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好きだったの。  作者: 菜々子
18/35

大丈夫ではありませんの。

式典に着ていくドレスが決まりました。

と言ってもお兄様が用意されたんですが、深みのあるブルーで全体に銀色の刺繍がしてあります。

日に当たると、キラキラしていてとても綺麗です。


髪飾り、新しくしようかしら。

そういえば、この間お兄様から最近よく働いてくれるからとお給料なるものを初めて頂いたのです。

高級品は買えませんが、そこそこの物なら買えるでしょう。

商会の前には、昔からお世話になっているお店もありますし。

私は、こっそりと部屋を抜け出し宝石店へ向かいました。


「まぁ、これはこれは。ローズ様。」

店内を見ていると、恰幅がいい柔和な顔立ちの店主が挨拶に来ました。

「今日は、髪飾りが欲しいと思って。」

目の前のショーケースを見ます。

私は声を少しひそめて

「実は、今日は私のお金で買うのでそんなに高いものは買えないの。」

内緒で来たのよと笑うと。

「そうでしたか。それでは予算などを二階でお伺いしますよ。」

ニコニコと促す店主に

「本当に高い物は買えないのよ。」

と言いながらも一人では決められそうにないので案内されるがまま二階へと足を進めた。


二階のテーブル席からは吹き抜けの一階フロアが見えるようになっている。

まるで室内のバルコニーのようで、素敵な造りである。

さりげなく出てきた紅茶もすごく香りがいい。

私、大丈夫かしら?

なんだかとっても悪いわ。

「お待たせしました。こちらの商品などでしたらいかかですか?」

店主がビロードの箱に入った数点の商品を持ってきた。


見た瞬間に一つの商品に心が惹かれた。

黒い石の周りを青い小さな石が取り囲んでいる。

そんなに大きくはないが存在感はある。

ブローチかしら?

「こちらの商品がお気に召されましたか?」

店主が商品を取り出す。

「こちらは女性用でしたら髪飾りにでも男性用ならチーフピンとしても加工が出来るようになっている

商品なんです。今でしたら職人もいますのでお時間頂ければ本日のお渡しも可能ですよ。」

チーフピン。

オリバー様に差し上げたい。

瞬時に頭に浮かんだ考えに、顔が熱くなる。

オリバー様はどう思われるかしら。

お互いの瞳の色を組み合わせたプレゼント。

喜んで頂けるかしら。

そしてこのチーフピンを付けたオリバー様を想像してみる。

いいの。

すごくいいんですの。


「チーフピンに加工したらおいくらかしら?」

さりげなく、店主に聞くと

「ふふっ。そうですね。ローズ様には今後も贔屓にして頂きたいので

これぐらいでいかがでしょうか?加工費はサービスしておきますよ。」

ニコニコ顔がニヤニヤ顔に見えなくもないが、

提示された金額を見て

「えっ。いいんですの?」

驚いて店主を見ると

「ええ。今回は特別に。」

とウインクされた。

店主。

それはいらないんですの。


加工する間いったん帰ろうかと思ったが、出来上がりを早く見たいのでそのまま待つことにした。

暇なので一階の店内を眺めていると、背の高い男女が入ってきた。

恋人同士か男性が女性に顔を向け、しきりに何か話しかけている。

なんだか、微笑ましく思えて目で追っていると

男性の顔が見えた瞬間

心臓がびくりと震えた。


オリバー様。

いつものきっちりした装いとは違い、髪もワイルドな感じでシャツのボタンも開いている。

これが普段のオリバー様?

隣にいるのは、スタイルのいい綺麗な女性。

二人はにこやかに指輪を選んでいる。


手が冷たいのに

心臓がどくどくと脈打つのが分かる。


目をそらしたいのに、食い入るように見つめてしまう。

終始オリバー様は女性を気遣う様子で、それを女性が嬉しそうに受け入れている。

とても親密な様子が分かる。

しばらくして、二人は指輪は買わずに出て行った。


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