兄の策略。
この間は、ローズとちゃんと話せましたか?
目の前の、強面の男に尋ねます。
「はい。おかげさまで。」
いつもの鋭い視線が、動揺してますね。
うまくいったという事でしょうか?
「ふーん。あんまり厳しい事を言うわけじゃないけど、
結婚式にお腹が大きくなるような事はしないで下さいね。」
「なっ、そっ、」
慌ててますね。まぁ、大丈夫かな。
オリバーは少し赤くなった顔で
「まだそんな話になっていません。」
えっ。
「この間は、彼女が婚約破棄になった経緯と私の故郷の話を少ししただけで。」
はぁ。
「貴方、この私があそこまでお膳立てしてあげたのに
ローズの話を聞いただけですか?」
はぁー。
あきれたとばかりに、見やれば
「アルバート様。私は確かに貴族の出ではありますが、田舎の男爵家です。
実家はお金に困ってはいませんが、裕福というわけでもありません。
私の収入では、ローズ嬢の今の生活水準を満たす事は出来ないでしょう。
実家の爵位では、近衛になる事も出来ませんし。これ以上の出世はありません。」
それでも望んで良いんでしょうか?って
私が貴方の経歴について調べてないわけないでしょう。
「貴方、お飾り近衛になりたかったんですか?」
冷めてしまった紅茶を一口すすります。
「いいえ。」
即答ですね。
空になったティーカップを手のひらで弄びながら、
「ローズは大金持ちですよ。」
オリバーを見るときょとんとしてます。
「私は資産のいくつかを、主に貸し物件や株式ですがローズの名義にしています。
もちろん今は、私の許可なく使用できませんが、
そのうちローズは寝てても金が入るわけです。」
オリバーは言っている意味が分かったのか、
「そんな大切な事私に言っていいんですか。
この事が知られたら、碌でもない輩がローズ嬢に群がりますよ。」
この私が誰にでも言うわけないでしょう。
「貴方が黙っていれば、いいことですよ。
それより私の言っている意味が分かりますか?
誰と結婚してもローズの生活水準は下がりません。」
貴方が、お金目当てといわれるかもしれませんが。
私のローズを貰うんです。それぐらいは、我慢できますよね。
「それより、第三王子のランス様のことは知っていますか?」
「はい。近衛の隊長ですが。」
「そう。アイツがローズを狙ってます。
どうせ第一王子の差し金でしょうがね。」
いまいましい。
オリバーはいぶかしげに
「第三王子との縁談ですか?」
「そうですよ。私は今のところ王都で一番の金づるですからね。
婚約破棄した妹には、これ以上ない縁談だから感謝して金を出せってことでしょうね。」
あんな脳みそが筋肉で出来てそうなヤツとローズが似合いだろうなんて。
「もしかして貴方、ローズが第三王子と結婚した方が幸せかも。
なんて思ってないでしょうね。」
「いえ。どうやって潰すか考えていました。」
しらっと答えるオリバーに、私はにんまりとして
「私に良い考えが、あります。
貴方の協力が必要だったので、貴方がその気になっているようで丁度良かったです。」
王族の面子やついでに、リチャードにも痛手を与えられそうです。
細かな指示をオリバーに出して最後に念押しします。
「いいですか。この計画はオリバー、貴方が勝たなければ失敗します。」
まっすぐに、オリバーを見つめます。
もし、負けたらローズは渡しませんよ。
オリバーは視線を逸らすことなく
「望むところです。」
と言うとニヤリと笑い、叩きのめしますよ。
と宣言した。
オリバーには内緒ですが、負けた時の事も考えてあります。
大丈夫そうで安心しました。