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本日の戦闘結果

「ケイ、今日も絶好調だな」


「え? そう見える? 今日は動きが悪かったんだけどな……」


 森の中、装備はいつもの剣と盾。

 本日のモンスター狩り総数、およそ五十体。途中から数を数えるのがめんどくさくなったので止めてしまった。

 えーっと……地面に転がっているモンスターの総数は……っと。

 種類は大雑把に分けて、

 ゴーレム三十体。

 グレムリン六十体。

 ミノタウロス十体。

 あれ? 百体も倒してたのか。

 まあいい。五十体だろうが百体だろうが、この村じゃあまり変わりない。

 驚くべきことは、これらは一日に俺の力で仕留めたモンスターだということだ。

 仲間もこれと同等かそれ以下のモンスターを仕留めている。


「何かさ、今日はいつになく多くないか?」


「ハハッ、ケイよ。何を今更。この村……いや、この世界じゃ日常茶飯事じゃないか」


 俺の名前を呼びながら、仲間は大げさに笑う。

 それもそうか。確かに仲間の言う通りかもな。

 さてと……。こっから食べられる部位はどこかなっと……。


「そうだケイ。村長がお前を呼んでたぞ」


「村長が? 何で」


「さあ? 俺にも分からん。あ、久々に遊んでほしいんじゃないか? あの娘、お前にぞっこんだからな!」


「冗談は止めてくれよ。あの娘は妹みたいなものだよ。それにまだ幼いじゃないか」


「それ、本人の目の前で言うなよ……」


「え?」


「かなり傷つくぞ」


「あ、ああ。分かった」


 とりとめのない会話をこなして、俺は村へと帰る。

 仲間が言っていた、村長からの呼び出しに応えるためだ。

 村の周りで悪さをしているモンスターを退治してて早十年。

 もしかして、そのことについてお祝いでもしてくれるのかな?


 どこの村でもそうかもしれないけど、この村の周辺はモンスターがうじゃうじゃいる。

 本当は国で管理しているギルドを雇えばいいんだけどそんな大金、この村じゃ払えない。

 ランクにもよるけど、質の良いギルドを雇うにはそれなりのお金が必要となる。

 もし、安いお金で雇ったギルドがモンスターを倒せないなら、払った意味がない。

 ギルドの人間を選べず、更に先払いという絶対的にこちらに不利な条件なのも、ギルドを雇わない理由の一つだ。

 国は村を守らなくても、自給自足の生活を送ることができるのだろう。じゃなければ、こんなに不利な条件をこちらに突きつけてこないはずだ。


 でも、ギルドを雇わないということはモンスターに襲われる危険性が常に伴うってことだ。

 何もしなかったら、モンスターが村を襲ってきてしまう。そうしたら、村は一気に壊滅。俺たちの生活はおろか、命が終わってしまう。

 だから自分たちで村を守らなければならない。そのために、村では自警団が存在している。

 俺のような若い人たちが集まってモンスターから村を守るんだ。幸い、装備を買うお金くらいは村にある。

 だから、何とか丸腰で戦うことは避けられている。


 モンスターとの戦いは常に危険がつきまとう。気を抜いたら死ぬ。

 それが戦いだ。でも、十年間モンスターと戦ってきても、俺はこうして生きている。

 戦いのセンスがいいのかもしれない。まあ、頼りがいのある先輩のおかげで戦ってこれたってことも大きいけど。


 とりあえず、村長の家に着き中に入った俺は村長に話しかけたのだった。


「村長、ただいま戻ったけど……話って何?」


「うん。実はケイくんに頼みがあるんだ」


「頼み?」


 村長はまだ生まれて十年ほどしか経ってない幼い女の子だ。

 まだ仕事なんて難しい年齢なのに村長という重要な仕事を任されているのか。

 それには理由がある。前の村長だったのは彼女の父親だ。彼はモンスターとの戦いに重点を置き、常に戦いに出向いていた。

 俺も何度も見たことがある。彼の勇姿を。だけど、彼は運悪くモンスターに殺されてしまった。

 そのモンスターを殺しても、彼は戻ってこない。彼のリーダーシップは村の気力にもなっていたのに……。

 悲しみに暮れた俺たち村人だが、いつまでも悲しんでいられない。

 父の意思を継げるのは、その血を引いている娘しかいない。だから、満場一致で次の村長は彼女に決まった。

 まあ、幼くても大丈夫さ。彼女に全てを任せるってわけじゃない。助け合っていけばいいんだ。

 村だし、そんな決まりに縛られる必要もないさ。


 そんなわけで、村の自慢である幼き村長は俺に向かって真剣な表情を向けていた。

 セミロングの髪が彼女と一緒に動く。父親譲りの赤色の髪の毛だ。

 それだけで、あの父親のような勇ましさを持っているような気さえしてくる。


「実は、国の護衛隊に君が選抜された」


「……え?」


 国の護衛隊って、とても名誉があるあの護衛隊のことか?

