表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊でも電子機器は触れた件  作者: 黒魔 玄
1/1

プロローグ

半年前に僕は死んだ。


初秋、季節の変わり目についていけず僕は風邪をひいた。

1人で病院に行く体力も無かった僕はただ寝込んでいた。

昨晩から全く動いていなかった。だが、時間が経てば体は栄養を欲した。

ゼリー系の栄養補助食品があれば良かったんだが、そんなもの家には無かった。

仕事で家を出た母が作り置きしてくれた崩れかけのベーコンエッグ。これを熱々にレンチンしたザラメ入りミルクで流し込んだ。もちろん舌は火傷した。

体に一定量の栄養を与えた満足感を抱いて僕はもう一度眠りについた。

そう。これが最後の記憶。不思議なもので、最後はチクっと胸が痛くなった痛みしか残っていない。

突然の心臓発作だった。だが僕には、言われてみれば一瞬痛みがあったっけ。程度の記憶だった。


最後の晩餐(と言ってもお昼に食べた朝ご飯)のほうがよっぽど記憶に残ってるなんて変かな。

でも、突然の出来事だったし死因の記憶なんて誰だってそんなものだろう。


そんな僕も、もうすぐ成仏されるみたいだ。

最近、体(実体はない)が妙にふわふわとしていたし、なんとなく雰囲気的に察していた。生前から僕は空気の読める男だったから、これは確かだ。

死んだと知ったとき、僕は後悔しか残していないことに気付いた。

だが、この半年間は、その後悔を穴埋めする絶好のチャンスだった。もちろん、後悔を一つ一つ無くした。

しかし、最大の後悔だけは結局最後まで残ったままだった。

5年間付き合った彼女との最後の別れ。これまで共に過ごした時間に感謝しかないこと。最期まで愛したこと。死んでなお愛していること。それでも、死人の僕からは離れて新しい愛を見つけてほしいこと。

伝えたいことが沢山あるのに。


君にだけは伝えられない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