兄、本気になる。
今日は、第一王子のアレク様に王宮へ呼び出されました。
はぁ。
会いたくはありませんが、今は断れませんね。
無駄に長い、廊下を歩き。
無駄に広い、応接間で待ちます。
きっちり30分も待ちました。
ここでイライラしたら、負けなんでしょうね。
何もないように、にこやかに挨拶を済ませます。
「やぁ、忙しい君を待たせてすまないねぇ。」
まったく、すまないという思いが伝わってきませんが。
「いえアレク王子の方が、ご公務でお忙しいでしょう。私の事など、お気になさらないで下さい。」
ええ。私のことは本当に忘れてください。
「いやいや、君の活躍は王宮にも聞こえてきていますよ。今度、新しい事業を始めるとか。」
さすが、良くご存知ですね。
「ええ。上手くいくかどうかは分かりませんが。」
「君の事です。勝算があるのでしょう。」
当たり前です。勝算がなければいたしませんよ。
「そういえば東の国は民主化が進んでるようだね。あまり、わが国とは親交がないようだけど。」
「そうですね。あちらには古い知り合いがおりまして、今度の新しい事業も一緒に始める予定です。」
「へぇ。それで、君は商会ごと東の国へ移るとか言わないよねぇ。」
声だけは、にこやかだけど顔は笑ってない。
うちは王都で一番の税を納めてますからね。
本当は気が気じゃないでしょう?
「まさか。代々続く伯爵家を捨てはしませんよ。」
場合によっては、分かりませんが。
「そうですか。伯爵家がこんなに成功したのは君のおかげでしょう?父君も母君も君には逆らえないのではないかな?」
そうですよ。実際、私が全権を握っているのですから。
彼らは、伯爵領にいて私の承諾なしに鉛筆一本だって買えやしませんから。
「そんなことはありませんよ。私は両親の事を尊敬しておりますので。」
でも、認めるわけがないでしょう。
「そうそう妹君ですが、社交界から遠ざかっているみたいだけど。コゲラ家の長男ウイリアムは私の友人でね。ウイリアムは今回の件を大層気に病んでいるよ。」
まぁ、あの方ならそうだろう。
「お心遣いありがとうございます。まだ良い報告は出来ませんが。妹もアレク王子に気に留めていただいたと聞けば喜ぶことと思います。」
「そうかな。そうだっ!私の弟に隣国から戻って近衛隊長をしてる第三王子のランスがいるのだが、君の妹君と年齢的にも丁度いいんじゃないかな。」
さも今思いついたような言い方をされますね。
こっちが本命の用件ですか。
妹の結婚を取引の材料に出してくるとは。
遠まわしに婚約破棄された妹には、これ以上の話はないだろう喜べと言われているようで
腹が立ちますね。
私もそろそろ本気を出さないといけないですね。