第3話「書斎にて」
書斎にはオリヴィアの魔法本と思われる本が三つあった。
他にもこの世界の歴史・地理などについて詳しく書いてある本やシリルの剣術本などもあった。
いずれも後ほど読んでおきたいが、とりあえず今は魔法だ。
この世界において本というものは高い。
しかも誰もが書ける伝記・童話とは異なり、専門知識を要する本となるとかなりの値がするのだそうだ。
俺は改めて自分の転生した環境が良いことを思って感謝した。
三つある魔法本の題名にはそれぞれこう書かれていた。
魔法の基礎知識~魔法を知ろう~
治療魔法を極めし者
魔法の応用~オリジナル魔法へ~
たしかオリヴィアは治癒魔法以外使えなかったって聞いたんだが・・・。
しかし魔法の応用について綴られた本もこの家に保管してあるということは、彼女の魔法への熱意の証拠であると言えるだろう。
もしかしたら将来的に俺に魔法を覚えさせるためだったのかもしれないな・・・。
まぁそれはさておき、この中のどれを最初に選ぶかと言ったら当然〈魔法の基礎知識〉だよな。
俺に魔法適正があるのかどうかは分からないが、これを読まないと何も始まらない。
俺はゆっくりと本を開き、そう思いながら床に座り込み本を読み始めた。
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ふぅ。結構長かった。
俺は少しの疲労感と共に本を閉じた。
だが魔法についてだいぶ分かったな。
どうやらこの世界の魔法は、基本四属性〈火・水・土・風〉と治癒魔法で成り立っているらしい。
そして、その中に相対属性〈光・闇〉というものが存在しているそうだ。
なお、魔法使いはそれぞれ魔法適正と呼ばれるものを持っている。
魔法適正とは自分の得意な属性魔法のことを意味する。
だが多くの魔法使いは1~2つ程の魔法適正しか生まれ持たないのだ。
ちなみに自分の魔法適性外の魔法属性を使っても消費魔力量が多すぎる。
しかも威力は低く、使えても役に立たないことが多い。
そのため普通は自分の適性属性を見つけて、その属性のみを鍛えるのが良しとされてるのだ。
また、この世界の魔法使いは人間族だけで約30万人程とかなり少ない。
詳しく説明すると、その中の7割程が基本四属性の1~2種類しか使うことができない。
そして2割程が治療魔法のみしか使うことができないそうだ。
俺も本で読んで不思議に思ったのだが、
治療魔法・基本四属性は一人の人間に両方魔法適正があることはない。
しかしもちろん例外も存在する。
そして、この例外こそが残りの1割にも満たない人々なのだ。
これらの人々は治療魔法と基本四属性に適性がある特別な人物となっている。
だがさらにこれに当てはまらないごく僅かの別のタイプの魔法使いがいるらしい。
それが相対属性魔法使いだ。
相対属性魔法使いが少ない理由。
それは光魔法の場合『光魔法が使えるのは基本四属性をすべて極めた人のみである』と本には書かれていた。
要は基本四属性に全て適正があり、それを極めれる人がいないのである。
そして闇魔法ともなると、
存在自体はたしかにあるらしいのだが使用できる者は人間族の歴史上確認されていないらしい。
そのため光魔法と異なり使用条件も不明である、と本には載っていた。
次に魔力についてだ。
魔力とは体の中に個人差はあるが誰もが持っている力の総称である。
よって魔力はあるのだが魔法適正がないため魔法が使えないという人もいるのだそうだ。
だがその人たちは体に直接魔力を纏うことで身体能力を上昇させているので、宝の持ち腐れというわけではないらしい。
また魔法の使用時には詠唱が必要になるが、実は詠唱の難易度はどの魔法もさほど変わらないと本には書いてあった。
たが、その理由が何故かは書いてなかったので今度オリヴィアに聞くことにしよう。
さて。
ここまで分かったことで思うことは、やっぱりあれだな。
魔法は才能が全てなので、
こうして実際に自分がその立場になってみると才能の有無を確かめるのが恐ろしくてたまらない。
例えるならば
前世の日本は勉強でもスポーツでもそうだけど、才能がなくても努力すればある一定のレベルまでは絶対にいけるようになっている。
だが魔法に関しては、「努力?そんな子は知らないですね。」状態という感じだろうか。
というかさ、
魔法は誰もが憧れるロマンだと思うんだ。
そのロマンをできる可能性をYes,Noの二択にされちゃうと、諦めきれないよね。
少なくとも俺的には理不尽だと思うんですがどうですかね、この世界の神様さん。
・・・あぁ。なんだか転生してからというもの、情緒不安定だな。
まぁ内心で思ってることは口に出さなかっただけで、元からそうだった気もするが。
でもやっぱり心になんらかの影響は出てる気はする。
今思うとまだ小さかった頃にオリヴィアのおっぱいを飲むことがあった。
前世の頃の俺のままのはずなら間違いなく興奮してた。
だが何故か心は落ち着いていたのだ。
それともそもそも転生とは別にして、コミ障だった俺が人と接してきた結果で心が変化したという線もあるのだろうか。
いずれにせよ、こうグダグダと思ってても埒があかんな。
話がずれている気もするし。
そろそろ俺に魔法適正があるのか調べよう。
俺はそう思って本を再び開き、とうとう行動に移した。