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リアナも連れて行く?

 新鮮な外の空気が俺たち三人を出迎えてくれる。森が生い茂っているここは空気がおいしい。

 洞窟という閉鎖的な空間から抜け出したこともあってか、俺は深呼吸して空気を堪能した。

 さて、ジャネストーンは手に入れたし、後はサマリのところに戻るだけだな。

 しかし……。俺はリアナの方を見た。

 彼女は洞窟から抜け出せたのに安心しているのか安堵の表情を浮かべている。彼女はこれからどうするつもりだろうか。


「なあ、リアナ」


「え? 何ですか?」


「荷物も何もかもないけど、どうする?」


「あ、そうですね……」


「というか、どこの出身なんだ?」


「ステル国です。でも、荷物がないんじゃステル国にも行けない……。道中はモンスター多いし、盗賊も……うじゃうじゃ……うぅ……」


「……行き先は一緒、か」


 一応、先輩に聞いてみるか。

 ロープの片付けを行っている先輩に、俺は話しかける。


「先輩」


「どうしたケイ?」


「あの子……リアナ、どうやら俺の帰る場所と同じところに行きたかったようです」


「なるほどな」


「それでせっかくだし、リアナを連れて行こうと思うんですが、いいですか?」


「別に構わないぞ」


「じゃ、決まりですね」


「……さてと。帰ろうか」


 ロープを全て巻き終わり、後はこの場から退散するだけ。

 荷物を持たず戦う力がないリアナを真ん中に、俺たちは森の中を突き抜けていく。


「すいません。守ってもらってしまって」


「気にするなよ。それより、さっき行き先は『ステル国』って言ってたよな?」


「はい……あっ! そこまでしていただく必要はありませんよ!」


「……実は俺たちの行き先も同じなんだ。だから、ついでに連れて行くよ」


「そうだったんですか。本当にいいんですか?」


「いいって。この村にいたまま帰れないってのも嫌だろう?」


「本当に何から何まで……帰ったらお礼させて下さい」


「……じゃ、期待してるよ」


 軽く微笑むリアナ。最初、洞窟の中で発見した時は怪しい雰囲気を纏っていた。そりゃあ、洞窟内で荷物もなく俺たちの目の前に飛び出してきたら誰だって疑う。

 しかし、彼女は協力的だった。彼女の協力なしではジャネストーンを手に入れることはできなかったかもしれない。

 ……でも、どうしても、俺の中では彼女を疑わざるをえない。理由を説明するのは難しい。俺でもよく分からないのだから。

 先輩と歩くリアナの姿を見る。その姿は可憐で、儚げな出で立ちだ。だが、俺にはそれが嘘のように思えてくるのだ。

 まるで、感情という衣服を身にまとっているような、そんな感覚。

 ……いや、今は考えないようにしておこう。優先させるべきことはサマリを人間に戻してやることなんだから。

 サマリが戻ってから考えてもいいだろう。ああ、サマリに相談するのもいいかもしれない。


「どうしたケイ? さっきからずっと黙り込んで」


「……あ、いや。別に大したことじゃないんです。だから気にしないでください」


「そうか。私はてっきり自分のお嫁さん候補を誰にしようか考えているものだとばかり……」


「そんなこと考えてませんからっ!」


 まったく、先輩はいつもこうなんだから。まあ、それが彼女の良いところでもあるけど。


「私はリアナを連れてすぐに戻るつもりだが、ケイはどうする?」


「あ、俺は村長とアリーを迎えに行ってきます」


「そうか。分かった」


「じゃあ、後で」


「ああ」


 さあ、アリーと村長を迎えに行かないと。

 村長とアリーは俺の言いつけ通り、ちゃんと広場で待っててくれていた。


「おかえりけーくん! で、どうだったの?」


「ああ。ちゃんと手に入れたよ」


「そっか! これでサマリお姉ちゃんも大丈夫なんだね!」


「ケイくん。もしかして、もう……」


 そうか。俺の目的が達成されたからここから帰らなければならない。それが意味するものは、村長とまた別れてしまうということだ。

 シュンとなって元気のなくなった彼女に、俺は近づいてそっと頭を撫でる。


「また会えるさ。絶対に」


「……ホント?」


「ああ。約束する。また遊びに来るよ」


「……分かった。私も村長だもん。もう泣かないようにする」


「俺がいない間に、強くなったね。村長……いや、アカネちゃん」


「……うん。ありがとう、ケイくん」


「よし。それじゃ、家に帰ろうか。どっちにしろ、出発は明日だからね」


「じゃあ、夜はいっぱい遊ぶ!」


「そうだな。悔いのないようにいっぱい遊ぶか!」


「うん!」


 その夜は、村長やアリーといっぱい遊んでいた。ここは田舎だから遊べるものは少なく、種類は限られているけど、それでも飽きずに遊んでいられた。

 夜中、アリーと村長に挟まれながら寝ている俺は、ユニのことを考えていた。

 彼女は結局、今日は姿を表さなかった。村の外に用事があると言っていたが、彼女の方は目的を達成できたのだろうか。

 まあ、明日の朝一に出発する予定だが、俺は少し早く起きてユニを探すこととするか。

 とりあえず、俺も睡眠を取ろう。今日は慣れない洞窟の中を歩き回って少し疲れてしまった。

 目を閉じて、俺は眠りについたのだった。

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