先輩とアリー、初めての出会い
一応一段落したと判断したのだろう。アリーがおずおずと自己紹介を始めた。
「私、アリーって言います。けーくんに助けてもらってから一緒に住んでます。よろしくお願いします」
「へー、アリーちゃんねえ。よろしくね、アリーちゃん」
「あのう……先輩さん。一つ聞きたいんですけど、いいですか?」
「何かな? 何でも言ってみなよ」
「けーくんとはどういう関係なんですか? すっごく親しそうだったから……」
「ふふふ……。けーくんか……。私もそう呼んでみようかなあ?」
「止めて下さい」
「そんな冷たいこと言うなよけーくん。けーくんは良い子には優しいじゃないか」
「……斬りますよ?」
「ハッハッハ。分かった分かった。……で、ケイとの関係だな?」
冗談もほどほどに、先輩は大げさに笑うとアリーと向き合った。
「はい」
真剣な眼差しで先輩を見つめているアリー。
何が彼女をこんなにさせるのだろうか。
「私とケイは一緒に暮らしていたのさ。一緒にお風呂に入ったこともあるし、夜は一緒に寝たこともあったな」
「え……えぇ!? 本当ですか!」
「ああ。一緒に寝た。本当だ。あの時、私に抱きついていたケイは可愛かったなあ」
「先輩、一応確認しておきますけど、今の言葉の中に性的な表現は一切含まれていませんよね?」
「んー? 私がいつ性的な表現をしたのかな?」
「いいえ、先輩ってそういうところがありますから」
「……わ、私も」
「ん? どうしたんだいアリーちゃん」
「私も! けーくんと一緒にお風呂入りました!! 寝たこともあります!!」
「なっ――!!」
何故か、アリーが変なことを自己申告し始めた! いや、確かにお風呂入ったことや寝たこともあったけど、今それ言っちゃうのはマズいだろう!! 相手はあの先輩だぞ!!
案の定、先輩はクスクスと怪しい笑みをしている。ああ……これは確実にネタにされてしまうだろうな。
「おおー、ケイもやることやってるじゃないか。特に寝たってところは。やっぱり男を上げたんだな。いやあ、でも、最初の相手がこの子か。ケイってもしかして……」
「ただ寝ただけです。スリープの方ですから、先輩の危惧していることは何にもありません」
「そうか。とりあえず、安心だな」
「ええ。安心して下さい」
「さて、そろそろパトロールをしに行く。ケイ、何か用事があってここに来たんだろう?」
「はい」
「悪いが、パトロールの後にしてもらえないだろうか」
「それはもちろん構いませんよ。ここで待ってますから。先輩のこと。何なら、俺も一緒に――」
「ああ。そこまでしなくてもいい。長旅で疲れただろう? 少し休んでろ」
「……分かりました。ありがとうございます、先輩」
「うむ。それでは……行くぞみんな!」
先輩の一声で、村人たちは別々の場所へ散っていく。パトロールの開始だ。
とりあえず、ここで待っておくか。まあ、村の景色を眺めているだけで時間つぶしにもなるだろうし。
その時、俺の服を引っ張る感触がした。その犯人はユニだ。
「どうした? ユニ」
「あのあのケイくん。私も村の外に行ってもいいの?」
「何でだ?」
「馬車からこの村のモンスターを見ていたんだけど、ここなら……話が通じるモンスターに出会えるかもしれないの。だから、色々と調査させてほしいの」
「そういうことか。ああ、いいぜ。行って来い。だけど大丈夫か? 俺も一緒に行かなくて」
「これでも私、モンスターなの」
「そっか。そうだったな。じゃ、気をつけて行って来い」
「ありがとうなの。あ……一日いないかもしれないけど、いいの?」
「ああ。俺たちが帰る時に戻ってきてくれれば問題ない。ユニを信じてるからな」
「……うん、なの」
ユニも、村の外にいるモンスターと会うために俺たちから離れていく。
あいつには色々と調査しなきゃならないものもあるんだ。その手伝いくらい出来ればいいと思ってたけど、こんな形で手伝えて良かった。




