死眼の少女
こいつは見た目だけは可愛い女の子だが、こいつの見たものは死ぬ。
「なんで君だけは死なないの?」
「そんなこと知らんよ。それよりなんでお前がみたものは死ぬんだよ。」
「さあ、遺伝?」
親は自分が目の見えるころには死んだらしい。いとしい我が子を一目でも見たかったろうに。
「死因はなんなの?」
「さあ、みんなきれいに死ぬけど。」
なぜか俺だけがこいつにみられても死なない。
だからこいつの世話は俺がほとんどしている。
「細菌とか虫とかは死ぬの?」
「虫は死ぬ。細菌は見えないから死んでないかもしれない。」
そりゃそうだ。見えたもは死ぬのだが、見えてないものはそもそも死んでいてもわからない。
「俺を殺したいと思う?」
「私、人を殺したいと思ったことなんて一度もないよ。」
「そっか、すまん。変なこと聞いた。」
「目を閉じて生活するのはめんどくさいけどね。」
少女はそれ以外は存外普通であった。テレビも見るし、学校には行かない。恋もまだしたことがないが、好きなキャラクターはいる。
「いっそのことみんな殺したらどうだい?そしたらめんどうなことはしなくてすむだろ。」
「いやだよ。そんなの。」
「今だってまともに人とつながれているのは俺だけじゃないか。」
「警察につかまっちゃうよ。それにテレビや漫画を作る人はいてほしいし。」
少女は普通なのだ。強大な力をもちながらこの程度なのだ。
「それに目を閉じている間は君がいてくれるだろう。」
「もちろん。」
少女は気づいていない。私が漫画家であることを。
テレビは古いものばかりだということを。
目を閉じれば彼女は死をみなくてすむ。ただそれだけ。
この世界はもうすぐきれいになるだろう。




