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第10話「新しい生活」

 俺は玄関のドアを開けてただいまと言った。

 家の中からはおかえりというオリヴィアの声が返ってきた。

 俺はシャルと共に靴を抜いて家の中へと入る。


 オリヴィアはリビングで今晩の夕食の準備をしていた。

 シリルはまだ仕事から帰ってきていない。


「お母さん、ちょっといい?話したいことがあるんだ。」


「なあに?今日のご飯はクリスの好きなホロホロ鳥よ。」


 そう言ってオリヴィアは後ろを向いたまま答えた。

 今日のご飯はホロホロ鳥なのか。

 あれは美味しかった。

 しかも若鶏だったから肉が柔らかくてまだ幼い俺でも食べやすかったのだ。

 

 いや、でも今はそういうことではないのだ。

 俺は今日あったことをシャルのためにもシリルとオリヴィアに相談しなければいけない。

 シリルには帰ってきたら言うつもりだが、先にオリヴィアに言っておいて損はないと思う。


「お母さん、違うんだ。ホロホロ鳥は嬉しいけど真剣な話だよ。」


「クリスが真剣な話をしたいってことはとっても大切なことなのね。分かったわ、それで話って・・・」


 オリヴィアはそう言いながら振り向いた。

 そして俺の隣に立つシャルに気が付いた。

 オリヴィアはシャルを見てすごく驚いた様子だった。


「えっと・・・。クリス?この子は誰?」


 オリヴィアが聞いてきた。

 まぁそうだろうな。

 だが立ち話もあれだ。

 長い話になりそうだし。


「お母さん、話はこの子のことについてなんだ。とりあえず座って。話すことが長くなりそうだから。」


「わかったわ。ただホロホロ鳥の下ごしらえだけはさせてね。じゃないとご飯を食べるのがおそくなっちゃいそうだから。」


 オリヴィアはそう微笑みながら言った。

 少し動揺していたが困り果てていた、というわけでもないので俺はシャルの手を握って待っていた。


 待っている間、玄関のドアが開いた音が聞こえた。

 シリルが帰ってきたのだ。

 シリルはそのままリビングへと入ってきてオリヴィア同様、シャルを見て驚いていた。


「えっと、クリス。この子はどうしたんだ?」


「おかえり、お父さん。今お母さんにそれを説明するとこだったんだ。大事な話だよ。お父さんも座って。」


 俺がそういうとオリヴィアも夕食の準備を終えてテーブルの椅子に座った。

 位置的には俺とシャルが隣同士、対面にはシリルとオリヴィアが座っている。


 二人が話を聞く状態になったことを確認した俺はゆっくりと口を開いたのだった。



---


 

 俺は全てを話した。

 シャルがいじめられていたこと。俺がそれを助けたこと。シャルには家族がいないこと。そしてシャルはこのままでは生きていけないこと。


 俺はシャルに感じたことをそのまま二人に言った。


 二人は黙って俺の話を聞いてくれていた。

 そして俺はシャルと一緒に暮らしたい。

 そう打ち明けた。


 二人は少し考えていたが、やがて俺とシャルの顔を見てシリルが口を開いた。


「ああ、わかったよクリス。シャルはうちの家で預かろう。確かにうちなら一人家族が増えても養っていけるだろうしな。そしてシャル、君はもう今からうちの子だ。まずは暖かいお風呂にでも入ってきなさい。それから夕食を食べながら今後について話そう。」


 俺とシャルは互いに顔を見合わせて喜んだ。

 シャルは泣いてしまっていた。

 それでも二人にありがとうございます。ありがとうございます。と何度も言った。

 二人は微笑みながらシャルを抱きしめた。




 俺はその後、シャルを風呂場へ案内した。

 シャルはお風呂なんて久しぶりといって笑いながら入っていった。


 俺はというと、その間にシャルの着替える服をとりに行った。

 といってもシャルは先ほどまで着ていた白色の服しか持っていなかったので、かつて俺が着ていた青色の服を脱衣所に置いておいた。


 え?覗きだって?

 

 いやいや、さすがの俺も可愛いからってまだ5歳ほどの女の子の裸を見て興奮はしたりしないよ。

 


---



 風呂に入ったシャルはさっぱりしていた。

 元々色白のシャルだったが肌も綺麗だったのだ。

 そして淡い赤髪はまだ水気を含んでいた。

 それを見た俺はタオルでシャルの赤髪を拭いてあげた。

 シャルはそれをされて嬉しそうだった。

 ちなみに風呂から上がったシャルは髪の赤、服の青という対象的な色をしている。

 とても目立つ。

 だが可愛いから違和感など俺は感じなかった。


 俺たち四人は夕食を食べた。

 シャルについて話して決めたことはこうだ。


 一つ、シャルはうちの子として扱う。

 二つ、シャルは何も遠慮してはいけない。

 三つ、俺がシャルと一緒に過ごしてあげること。


 俺は何も文句ない取り決めだと思った。

 シャルもまた同様だった。

 本当に二人には感謝だな。

 頭が上がらないよ。


 その夜、俺はシャルと同じ子供部屋のベッドで寝た。

 ベッドが一つしかなかったのだ。

 まぁ幸いにもダブルベッドぐらいの大きさだったので不自由はなかったが。

 



 翌日俺が目が覚めると、目の前にシャルの寝顔があった。

 可愛い。

 俺はシャルを起こさないようにして起き、リビングへと下りていった。

 リビングではオリヴィアが朝食を作っていた。

(うちの家はリビングからダイニングが見えるのでリビングダイニングと言った方が良いかもしれない)

 またその窓からは外でシリルが剣の素振りをしているのが見える。


「おはよう、お母さん。」


「おはよう、クリス。昨日はよく眠れた?」


「うん、シャルもよく寝てたよ。」


「ふふ。それにしてもクリスがいきなりガールフレンドを連れてくるなんて驚いちゃったわ。」


 オリヴィアがそう笑いながら茶化した。

 あ、そういうふうにも見られちゃうのか。

 うーん、俺は単純にシャルが可愛そうだったから連れてきたんだけどな。

 まぁだけどシャルは確かに可愛いよ。

 あと10年もすれば、俺の守備範囲どストレートの子になるかもしれない気がする。

 だけど俺たちはまだ5歳程の年齢なのだ。

 俺も不思議と転生してから性欲とか感じないし。


 オリヴィアと話しているとシリルが家に入ってきた。

 シリルもまた、オリヴィアと同じことを俺に茶化してきた。

 俺はなんだか聞いてるうちに顔が赤くなってきた。

 親にこういうことを言われると恥ずかしいな・・・。

 これが噂に聞く下世話というやつか。


 そうこう3人で話しているとシャルも起きてきた。

 シャルは家族というものに慣れていないのか、おどおどとしておはようと言った。

 俺たちはそれを笑いながらおはようと返した。

 


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