知っていました。
商品を受け取って、商会の自室に戻ったらベッドに倒れるように飛び込んだ。
店主が何度も大丈夫かと声をかけたので、ひどい顔をしているのだろう。
そんなこと鏡を見なくても、分かる。
オリバー様に限って。
あるはずない?
いいえ。
知っているじゃない私は。
人の心はすぐに変わるものだって。
人は簡単に裏切るんだって。
身をもって知ってたじゃない。
気付かないふりして、本当は分かっていたはずじゃない。
人の心が分かる魔法でもあればいいのに。
誰が、誰を思っているのか分かればいいのに。
そうすれば、傷つかなくて済むのに。
横を見ると綺麗に包装されたチーフピンが転がってるのが目に入った。
先程の光景が思い出されて、慌てて目を閉じる。
オリバー様は、そのうち指輪をあの人の指にはめるのでしょうか。
私ではなく、あの綺麗な人に。
閉じた瞳から熱い涙が流れていく。
リチャード様の時と同じよ。
笑って忘れるの。
笑っておめでとうを言えばいいわ。
そしてまた少し周りに甘えればいい。
嘘。
そんなの無理。
笑う事なんて。
もう出来ない。
だって今すぐに相手の女性にすがってでも、私はオリバー様を手に入れたい。
オリバー様に嫌われてもいいから、一緒にいたい。
泣いてわめいて、どんなことをしたって、諦められない。
どうしても諦められない。
オリバー様。
胸が痛いのです。
なんで私じゃないのでしょう。