。


 そしてそこで何十人といる冒険者が何十メートルもある大きな竜であるアルガバーンと交戦していた。


「ひ、ひぃいぃいい!!!!」


 そしてそれを見て一目散に逃げ出そうとするリーナ。

 彼女の手首を掴む。


「し、死んでしまいますぅぅぅぅ!!!!!」

「大丈夫だ」


 そう言って落ち着かせる。

 今の彼女やエリーはSランク以上の力がある。


 アルガバーンにも食らい付けるだけの実力はあるし、なにより食らいついてくれないと困る。

 そう思いながら俺は鋼の剣を抜いた。


 地獄の剣は一応隠しておく。

 ここから先は手を抜くという事になってしまうが地上で手に入る武器を使うつもりだ。


「ティアラ」

「はい!」


 彼女にもあまり強くないナイフを渡してある。

 ここで………いや、これから表立って活躍するのは俺たちではなく後ろにいるエリーとリーナ達だ。


 何とか戦えるようになってもらわないと。

 そう思いながら誰も前に出ていない中俺はティアラと共に前に出る。


「な、何だあいつら!」

「見たことねぇ奴らだな!ギルドマスターからの撤退の指示が聞こえなかったのか?!」


 そんな声が聞こえてくる中俺たちはアルガバーンの近くまで駆け寄った。


「ゴァァァァァァ!!!!!」


 鋭い爪のある右前脚で俺たちを弾いてこようとするその攻撃を


「よっと」


 俺は小さな動作で避けて剣を振るった。


「す、すげぇぇ!!!!!何だ今の素早い動き!!!!!」

「今の見えたか?!避けながら爪を1本削ぎ落としたぞあいつ!どんだけ器用なんだ!」


 そんな声を受けながら俺は後ろに下がると左手で軽く指示を出した。

 ニーナ達に向けて、だ。


「ゴァァァァァァ!!!!!!」


 俺がそうしている間もアルガバーンはもう片方の前足の攻撃射程圏内でちょこまか動くティアラを捉えようとするが


「遅いですよっ」


 今の彼女を捕まえられるやつはいないだろう。

 手を抜いているとはいえ俺達は地獄で究極の力を身につけて蘇ったのだから。


 その速度に当然追いつける訳もなく


「ゴァァァァァァ!!!!!」


 前足を振り続けて時間を無駄にするアルガバーン、そこに


「吹き飛べぇぇぇぇぇ!!!!!!フレアァァァァァァ!!!!!」


 エリーの魔法が飛んできた。


「ゴァァァァァァ!!!!!」


 フレアで内側から焼かれ始めるアルガバーン。

 腹の中に発生した小さかったフレアは強大なアルガバーンをすらもどんどん吸収していき、やがて


「………」


 断末魔すら上げることなく全てフレアに飲み込まれ、ドカーンと爆発した。


「す、すげぇ、今のほんとにフレアかよ………」

「な、何なんだ今のは」


 そんな声が聞こえる中俺はティアラを連れてエリー達の元に戻った。


「よくやってくれたなエリー」


 そうして先に彼女の頭を撫でておく。


「今の、私が?」

「そう。エリーのお陰だよ。それからリーナも魔法強化をありがとう。あれのお陰だ」

「えへへ、です」


 満面の笑みで撫でられるリーナ。エリーがただのフレアであれだけの威力を出せたのは彼女のサポートがあったからだ。

 そうして撫でていたら


「い、今のは」


 そう言いながらザッザッと土を踏み鳴らして近付いてくる人影があった。

 そこにいたのは金色の髪を腰まで伸ばした女性だった。


「失礼。私はギルドマスターを任されている者だ。見ない顔だが飛び込み参加にしてはすごい活躍だったな、是非とも話を聞きたい」


 初めからこうなることを狙っていたのだが、どうやら向こうから来てくれたらしい。手間が省けた。


「構わないよ」



 俺達は王都に戻りギルドマスターに色々なことを話した。

 その結果


「異例のことだな。Eランクがアルガバーン討伐戦に飛び込みで参加して倒してしまうなど………」


