アリスの恐怖は続く
「今回は、全てが上手くいったな。」
伯爵は上機嫌でワインを一口飲んだ。
「全てって、式典の事ですか?」
私をこんなに思い悩ませておいて、思わずつんけんどな言い方になってしまうじゃないか。
伯爵はニヤリと私に笑いかけるとワイングラスをテーブルに置き
「いいや。ローズの婚約破棄からかな。まぁ、式典でも賭け屋で大儲けしたが。」
賭け屋ってあれ伯爵がしてたんですか。
それに婚約破棄まで?
「婚約破棄を伯爵が仕掛けたんですか?」
それってどうですか?
「いや。奴にはちょっとした嫌味は言ったりしたが俺が仕掛けたわけじゃない。」
ちょっとした嫌味。
もしかして、ちょっとじゃないんじゃ。
「ローズお嬢様が可哀そうですよ。それで社交界出られなくなったって聞きました。」
あんなにシスコンなのに、よくそんなこと出来ましたね。
「いいんだよ。疑う事を知らないローズにはちょうどいい薬になったし、
俺のこれからの商売での人選もできたし。」
お願いします。少しは腹黒感を隠してください。
「俺は働かない人間が大嫌いなんだよ。商人貴族で結構。
今回の事で、社交界とも距離を置けそうだ。」
伯爵はずいぶん楽しそうだ。
「社交界と距離を置くんですか?」
貴族なのにいいのかな?
「あぁ、ローズの事を悪く言ったり面白可笑しく噂を広めたりした家とは付き合わないし。
それに式典で第一王子には嫌われただろうから、呼ばれないさ。」
「なんで嫌われたんですか?」
「まぁ色々あるけど、大きいので言えば王家の剣と盾かなぁ。
これから貸出料を吹っかけて王立美術館へ貸出す予定だし。」
「でもあれって、隊長のじゃ。」
思わず私が言うと伯爵はじろりと私を見ると
「だから、オリバーに副収入をやるんだよ。
オリバーがお金目当てと言われるのは構わないが、ローズが気にするからな。」
なるほど。
伯爵って未来が見えるんじゃないですか。
あれ?伯爵いつの間に隣の席へ?
ん?
すごく近いんですが。
「今日、俺が言った事守らなかったな。」
えっ。
まだ根に持ってるんですか。
「それは隊長が。」
だって隊長が勝てないって言うから。
「なんだって?」
怖い。怖いよ。
「いえ。すいません。」
私が心を込めて謝ったのに、伯爵はふんっと鼻を鳴らすと
「まぁ、いい。」
そう言って私の肩に手を回すと
「これからの俺たちの話をしよう。」
と爽やかな笑顔で言った。
伯爵、これからの私達って。
私達に、どんなこれからがあるって言うんですか?
取り合えず、完結といたします。
本当にありがとうございました。
長い間待っていてくださった方、本当にありがとうございます。
更新待っていましたと言っていただけて本当にうれしかったです。