 俺は村長の話を疑った。それもそうだ。たかが村の男の子が選抜されるなんて普通あり得ない。

 でも、村長の目は真剣そのものだった。嘘は言ってない。そう読み取れた。

 村長は幼き声ながらも声色を低くし、必死に威厳ある姿を見せようとしていた。


「うん。真剣な話なんだ。君の実力が国に届いて、ついこの間、国の使いの者がこの村にやって来た」


「い、いつの間に……」


「君はいつもこの村の周りを警備しているからね。気づかないのも無理はない」


 ありがとう。クスリと笑いながら付け加えて、村長は話を続けた。


「使いの者はこう言っていたよ。最近のモンスターの増加に伴い、国や村の枠組みを超えた組織の編成が必要になったと」


 確かに最近のモンスターの動きは活発化している気がする。

 モンスターが村を襲ってくる頻度も前にも増している……と思う。

 弱いモンスターならいいけど、もし、ドラゴンが数百体でやって来たら、さすがの俺も太刀打ちできないかもしれない。まあ、死ぬ気で戦ったら大丈夫かもしれないけど。


「そして……参加に承諾してくれた村には……その……」


「どうしたんだ村長? 何か言いにくそうだけど」


「……お金をね……提供してくれるって言ってくれて……」


「ああ、なるほど。どのくらい貰えるのかな?」


「えっと……いっぱいくれるって……。あ、あと! 国のギルド派遣もある程度は保証してくれるって言ってて……」


「――分かった。行くよ」


「ケイくん……」


「村にお金が入るなら、俺は喜んで行くよ。国で管理しているギルドもモンスター討伐に来るんでしょう? なら、俺がいなくなってもこの村は安心だ」


「ごめんケイくん。他の人を推薦してみたんだけど、どうしてもケイくんが良いって……」


「アハハ。俺、そんなに凄くないと思うんだけどな。でも、国に選ばれたんなら嬉しいよ」


「明日に早速、使いの者が迎えに来るって言ってた……」


「ず、随分急だな……。ま、しょうがないか。あっちにも事情があるんだよな」


「ケ、ケイくん……」


「ん? どうしたんだい?」


「本当に行っちゃうの? ケイくんが否定してくれたら使いの者が諦めてくれるかもしれないのに……」


「まあ、村が裕福になるし、個人的にも興味はあるし」


「むぅ……」


「……あ、もしかして、もう俺と一緒に遊べないこと気にしてるのかい?」


「ギクッ! そ、そんなんじゃないよ!」


「村長になってからあんまり遊んでないからなー。今日は久しぶりに遊ぼうか?」


「わ、私は村長です! 遊んでいる暇はないの! 村の一番偉い人が遊んでたら他の村から笑い者にされるの!」


「アハハ。そっか。じゃあ行くよ、俺」


「……うん」


「……心配するなって村長。絶対に戻ってくるからさ。その時はお互いもっと成長してような?」


「成長したら、遊べなくなっちゃいます……!」


「おお、そっか。それは悪かった」


「ねえケイくん。今日はパーティでもしようかなって思うんだけど」


「そんな大層なことじゃないでしょ。まるで死にに行くみたいじゃないか」


「でも……気持ちの問題で……」


「パーティに使うお金があるなら、もっと食料を買い込んでおいてよ。何があっても大丈夫なようにさ」


 さて、今日はどうしようか。ってか明日にはもう出発かー。早いなー。

 まあ、部屋の掃除でもしておこうかな。あ、ここを出る前にもう一回見回りしておこうか。

 夜の見回りは重要だし、モンスターがいたら退治しなきゃならない。

 モンスターを狩った帰りに村長のところに寄ったのもあって、装備は問題ない。

 じゃ、もう一回見回りに行きますか。

 俺は村の平和を守るため、周辺の見回りへと向かったのだった。

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