レイナルド 小話
1000文字にも満たない小話
レイナルドは、その一報を聞いて自室で不貞寝を敢行した。
やはり、というべきか、執事から渡された招待状には、ルミリア・エランドールとドミトリアス殿下の結婚披露パーティーが近日行われる為、是非出席して欲しいという旨が丁寧に記されていた。
「流石に欠席は、不味いかな…」
招待状を掲げつつ、レイナルドはさてどうするべきかと思案する。
「しかしまさか本当に、第二王子と結婚するとは思わなかった」
瞼の裏に蘇るのは、何処か清々しい笑みを浮かべるルミリアの姿。
初恋だった、なんて…流石にこの年になって臆面と言える事では無いが、初恋は実らないという話は本当だったらしい。
結局、獅王国のゴタゴタも、身内で納められた事だし、ある意味これは好機とも言えるのかもしれない。
レイナルドがクリスタ王国の使者としてレンドルフ王国の今後を見極めに向かう。そこでドミトリアス殿下が王太子として如何ほどの人物か、そしてクリスタは今後どのように対応していくのかを見極める好機にする。
「いずれ私が宰相に就いた暁には、クリスタもレンドルフも、友好国としてそれなりの地位を保っていて貰わなければ困る」
そう自分に言い聞かせながら、寝転がっていたベッドを起き上がり、レイナルドは脱ぎ捨てていたジャケットを拾い、ドローイングルームへと足を運んだ。
途中ですれ違った執事に「これから出かけてくる」と声を掛け、レイナルドは簡単な軽食を持って馬車に乗り込んだ。
その背中にはもう、初恋に敗れて悲嘆に暮れる男の色は無かった。