 そう言った彼女。

 その目は大きく見開いていた。


「本当に驚いたしこんな話聞いたことがないよ。Eランクから一気にSランクへのランクアップなんて」


 そう言いながら彼女はエリーにギルドカードを渡した。

 先程の戦闘で直接彼女の活躍を見たギルドマスターはエリーのランクをEから一気にSまで引き上げた。


 元々賢者というジョブは冒険者ランクを上げやすいジョブと言われているがここまでのことは珍しいみたいだ。


「君たちの動きも凄かったが、今のところはこれだな」


 そう言って俺たちにもギルドカードを渡してくるギルドマスター。

 俺とティアラはCランクでリーナはBランクだった。


 あくまで今回はエリーだけの評価に終わったらしい。

 まぁ、構わないが。


 これだけの評価でもやった意味はある。

 俺たちが各々カードを受け取るのを確認してからギルドマスターが口を開いた。


「君たちが良ければ、だが防衛作戦に参加してみないか?」


 そう聞いてくると同時にカウンター上に紙を出してきた彼女。

 そこには大量のモンスターから王都を守る防衛作戦の依頼が書かれてあった。


 それを見てどうしようかと悩んでいるエリーの顔が見えた。

 ので耳元で囁いて、今は考えると伝えるように言っておいた。


「今は考えさせて欲しい」

「分かった。とりあえず依頼書は渡しておくから参加したくなったら私に提出してくれ」


 そう言って下がっていく彼女。

 それとほぼ同時だった。


「やぁ」


 奴らが声をかけてきたのは。

 こちらも早かったな。


 そう思いながら俺はそちらに目を向けずにエリーに任せることにした。


「え、わ、私に言ってるの?」

「ははは、そうだぜ。姉ちゃん」


 そうやって豪快に笑ったのは忘れもしないあの青髪の男だ。

 ヒュオン、奴らが俺たちに接触してきた。


「あ、俺の事分かる?アルガバーン討伐戦に参加してたんだが姉ちゃんの魔法凄かったぜ」


 そう褒めているヒュオン。


「姉ちゃんじゃなくてエリー」


 エリーはきちんとヒュオン相手に名乗っていた。

 彼女たちは俺たちの関係を知らない。


 その方が自然な接触ができるだろうと思って伝えていないのだ。

 俺に拾われたり冒険者になったりと大忙しなのだからあまり負担はかけたくなかった。


「私はリーナです」

「そうか。俺はヒュオン、よろしくな」


 そう言って手を差し出してくるヒュオン。

 強い奴らにはきちんと手を差し出すらしいな。


 2人とも握手というのが分からないのか俺に目を向けてきた。

 こればかりは仕方ないな。


「俺で悪いが、2人とも礼儀を知らないのでな」


 そう言いながら俺は2人の前に立つとヒュオンと握手を交わした。


「いやいや、それを言うなら俺の方こそ悪いな。2人だけ目当てだった、みたいな感じになっちまった」


 そう言ってから俺に興味があるような目をしたヒュオン。

 これは本気で興味がある目なのだろう。


 こいつの本性を最後まで見抜けなかったが、何となくそう思わせる瞳だった。


「暑くないのか?そのマフラー」

「暑くはないな。盗賊として育てられた。だから付けるのは癖になっている」

「へー。そりゃ難儀だな」


 朗らかな感じでそう口にしたヒュオン。


「名前は?」

「リオンだ」

「リオンか、よろしくな」


 そう言ってティアラに目をやるヒュオン。


「そっちは?」

「ティアラだ」


 代わりに答えておいた。


「そうか。よろしくな俺はヒュオンだ」


 既に知っている名前を口する男。

 ようやくだ。こいつらを地獄の底に叩き落せる。


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