#5 迷宮 ??階層2
「なんで刀が……って危な!?」
「カカカカッ」
(この野郎……)
刀を持ったスケルトンが刀を下段から払ってきた。 そして慌てて避ける姿を見て愉快そうに口をカタカタと動かし馬鹿にしたように笑っている。
おかしい、周りの奴らはなぜか襲ってこない。それどころか俺とコイツを中心に囲むように距離を取っている。
「1対1か……」
「カカカカカッ」
「何が楽しいんだよ」
こっちは全然楽しくないわ。おまけに体力もちょっとヤバいし。
ただ、周りの奴らが大人しいのはありがたい。もしアイツらまで相手にしたら確実に負ける。
「……お前を倒さないと無理か」
(どのみち目の前のコイツを倒さなければ終わりだな)
しかしコイツ、先程のを最後に一切攻撃をしてこない。寧ろこっちがこれからどうするのか考えてる姿を見て楽しんでいるように見える。まるで『良く考えて足掻いてみろよ』と、そう言われているみたいだ。
‘‘スロー’’でいくか……、いや…もし倒したとしても周りの奴らがその後襲ってこないとは限らない。次使えば恐らくまともな戦闘はできなくなる。
(刀を、奪うか……?)
あの刀……、何かは分からないが何かある気がする。スローを使ってアレを奪えれば……。周りの奴らは… 賭けるしかないよな…… どうせやらなきゃ死ぬんだ。一か八かだ。
「ふぅ、フン!」
「カカッ」
「チッ、この!」
「カカカ」
覚悟を決めて不意打ちを狙って剣を横薙ぎに払う。それをスケルトンは難なく刀で受け止める。さらに追撃で剣を斜めから振り下ろし、横に払い2連撃をお見舞いするも刀で防がれバックステップで躱された。
「こんな身軽な骸骨が居てたまるか畜生め……」
嫌悪の視線で睨むも奴はその視線さえ楽しんでいる。
(まぁそれが狙いなんだが)
相手は油断仕切っている。最初は必死に攻撃しているフリをして油断を誘う。
まあ必死なのは本当なんだけど。
元々油断している奴を更に油断させる。周りの奴らは邪魔する気配は無いし、時間はある。
完全に油断且つ隙を見せた時に‘‘スロー’’を発動させる。一回しか使えない分確実に成功させる。そしたら刀を奪って残った時間で滅多打ち。
(ふふっ、勝ったな)
おっと、つい口が緩んでしまった。
「カカッ……」
「っ……、どうした? お前からは来ないのか? ん?」
俺が笑ったのが気に入らなかったのか、さっきまでは無かった殺気が俺にぶつけられてきた。だがこれはありがたい。キレた奴程単純で操りやすい。が、正直逃げたい。けど逃げ場が無い。突然の殺気に声が漏れそうになったが何とか堪えて挑発する。
「来いよ、骨野郎」
「カ……、カカカカカ!」
「ぬぅお、ぉ、お、おお!?」
(7mは空いていた距離を一瞬で詰めて来たぞコイツ……!?)
あまりの速さに反応が遅れたが咄嗟に剣を両手で斜めに構え受け止めたものの、重い!
そのまま後ろに弾かれゴロゴロと地面を転がる。
「ぐっ、この……ガッ!?」
起き上がった瞬間腹に衝撃が走った。またも後ろに背中から倒れる。
「カカカッ」
「っ! 足を、退けろ!」
「カカッ」
「グッ…ァ……!?」
すぐさま起き上がろうとするも何かに胸を押さえられ地面に押し付けられる。視線を上げる向けるとスケルトンが右足で胸を踏み付けていた。踏みつけている足を斬ろうとしたが先の攻撃で俺の剣は手の中には無く、少し離れた場所にあった。
「ハァ、ハァ、ハァ、クソ……」
「カカカカカカカカカカッ!」
俺の悔しそうな表情を見たスケルトンは今迄以上に愉快そうにカタカタと音を鳴らしながら笑っている。
周りは俺と刀持ちのスケルトン以外一切音を発していなかったので、今もそれは同じ、目の前の俺を踏み、俺の悔しそうな表情を見て馬鹿笑いしている奴のカタカタという音と声だけが響いている。
「……フッ」
「カカカカカ、カ、カ……」
「随分と腐った性格だな、武器も持たない人間1人にトドメ刺すのに時間掛かり過ぎだろ」
顔に生暖かい笑みを浮かべヤケクソ気味に挑発する。まぁ見事に引っ掛かり怒りからなのかプルプルと震えている。骨のクセに人間みたいだ。
さて、来い。
「カ!」
「ッ! ‘‘スロー’’!!!」
掛かった!
動きはゴブリンに比べるとほんの少し早いが、遅い事には変わりない。俺は直ぐに足を退かし立ち上がり刀を奪おうとする。
けど、取れない!!!
「この! は、な、せ! ゥオラァァア!!! 無駄に強く握りやがってえぇぇぇぇぇえ!!!!!」
予想以上に強く握られていたが、奪えたぞ……。
「うお!! な、何だこりゃ!?」
刀を手にした瞬間急に何かが漲ってくる感覚が襲って来た。体も若干軽くなった気がする。
「やっぱり何かあったか。クソッタレスケルトンが、死ね」
脳天から縦に振り下ろしたところで丁度タイムアップ。一気に疲れが襲って来たがギリギリで堪える。
「効かないかと思って隙とか狙ったが、効いたな……、わざわざ攻撃受けたの無駄だった…」
(さて、周りの奴等……え?)
若干後悔しながら囲んでいたスケルトン共を見ると、どいつもこいつも粒子となって消えていた。
「どういう事だ? あ…ヤバ……イ…」
そこで限界が訪れ地面に倒れ込む。そして同時に意識がどんどんと遠ざかっていく。
#スキル鑑定取得
#スキルアイテムボックス取得
意識が遠のく中、最後に聞こえたのは自分の頭の中に響いた機械じみた声だった。