好きなのです。
私達の公開プロポーズの後に第一王子からオリバー様に
剣と盾が贈られました。
「王家の剣と盾があぁぁ。」
と裏で第一王子が嘆いていましたが、大丈夫でしょうか?
お兄様はニコニコと嬉しそうにしていましたが。
式典の全てが終わり
「今日は、レストラン蝶々を貸し切りにしてあるから皆でお祝いするよ。」
というお兄様の言葉に心が弾みます。
レストラン蝶々は、リーズナブルなのにとても美味しくて私のお気に入りの
お店です。
シェフは、東の国からお兄様がスカウトしたとか。
ふふっ。
私は隣を見ては、微笑みが止まりません。
だってオリバー様がいるのですよ。
騎士団の皆さんも来てくださって、お祝いの言葉を頂きました。
そして、段々とオリバー様を中心に騎士団の方々が抱き合ったり、肩を組んだり
歌を歌ったりが始まりました。
その微笑ましい様子を少し離れた所から、見ていると
「ローズ嬢。」
オリバー様とそっくりの声にびっくりして振り向くと。
オリバー様をワイルドにした人が立っていました。
「初めまして。オリバーの兄のクロードです。」
にっと笑うオリバー様のお兄様。
「初めまして。ローズです。ご挨拶が遅れてすいません。」
慌てて淑女の礼をすると
「少し前に着いたところだから。それにそういうの俺苦手なんだわ。」
だから気楽に聞いて欲しいんだと笑って言っていただけたので
私も肩の力を抜いて耳を傾けることができました。
「俺の住んでるところは、田舎で見渡す限り麦畑。おまけに隣国と接してる山には
夜盗が出たり、クマが出たりする所で。
男爵っていう肩書はあるけど、領民とほぼ変わらない暮らしぶりでね。
オリバーとは双子だったんだ。
俺がほんの少し先に生まれただけ。
子供のころは、ディアと三人でよく遊んださ。
ディアは隣の領地の大きな商家の娘だったんだ。」
クロード様はそう言うと、テーブルで美味しそうに料理を食べているディア様を
優しく見つめました。
「俺はガキの頃からずっとディアが好きだった。
オリバーはそれに気が付いていたんだと思う。
あいつは、賢いし剣の腕だっていい。
周りが双子なんだから、男爵家を継ぐのはオリバーでもいいんじゃないかって
言い始めた。
俺が唯一勝てるのは、剣の腕ぐらいだったし。
そしたらあいつ、家族に何も言わないで勝手に騎士学校に入ったんだ。」
家を継ぐのは兄さんだって言って。
クロード様は、今度はみんなの真ん中にいるオリバー様を優しく見つめています。
「ディアの両親が、爵位がないなら結婚させないって言うのを分かってたんだと思う。
だから、俺はオリバーには幸せになって欲しいとずっと思ってた。
ローズ嬢。
オリバーをよろしくお願いします。」
クロード様に頭を下げられて、慌ててしまいます。
「そんな。私の方こそ、よろしくお願いします。」
お互いに頭を下げあいしていると
「こんばんは。」
赤い顔をしたウイリアム様が声を掛けてきました。
少しお酒に酔っているようです。
「こんばんは、ウイリアム様。こちらは、オリバー様のお兄様でクロード様です。」
私は失礼にならないように、挨拶をします。
「あぁっ。道理でそっくりですね。今日は弟君をお祝いする為に来られたのですね。」
いつもより陽気な口調で、ウイリアム様は笑っています。
ウイリアム様大丈夫かしら?
だいぶ酔いが回っているようですが。
「恥ずかしながら、私の領地はそれほど豊かではないんです。
それが最近、私の領地で作っている小麦がすべて高値で売れまして。
この様な事は初めてで、用水路などを整えたりした後に家族が妻との旅行を
進めてくれまして。それならばと弟に会いに王都にということになったんですが。
まさか、この様な式典の時に来られて。妻とも運が良かったと言っていたんですよ。」
クロード様も少し酔っておられるのか饒舌に語ります。
「えっ。小麦を大量購入。まさか。いや。そうに違いない。」
ウイリアム様は驚いたように言うと
全ては彼の思惑通り、繋がっていたんだ。とつぶやきながら、ふらふらと歩いて行ってしまいました。