プロローグ
プロローグの前に1話を書いてしまった。
「いきなり地元へ帰れって・・・どうしたんだ夢子さん」
上司からいきなり地元へ帰れ、と言われ驚いた俺は、目の前の女性、春間 夢子へと詰め寄る。
まさか首か?
成り行きで就職した職場だが、それなりに愛着はある。
「いやなに、君は中学校を卒業してから、ずっと実家に帰ってなかったろう?たまには帰って親孝行しなさい、という慈悲深い先輩からのありがたい心遣いだ。ほら、感謝しろ」
「そりゃ帰ってなかったが・・・そもそも俺が抜けて事務所は大丈夫なのか?」
「馬鹿にするな、これでも君が働くまで独りで回してたんだ。何よりここ数日は・・・閑古鳥だ、問題ない」
ハハハ・・・と夢子さんが乾いた笑い声をあげる。
どことなく目も虚ろだ。
本当に大丈夫か?
「まぁこちらの事は気にするな・・・たまには地元で羽を伸ばしてこい。親孝行も忘れずにな」
「そう急に言われてもこちらにも予定が・・・」
「毎日事務所に顔をだしている暇な大学生に、予定も何もあるものか。若人がグダグダ言うものじゃあない・・・ほら、ここに光戸空港行きのチケットがある。とっとと行ってこい」
全くエキセントリックな人だ。
この春間 夢子と言う人は、高校を卒業するやいなや急に、探偵事務所を開く!などと宣い、冗談だろうと思っていたら、どうやったのか1か月後には本当に開業に漕ぎ着けた。
しかも俺が大学に入学した途端彼女に拉致され、気付けば事務所。
今日から君には助手をしてもらう、と言われ強引に助手に仕立てあげられた。
つまるところものすごい自分勝手な人なのだ。
こうなったからには、何がなんでも俺が帰郷しないことには収まらないだろう。
地元に久しく帰ってなかったのは事実だ。
夢子さんの言う通り、羽を伸ばすつもりで帰ろう。