7頁目 樹紋のカーター/雷斬りのリーリア
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「クソッ!こいつら何匹いるんだ!?」
どうして公爵領の主街道に野盗が沸いているんだ!?
ラクスフェロ公爵家の家紋、それも当主が客人を招くときに用いる最上紋だぞ?護衛の数だって見ただけでもわかるほどに多いってのに、その護衛よりも数が多くて練度も高いとか舐めてんのか!?こちとら研究所勤めでもう6年も剣なんて握ってないってのに!付き添いの技術者の腕では厳しすぎるわ!……うおぉ!?
「余所見をせずに~、御方の護衛に専念してくださ~い」
あっぶね……!助太刀がなかったら一発もらうところだったッぜ。つーか流石は『雷斬りのリーリア』ってとこか?傭兵辞めるほどのケガをしたって聞いたのにもう50人は切り倒したんじゃねえか?その倍はまだ残ってるけどな……!
ルチフェル様は……クソ、かわいそうに、青褪めた顔で不安そうに周りを見てるな。そりゃそうだ。今まで公爵家で箱入りで育てられて、勉学と研究しかしてなかったんだ。そうでなくとも、七歳児の貴族の子供なら普通、100人を超える人間から殺気を受けたら気絶すると思うけどな!さすがは歴代一の天才ってところか?
こっちの被害は……護衛の騎士が3割戦闘不能か。うまく位置取りできてるから死者はまだ出てないが、一人でも崩れたら一気に崩壊するかもな、これ。
つか、なんでこいつらこんなところで襲ってきた?こんな大掛かりな襲撃をしてバレないと思ってんのか?バレてもいいのか、最初から全員殺して隠ぺいするつもりだったのか。この護衛の数みても襲い掛かってきたってことはそれなりの考えはあるんだろうが。
狙いは……まぁルチフェル様だろうが、どうやってその存在に気付いたんだ?閣下は徹底的に隠ぺいしていたはずだろ?草でも混じってたか?生きて逃れれたら閣下に報告しなきゃだな。
とりあえずこのまま作戦通り後退して、よし、よし、リーリアが下がってきて………今だ、術式開放!
うし、これで半分くらいは動けないだろ。あとはリーリア達護衛の仕事だ。全員倒しきるまでは維持してやるから、さっさと片付けてくれよ?
地面に仕込んだ魔法陣が起動し、そこから急速に植物が生え、成長する。私の胴ほどの太さの蔓に絡まれて、62人が動けなくなった。
残りは32人。格下は部下たちに任せ、手練れの3人は私が相手をする。
一歩、二歩。間合いの前で急停止、相手が一瞬硬直したすきに、術式開放。剣先から伸びる電撃。ルチフェル様の言うとおりだ。今までは拡散して目くらましにしかならなかった魔法が、藍魔法で空気を除けて穴にするとまっすぐに進む。そのまま剣を伝って腕に流れた雷によりしびれて動けなくなった一人目を、剣を弾きつつ首筋、脇腹を断つ。
2人目にそのまま斬りかかる。こいつがおそらく今回の襲撃のリーダーだ。一人だけ明らかに格が違う。剣戟を交えるふりをして、背後に迫った3人目を斬る。黄魔法を纏った一撃だ。しばらくは痙攣しかできないだろう。
すぐさま振り返り3人目の斬撃を迎撃。重い一撃だ。正面からの斬り合いはさける。いなしつつ隙を窺う。戦況は…もう下火だな。あと少しすれば部下たちが援護に来るだろう。しばらく耐えれば片が付く。そう思った瞬間。
残りの敵全員の威圧感が膨れ上がった。
蔓の高速を引きちぎり、爆発的な速度で動き始めた。目の前の男も、圧倒的な臂力でこちらを強引に押し込む。
まずい、脚の古傷がここで……耐えろ、耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ!
この後ろにはルチフェル様がいるのだ。この世の何よりも価値ある、御方が。私よ、踏ん張れ。吠えろ。こんな逆境など何度もあった。死地を何度もくぐりぬけてきた。閣下の為に、この世の為に、喰らいついてでも通さない!
そんな思いもむなしく、私は弾き飛ばされた。そのままルチフェル様がおわす馬車に追突。薄れゆく意識の中、最後に見たのは、儚げに笑う、主の姿だった。