13話・物資調達班
翌日。
俺は物資調達班の会議室に来ていた。
調達班のメンバーは十五人。
俺を含めて十六人か。
百余名を養うには、少々心許ない。
「皆、今日もよく集まってくれた。助かるぞ」
班長の岩代さんが挨拶をする。
彼の言葉に調達班は頷く。
統率はしっかりとれてそうだ。
「早速だが、今日は新メンバーを紹介する」
岩代さんが俺に合図を送る。
教室の後方から、岩代さんの隣にまで向かう。
昨日は数人にしか会えなかった。
なので、改めて自己紹介をする。
「高橋幸人です、この度調達班に配属されました」
「高橋は昨日来たばかりだが、安心しろ。何せ俺よりもずっとレベルが高くて、頼りになる奴だ」
「岩代さんよりレベルが上!?」
調達班メンバーが一斉に声を上げる。
驚愕する者、疑う者、感嘆する者。
反応は様々で手放しに褒められてはいない。
まあ、これから実力を見せればいいだけだ。
焦る必要は無い。
「そして、今日から探索範囲を広げようと思う」
ピシャリと空気が研ぎ澄まされる。
岩代さんの声が真剣だったのもあるだろう。
しかし、それ以上に皆が言葉の意味を理解していた。
探索範囲を広げる––––そうなれば必然、ここら一帯を支配しているエリアボスとやり合うという事。
「いきなり挑む訳じゃない。なるべく戦闘は避けつつ、目的の物を手に入れる。どうしても、避けられない局面がやって来たらって意味だ」
「何故、急に探索範囲を広げるんです?」
「単純だ、何もかも足りないんだよ」
岩代さんは物が足りてない事をメンバーに伝える。
薄々気付いていたのか、反応は大きくはない。
「なら、俺らがしっかりしないといけませんね」
「エリアボスなんてぶっ倒しましょう!」
「避難所の子供達に不自由な思いをさせたくないしな」
それどころか、逆にやる気を滾らせていた。
調達班のメンバーは全員が学校関係者ではない。
初日に避難して来た近隣の方々が半数居る。
彼らは自ら調達班に志願したのだ。
勇気のある人達だ……
そう思っていたら。
「…………ここも、潮時か」
小さく、ほんの一言。
誰が言ったのか分からないくらいの声量。
だが、確かに聴こえた。
驚くほどに冷たく、何かを見限るような口調。
この教室には調達班に所属する者しかいない。
つまり、誰かが言ったのだ。
「……」
別に、何かある訳じゃない。
ただ……心に留めておこう。
それだけだ。
「––––で、今日は学生の志願者も来ている」
「本当ですか?」
「ああ。おーい! 入っていいぞー!」
ガラリと教室の扉が開く。
入って来たのは数名の男女の中学生。
全員俺達と同じく、何かしらの武装をしていた。
彼ら彼女の顔を順に見ていく。
そこに、顔見知りの人物が居た。
……凛音?
「中学生三年の虹村直人、よろしくお願いしまス!」
茶髪の少年が威勢良く挨拶する。
年相応の、非常に活力溢れる若者。
調達班のおっさん達は若干気圧されていた。
虹村直人くんか。
なんかチャラいな……俺の苦手なタイプ。
岡村くんは居ないのだろうか?
