県立第一高校行列部
県立第一高校行列部の朝は早い。
まずは朝練から一日がスタートする。
通勤通学客に人気の弁当屋にて、レジ待ちの列に並んでウォーミングアップだ。
そこで購入した弁当をかきこみながら、お次は開店前のパチンコ店に並ぶ。
もちろん高校生たちは入店できないが、これも練習の一環である。
何も手に入れられないのに行列にだけ並ぶという辛い経験に耐えることで、精神を鍛え、諸行無常な世の常を心に刻むことができる。どちらも普通に高校生活をしているだけでは得られぬ宝であると言えるだろう。
行列部とは何か?
全国大会がTV放映されるようになったものの、まだまだ行列部について実はあまりよくわかっていない方もいるかもしれないので説明しておこう。
行列部とはその名の通り、行列という競技に取り組む部活である。
放課後、街中で行列を探して練り歩き、行列を見るやいなやどんな行列であっても並ぶ部活動である。
行列が見つからない場合は、部員数40名以上という人数を頼みに自ら行列をでっちあげることもある。
そもそも行列という競技自体は、みなさんもご存知の通り、日本古来からあるスポーツだ。
どこに行っても行列だらけの国である日本において、行列を肯定的に楽しめるよう、日本人は古くから国をあげて行列に取り組んできた。
日本に住む以上避けられぬ行列を、忌み嫌うのではなく、逆に楽しむ。アミューズメントパークでも、話題の飲食店でも、連休の行楽地でも、ダイヤ乱れがあったときの鉄道でも、一見して苦難である行為を逆に楽しもうとする姿勢こそが、行列の精神である。
設備や働き方、情報や物の流れを改善するのではなく、自らの身体と精神の耐久力を頼みに混雑をやり過ごす日本独自の極限的竹槍戦略、それこそが行列である。
県立第一高校行列部の部長はこう語る。
「外国人の目からすると異様とも映る行列ですが、近年は世界で行列の価値を再評価する動きが見られます。というのも、変化の激しく効率が極限まで追求される現代社会において、行列に並ぶという一見無駄の塊のような行動は、逆に贅沢な時間の使い方とも言えるからです。東京オリンピックでは、行列が正式種目として検討されています」
一周回って世界最先端を走る行列から、目が離せない。
がんばれ、県立第一高校行列部!




