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お部屋探し

 アリーが元気よく飛び出していく。制服を着こなして――リボンは結べなかったけど――自分を彩っている彼女の姿はとても新鮮で、可愛らしかった。

 彼女の新しい日常が、今ここから始まるのだろう。そして、俺もやるべきことを果たさなければならない。

 そう。家を探すのだ。せっかくお金もあるんだ。アリーも学校に行くことになったし、ここらで新しい住処を探すのも悪くないと思う。

 というか、狭すぎるんだよここは。

 何で一部屋しかないのにベッドが部屋の半分も占領しているんだ。まったく、これだけ大きいベッドだからアリーと一緒に寝られたのはいいんだけど、さすがに窮屈じゃないか。

 サマリだって家に住んでいるんだし、引っ越してもいいだろう。

 さてと。問題はどんな家に住めばいいのかだ。

 大きすぎる家は少し逆に落ち着かない。できれば、学校に近いところがいいってのもある。

 そんな条件に合った家が果たしてあるのだろうか。


「まあ、探してみるか」


 ギルドや護衛隊からの連絡もないので緊急の事態は特にないのだろう。だったら、今日一日を使って家探しに出かけるのも悪くない。

 俺は念のためアリーに置手紙を残して、家を出た。


 家を探す場合、どこに行けばいいのだろうか。

 村の時は村長にお伺いを立てて、多数決で決定するというのが決まりだったらしい。残念ながら、その場面に出くわすことは一度もなかったわけだが。まあ、村は国より狭いから、住居を建て替えるなんてことは滅諦にないからな。

 ただし、国は別だろう。広大な土地を持っているから、引っ越すことは多いかもしれない。……となると、ここは国王にお伺いを立てるのがいいのだろうか。いや、それってどうなんだ?

 村のまんまで国を考えたら、とんでもないことになるぞ。誰かが引っ越すたびに全員で決を採るのか?

 それは常識的に考えて大変だろう。となれば、どこかでそういうことを斡旋している業者がいるのを考えた方が自然だ。

 問題は、その斡旋してくれる業者がどこにいるのかだが……。

 その辺を歩いていればたどり着けるだろうか。というか、こういうのは人に聞くのが一番だよな。よし、詳しそうな人はどこにいるのかなっと……。

 そんなこんなで、昼近くになってしまった時、事態が進展した。


「ねえねえお兄さん」


「え?」


「こっちこっち。あなたの後ろなのー」


 首を動かしても見えない俺を呼ぶ声。その声に従って、俺は後ろを振り返った。

 すると、そこには一人の少女がいた。身長はアリーと同じくらいか。顔立ちの幼さから見ると、年齢もアリーと同い年のようだ。

 だが、今まで何故気に留めなかったのだろうと思うほど、彼女は周囲の存在から浮いていた。

 彼女はアルビノ……というのだろうか、肌が真っ白だ。それだけでも他の人とは違う存在を醸し出しているのに、白金色の長髪がたおやかに風で揺れる様は、この世の人間とは思えない美しさを物語っている。

 そんな彼女の純白さを奏でるように、真っ白のワンピースを着ていた。


 彼女はじーっと俺を見つめている。な、なんなんだ?

 何かを訴えかけているようにも思えたが、俺はそれ以上のメッセージを感じることはできなかった。


「俺に話しかけて……何か用でもあるのかな?」


「……うーん……まあいいかー」


「え?」


「ねえお兄さん。家を探してるのー?」


「あ、まあ……そんなところかな」


「私ね、いい場所を知ってるのー」


「本当かい?」


「本当なのー」


 妙におっとりとしている口調の彼女は、家を探している俺に家を紹介してくれるという。

 もしかして、彼女が俺の探し求めていた斡旋業者なのかもしれない。こんな小さい子がもう働いているとは少し驚きだけど、村でも村長がいたっけ。

 学校に必ず通えるってわけでもないし、多分、学校に行かない子どもはすぐに働くことになるんだろうな。

 とにかく、ここで斡旋業者に会えたのは嬉しい。良いところだったらすぐに決めて引っ越したいところだ。


「じゃ、お言葉に甘えて紹介してもらえないかな?」


「お安い御用なの。こっちに着いてきてほしいのー」


 彼女が歩き出す。身のこなしが軽く、歩幅が短いのに歩くスピードは大人並に早い。

 俺が普通に歩いても彼女との距離が縮まらないのだ。

 小さい子って、こんなに歩く速度が早いのか? それとも、こういう職業をしていると自然と足も早くなるのだろうか。

 ものの数分歩いただけで、彼女は歩みを止めた。


「ここなのー」


「へえ……」

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