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レーズアイス
「最も怖いものってなに?」
彼女はアイスを食べながら、ベタベタした手で聞いた。
「そうだな。胞状奇胎かな?」
「なにそれ?都市伝説?」
彼女は指をねぶる。
「私が怖いのはね。好きな人に嫌われることかなー」
「なんだ。私とかわらないじゃないか。」
「ほうじょうきたいと?」
「そう。きっとわかるよ。」
「そうかな。」
アイスの巻紙は内側をまるめてポケットにいれた。彼女はそういう娘だった。
「私の好きな人のことは聞かないの?」
「怖いんでしょ。やめとくよ。」
彼女は笑ってごまかした。
彼女たちは交ざわりあえないだろう。アイスとは違うのだ。
彼女は内側がつかないように丸めてしまった。
胞状奇胎
受精時に卵由来の核が不活化し、精子由来の核のみが分裂増殖していく。すなわち、妊娠したと思ったら病気だったということである。治療は子宮内容除去術。侵入奇胎や絨毛癌であると抗がん剤などの治療が必要になる。彼女が胞状奇胎が怖いといったのはすなわち「子供がほしい」ということを意味する。
レーズアイス レズ+レーズンアイスの造語