前は調達班に志願していた筈だけど。
「岡村なら、今日は別の仕事を頼まれています」
「あ、そうなの。ていうか、凛音?」
「はい、凛音です。おかしな事を聞くのですね」
「いや……意外だと思って」
彼女は生徒代表だ。
そっちの仕事を優先するかと思っていた。
それを抜きにしても、自ら戦うイメージが湧かない。
いや、全部俺の想像なんだけど。
「三日月凛音です、今日はよろしくお願いします」
凛音は腰に日本刀を携えていた。
あれが彼女の武器なんだろうか。
何処から仕入れたんだろう。
「赤石透でーす、あー、ヨロシクお願いしますー」
「原田国人です、よろしくっす」
残り二人が適当に挨拶をする。
なんか、今時の学生って感じだ。
赤石くんは髪を真っ赤に染めている。
原田くんは金髪に染めていた。
「赤石! 原田! まともに挨拶も出来んのか!」
岩代さんが二人の適当な挨拶に怒り出す。
凛音も呆れた様子で見ていた。
調達班メンバーも、なんか騒ついている。
……大丈夫だよな? 今日の探索。
◆
「それでは予定通り、四つのグループに分けるぞ」
教室を出て校庭に集まった俺達。
探索はグループ毎に行うらしい。
それぞれ別方向から探索する算段か。
確かに、その方が効率は良い。
現在の人数は丁度二十人。
綺麗に五人で分けられる。
「まず、Aグループは––––」
そんなこんなでグループ分けが始まる。
その結果、俺はDグループに振り分けられた。
メンバーはこの通り。
Dグループ
南雲清太
木村雄二
伊藤守
三日月凛音
高橋幸人
凛音と一緒か、知り合いが居るのは助かる。
他の三人はほぼ初対面だからな。
南雲さんは、調達班の副班長だった気がする。
木村さんと伊藤さんは……何も知らない。
因みにリーダーは南雲さんだ。
各班に分かれ、ミーティングを行う。
「えー、私がDグループのリーダー、南雲清太です。我々が調達する物資は主に衣類ですが、取れるなら他の物も積極的に取る、というのが方針です」
南雲さんは二十代後半くらいの男性だ。
体つきはしっかりしていて、背も高い。
スポーツ選手のような人だった。
「外へ行く前に全員のステータスを確認したいのですが、よろしいでしょうか?」
全員頷く。
その人は何が出来るのか。
それを知っておかないと、連携も何も無い。
「確認も得ましたし、開示しましょうか」
五人分のステータスが一斉に表示される。
俺は自分を除く四人のステータスをよく見た。
[ミカヅキ・リンネ]
レベル:2
職業:刀剣師
体力:5
筋力:7
敏捷:7
精神:5
魔力:5
【スキルスロット】
・刀術
・精神統一
・
[ナグモ・セイタ]
レベル:3
職業:戦士
体力:9
筋力:9
敏捷:5
精神:5
魔力:5
【スキルスロット】
・斧術
・
・
[キムラ・ユウジ]
レベル:3
職業:魔術師
体力:5
筋力:5
敏捷:5
精神:9
魔力:9
【スキルスロット】
・下級魔術(火属性)
・
・
[イトウ・マモル]
レベル:3
職業:魔術師
体力:5
筋力:5
敏捷:5
精神:9
魔力:9
【スキルスロット】
・下級魔術(風属性)
・
・
目前に四人のステータスが並ぶ。
これだけ揃うと壮観だ。
それだけに、情報量も多い。
一人ずつ確認していこう。
まずは凛音、彼女のレベルは2。
数回はモンスターと戦っている証拠だ。
職業は刀剣師。
刀剣師……剣士とはまた違う職業か。
スキルも剣術ではなく、刀術となっている。
剣と刀は別物、というシステムなのか、この世界は?
次に南雲さん。
レベルは3で職業は戦士。
彼は比較的オーソドックスな前衛だ。
ネットゲームなどでは前に出て敵の攻撃を引き受け、味方を守る役割をタンクと呼ぶ事がある。
盾を入手出来れば、南雲さんのタンク適性は高い。
最後に木村さんと伊藤さん。
二人ともレベル3で、職業はなんと魔術師。
やはり、魔法や魔術といった概念が存在するようだ。
これはかなり重要な要素になりそうである。
肝心の魔術だが、木村さんは火で伊藤さんは風。
攻撃向きの魔術が扱えると予想する。
それに、戦闘以外でも応用が効きそうだ。
前衛一人、中衛二人、後衛二人。
前衛は俺がカバーすると考えれば……うん。
中々バランスの取れた、良いパーティーだ。
これなら安心して探索出来る。
「それじゃあ、行きましょうか……て、あれ」
ステータスも見終わった。
俺の考えを伝えて、出発しようとしたのだが。
何故か南雲さん、木村さん、伊藤さんが動かない。
いや、僅かに震えている。
「レ、レベル9……?」
「ステータスの差が、ありすぎる……!」
「スキルも見た事がない……な、何者ですか……?」
「はあ……」
呆れる凛音。
俺は訳が分からず、彼女に聞いてみる。
すると即答してくれた。
「こんなのいきなり見せられたら、誰だってああいう反応になりますよ、高橋さん。少年野球にプロの選手が乱入してくるようなものですよ?」
どうやら、俺は自分の想像以上に規格外のようだ。




