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変な夢

作者: 又此空太

 おいでよお金。うんいいお題だ。おいでよお金。いま、私はある小説投稿サイトのアットランダムにでるお題を頭の中で連呼した。おいでよお金。うんいいタイトルだ。ううん。

 ああ、金が欲しい。共産主義に協賛したくなる。それくらい金に詰まっている。お金が排水口に詰まっているイメージが浮かんだ。

 お金とは価値の置き換えである。代替品である。いや、物ではないのか、いや物なのか?

 お札は物だ。株は空想だ。お金という概念は透明だ。だが人がお金に対する思いは色とりどりだ。とりどり。

 お金が欲しい。すごくそうすれば学校に行ける。いま私は高校生だが、大学に行けるか行けないかが微妙なところなのだ。

「佐々木くん、お金貸して」

 と私は佐々木にお金を借りる。佐々木は、遠慮がちに貸してくれる。

「誰にも言うなよな……」

 そう言いつつ私にお金を貸す佐々木。余計私はお金を踏み倒さずにはいられないのだ。

 お金でゲーセンで遊ぶ。本を買う。コーラ買って寝る。一応勉強もした。

 明日、す……佐々木にお金を返さなきゃな。

 私は父さんにお金を借りた。父さんの会社は倒産しかかっている。だが借りる。

 父さんは困った顔をして、

「明日返してね」

 と私に言った。

 もちろん私は返さない。

 毒々しい人間だということは私でも分かっている。お金は返さない。

 お金とは? 価値。私には価値がない? 負けた、私が? 価値がない。負けている、私。

 お金には価値がない。

 おかしいことを考えてしまった。しょせん私は傾いた会社に行ってる父の娘だ。母は高卒だ。両親は私に大学という夢を託した。

 困る。ああでも大学には行きたい。

 なんとなく。だって、高校のみなが行ってているから。

 天井の電灯を見つめる。一つの灯。明るい。

 私は本を読む。天然文化論。

「何々、天然とは天パ、kawaii、知的障害、もしくは発達障害に関係する文化のことである。これらは一切関係をもっていない」

 私は本を閉じた。どうやらこの本は失敗らしい。普段はこんなことないのにな。

 窓辺に出た。ベランダ。家々と明るい夜空が見える。いまは夏。

 弟がいた。

「やあ姉ちゃん」

 弟は紅茶を飲んでいた。

「一緒にどうだい」

 私は椅子に腰かけた。この家は(一軒家だ)小高いところにある。周りは草っ原で、家はない。

 周りに家はない。

「星がきれいだね」

「うん」

 ロマンティックな感じの弟に、驚愕する。心地いい。

 いまは深夜零時。

「深夜二十四時をお知らせします」

 目の前に玩具の兵隊がやってきて、箱を開いた。

 白い箱の中に、私は、私たちは引き込まれる。

 時計の世界に私はいた。弟も隣に居る。私たちは宙に浮いている。

「プカプカ、楽しんでいますか? ここは国のない世界。国境も、君も、弟も、私たちもいない」

「私たちはいるわ」

「そうしかしここは嘘つき以外が割を食う世界だ。さあ、皆さん、どんどん嘘をつきましょう」

「寺山修司みたい」

「どうして」

「感覚的に物を言いすぎだよお姉ちゃん」

 ドラえもんの四次元ポケット、じゃない方の四次元世界の、時計の中みたいな中に私たちはいた。周りには、そのアニメで見たような掛け時計のモチーフがいくつも浮かんでいる。

「謎かけをします」

「はいどうぞ」

「弟くん。

「君から」

「はい!」

「お腹が空いた時に食べる動物園は?」

「分かった! はいチーズ動物園!

「……丘にある、丘動物園?」

「おかズー?」

「答えは有りませんので、無しということで」

「ええー酷いー」

「あなた方の頭の柔らかさを調査したのです。どちらも合格ですね。おめでとう」

 いまから思えば、あの兵隊は兵隊ではなくて、鼓笛隊だった。ただ、瞬間的に兵隊だと思ってしまった。

 玩具の鼓笛隊は、爆発四散した。その瓦礫の中から、ぽろぽろと時計が二つ、落ちてきた。腕時計らしい。

「私達は二つの腕時計をそれぞれ着けてみた。なかなか格好良かった。それがこれ」

 私は友達の町中望に、その腕時計を見せつけた。

「へえー、綺麗だねー」

 へへん、確かに綺麗だろう。あのあと、夢から覚めた私は、現実の世界の枕元に、夢にまでみた腕時計を置いてあるのが見えた。

「でさー、どうして寺本はそんなに腕時計が好きなのー」

「だ、大好きよ大好きー。だって、格好いいでしょ」

 だから、私には腕時計が必要なの。

「だらし姉な、君は」

 と、いままで弟に言われ続けていた。それを、自己を買えるのだ。それを昨日思い立ち、そしたら變な夢を見て、朝起きたら枕元に夢にまで見た腕時計が一寸狂わず置いてあったというわけ。

 これからはいい姉ちゃんになろう。




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