アリス2
私は見つからないように注意しながら、ローズお嬢様がいる席の下に移動して
ヤツが他の方向を見ている時を伺って
今だ。
ローズお嬢様に向けて飛び跳ねながら、手を振った。
周りが怪訝な顔で見てるが、気にしない。
ローズお嬢様が降りてきたところで、素早く騎士団の休憩室につながる階段付近に
案内する。
いつも美しいが、ローズお嬢様は今日は一段と美しい。
ヤツと違い心も美しいローズお嬢様が私を誉めてくれた。
照れる。
もっとローズお嬢様と話したいが、時間がない。
ふっと見上げた時
ヤツと目が合った。
ゲッ。
もう見つかった。
それはそれは綺麗な笑みを浮かべて私を見ている。
慌てて階段を見ると、隊長が上がってくるのが見えた。
私は隊長に目で合図すると、
謝りながらローズお嬢様の両肩を押した。
隊長が抱き留めたのを確認して、階段をふさぐ様に立つ。
あー。
胃が痛い。
来る。
絶対にヤツは来る。
「やぁ。アリス。」
来たぁ。
「こんにちは。伯爵。」
出来れば、さようならしたいな。伯爵。
「ここにローズが来たと思うんだけど、君、僕との約束忘れていないだろうね。」
全てを忘れてしまいたい。
「すみません。ちょっとしたアクシデントがありまして。」
手汗が半端ない。
「そう。どういうアクシデントかな?」
隊長が老けてしまったからかな。
「えぇ、ローズお嬢様に是非とも確認したいことがあるとかで。」
笑いながら、怒ってるよ。
あまりに怖くて視線を逸らし周りを見ると、少し注目を集めていた。
特に若いご令嬢に。
それに伯爵も気が付いたようで、
チッ。
舌打ちすると、私を端の方へ引っ張た。
「言っただろ、絶対に会わせるなと。王子達に見られたらどうするんだよ。」
素が出てますよ。伯爵。
「はい。でも隊長がどうしてもって。確認しないと試合に勝てないって。」
隊長が言うんです。私は悪くないんです。
「なんで今更そうなるんだ。」
知りませんよ。
あっ。
ローズお嬢様がすでに上がってきていて、こちらを見ている。
先程の事を謝ろうとしたが、先に伯爵に連れて行かれてしまった。
しかも後で話があるって。
こっちには、ないのになぁ。
仕方なく席に戻って、午前よりは見応えがあるなぁと一人で試合を観戦してると。
次、副隊長だ。
やたらと黄色い声援を受けている。
あの人、腹黒だけど顔は可愛いからなぁ。
その時一際大きな声がした。
えっ。メルさんだ。
嘘。全財産賭けたの?
ひったくりに遭ってもバッグを絶対に離さないほど、お金大好きなのに。
メルさん。
そんなに副隊長が好きだったんだね。
隊長も副隊長もいいなぁ。
今日は天気がいいなぁ。
はぁ。