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※襲われる私たち

 数で言えば五人。危険を察知したのか、お姉ちゃんは立ち上がって私を庇うように前に出た。


「……何よアンタたち。何か用?」


「用? そうだな……お前が後ろで守ってる少女に用があるなあ」


「少女? アリーちゃんのこと? 知り合い……ってわけでもなさそうね。それならさっき反応するはずだし」


「そう。彼女とは初対面なんだよ俺たちは。クククッ」


「変な笑い方。アンタたちに用があっても、こっちには用がないの。だからさっさと失せてよ」


 雲行きが怪しくなってきたから、私も立ち上がってサマリお姉ちゃんの後ろで小さく縮こまる。

 どうしたんだろう。何で私に用が? だって、私はあんな人たち知らないよ?

 ……もしかして、さっきアレグを蹴ったからなのかな? 復讐をしようとしているのかな?

 だとしたら、私のせいだ。私のせいでこんなことに……。


「失せる? それはお前の方だ。田舎者」


「ギルドの兵士はそうやって敵を作るのが常識なの?」


「クククッ」


「……ハァ。話にならない。行こうアリーちゃん。ってか、後輩くんのところに行くわよ」


「う、うん……」


「おっと! そいつはさせねぇなあ!」


 その時、ギルドの兵士たちが五人全員武器を取り出してサマリお姉ちゃんに向かって構え始めた。

 な、なんでギルドの兵士たちがサマリお姉ちゃんを!?

 さすがのお姉ちゃんも苦笑いで対処せざるを得ないみたい。


「……何の真似よ?」


「これは警告だ。早くそこの少女を渡せ」


「同業者に向かって武器を突きつけるのはどうなの? まずはその武器をしまって」


「そうしたら、お前はどんな行動に出る? 少なくとも、少女を差し出しはしないだろう?」


「……私はクイズをしてるわけじゃないの。差し出す差し出さない関係なしに、武器をしまえって言ってんの!」


「――やれ」


 瞬間、サマリお姉ちゃんは横に吹き飛ばされてしまった。それはギルド兵士が繰り出したハンマーで叩きつけられたからだった。

 お、お姉ちゃんが!! 私は駆け寄ろうとするが、他のギルド兵士に捕まってしまう。


「嫌! 離して!! サマリお姉ちゃんが!!」


「威勢のいい少女だ。だが、少しウザいな」


「痛ったあ……! なんてことしてくれんのよ……!」


「おお。まだ生きてたか。致命傷は避けたのか?」


 脇腹を抱えて、サマリお姉ちゃんは立ち上がる。草原に体を引きずられたせいか、お姉ちゃんの横顔は少しだけ赤みを帯びていた。


「そっちがその気なら……こっちもその気になるけどいいのね!?」


「ああ。この少女の命がどうでも良かったらな」


「……くっ! 外道が!」


「ついでだ。お前も田舎者だし、ここで始末してやろう」


「始末!?」


 私を捕まえている兵士以外の全員、サマリお姉ちゃんに走っていく。

 剣やハンマーといった別々の武器を持ちながら、全員がサマリお姉ちゃんを殺そうとしている。


「――呪文を!」


「したらコイツが傷つくぞー? それでもいいなら唱えてみろよ!」


 剣の切っ先が私の喉に向かって突き立てられる。

 そんな……私のせいでお姉ちゃんが……!


「――アグッ!!」


 お姉ちゃんは反撃することができず、剣で背中を斬られてしまう。背中からは赤い液体が滴っていた。

 居ても立ってもいられない。私は力の限り叫んだ。


「お姉ちゃん! 私に構わず戦って!!」


「バカ言わないで。アリーちゃんは私の大切な妹――グゥ!!」


「お姉ちゃん!!」


「フハハハ! 面白いヤツだ! まるで人形だなあおい!」


 サマリお姉ちゃんは私のために傷ついている。ダメだよそんなの!

 私、そこまで大事な人間じゃないんだよ! サマリお姉ちゃんの方が優しくて、優秀で、こんな私を大切にしてくれるお姉ちゃんなのに……!


「さて、そろそろトドメといくか」


「……ハァ……ハァ……アリーちゃん?」


「お、お姉ちゃん……」


「後輩くんとの約束は守るから……絶対に守るよ。だから安心して」


「うう……お姉ちゃん……」


「感動的な会話だが、お前の死期が近づいてきているのに気づかないのか?」


「外道共。私が死ぬと思ってるでしょ? 残念、死なないんだなーこれが……」


 サマリお姉ちゃんはこんな時でも笑顔で私に笑いかけてくれる。

 嬉しくないよ……! 私のせいでお姉ちゃんが死ぬなんて……!!


「安心しなガキ。別にお前のせいじゃないぜ。これは計画だからな。ただ、コイツは――」


 すでに虫の息になってしまってるお姉ちゃんに、一人のギルド兵が剣を突き立てた。


「トドメは俺が刺す。小娘、冥土の土産として最後に何か聞きたいことはあるか?」


「そうね……これからアリーちゃんをどこに連れて行くかくらいは教えてもらいたいものね。後、出来ればアンタたちの目的を」


「まあいいだろう。ここから数キロ離れた『エタシェ』まで連れて行く。アリーはあくまで保険だ。この少女を人質に取れば、ケイは手出しできなくなるからな。こいつは元奴隷らしいな? 保険が必要なくなったら大事な資金源となってもらうのさ」


「どこで……そんな情報を……!」


「そこまで教える必要はないだろう。目的はそうだな……国の繁栄とでも言っておこうか。そのために村は不必要なんだよ」


「……アハハ。それだけで分かってきたわ。やっぱり国は……村のこと、何も考えちゃいないのね」


「ああ。無念だろうが、お前はここまでだ。死ね」


 サマリお姉ちゃんの胸元に剣が突き刺さる。血が吹き出て、お姉ちゃんは地面に倒れてしまった。

 前のめりに倒れ込んでしまっているお姉ちゃん。

 ピクピクと体を震わせているのはお姉ちゃんの意思じゃないと思う。

 もう、お姉ちゃんの意思は失われているんだ。私が、私がお姉ちゃんを殺した……。


「嫌だぁ!! 離して!! お姉ちゃんを! お姉ちゃんを返してぇ!!」


「うるさいガキだ」


「お姉ちゃん!! あっ――」


 首の後ろに衝撃が走ったかと思うと、私の意識は一気に遠くなっていく。

 ああ……。もうだめ……。暗転し、私は気絶した。

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