#1 どっちがチンピラなのか
こちらは息抜きで書いていきます。
神々の方をメインで投稿していくので悪しからず。
ではでは、よろしくお願いします
人気のない倉庫街にある無人のボロボロの建物の薄暗い一室で青年がなにやら怪しげな事をブツブツと呟いている。
「この1年で魔力は充分に溜まった……後はその魔力を使って……」
ブツブツと呟いている青年は、地べたに腰を下ろしたまま、地面に書かれた小さな円の形をした陣に手を翳した。
すると、周囲が手を翳した場所を中心に、キラキラと星の如く輝き、青白く光りだしたその刹那──世界から1人の青年が姿を消した。
***
木々や草草が鬱蒼と茂る森の中、小さな広場ほどに開けた場所に蒼白い稲妻が起き、バチバチと音を立てる。
それは段々と収まり、最後に一際大きな、落雷の時に起こるような轟音と共に消えると同時に、何処から現れたのか、1人の人物が腰を下ろし座り込んでいた。
「…………成功、か……?」
そう呟いた青年は、腰を上げ辺りを見回した。
「成功……だよな? ふ、ぬふふ、ぬふふふふふふ!! ふははははは! ふはh……ゴホッゴホッ! ゴホッ」
突如馬鹿笑いしだし咽せる青年、影野大智、身長は170の中間で真っ黒な黒髪に黒眼、顔は中の上といったところだろう。特徴を挙げるならば少し目付きが悪い。
そして、身を包んでいるのは黒のジーンズ。上には白のTシャツの上からパーカーを羽織り、足には黒のスニーカー。見た感じは普通の青年だ。
「ニート生活ともこれでおさらばだ……クククッ」
「……さて、どうしようか、まぁまずは町だな……そういや、どれくらい時間経ってんだ? もしかして100年とか経ってないよな……?」
ぶつぶつ独り言を言う大智。
「とりあえず行ってみるか、“転移”」
そう言うと、大智の姿がその場からシュンッと音を立て消えた。
***
「お、おぉえあ!? で、でけぇ……この町ってたしか人口300人くらいだったよな……」
俺の目の前には高さ20mはあろう巨大な城壁、記憶が確かならこの町はもっと小さくこじんまりとしたとこだったはずなのだ。
「デカすぎだろ……」
最後に一言そう言って、その場から歩いて立ち去る。
「お、あったあった、結構人が多いな」
40人くらいの人が門に列を作って1人ずつ順番に町の中へ入っている。
うっ、視線が……やっぱりこの格好じゃ浮きまくりだな……。
俺は格好が地球に居た時のまんまなので、好奇の視線を浴びていた。
「次の者前へ」
やっと順番が来たようだ。鎧を着て剣を腰にぶら下げた男に言われたとおり前に出る。
「ん? 変わった格好をしているな、まぁいい、これに手を置け」
「はい」
「……よし、通って良いぞ、ようこそ迷宮都市ラグナへ」
***
「迷宮都市ラグナなんて聞いたことねえぞ……ラグナの町ならなら聞いたことあるが、もしかしてその町がこれなのか……?」
どんだけでかくなってんだよ、と内心で突っ込み街を歩く。
通りはかなり賑わっており露店や屋台、呼び込みをしている飲食店などが建ち並んでいる。
「まずは、金だな、どうやって稼ごうか……」
考えながら歩いていると不意に肩に衝撃が走った。
「っつ、何だ?」
「おいおいおい、何だじゃねえよ、どこ見て歩いんてんだ? お前のせいで服が汚れたじゃねえか」
「ギャハハハ! 兄貴! コイツに弁償してもらうってのはどうです!?」
「おい兄ちゃん! てことで金出せや!」
前を見るとチンピラ風の男が三人、こちらを見てニヤついていた。そして手下らしき男が金を出せと言ってきた。
「は? いやいや、ぶつかってきたのはそっちだろ?」
見てないが。だが大体こういうのは相手が悪いのが相場と決まっている。三人の中でもゴツいリーダーらしき男の服は汚れてないし。要は恐喝だろ。
道を歩く人は俺達を避けるように歩き、周りには人集りができているが誰も助けようとはしない。
まぁ当たり前か……。
「うるせえ! いいから早く出せって言ってんだろ!」
「答えになってねえよ……渡す金なんかねぇし、つか悪いのはお前らだろ 」
「なんだとコイツ……! 兄貴! やっちゃいやしょう!」
「ああ、運が悪かったな、早く出しときゃいいものを、怪我せずに済んだのになぁ!」
もう面倒くさいからチンピラAとBとCでいいや。チンピラAが気持ち悪い笑みを浮かべて殴り掛かって来る。
「先に手を出したのはお前らだからな……“スロー”」
その瞬間、周りの時間の流れが遅くなる。
俺は歩いてAの懐まで行き顎を軽く擦るように殴る。次に笑顔のままゆっくり動くBの後ろに回りトンッと叩く。
あっ、これ結構難しくて下手すると死ぬらしいってどっかで聞いたな。死んでないよな?
そして最後にCに膝かっくんして時間を戻す。
ドサ、ドサッ
同時に2人が倒れ3人目も膝を着き倒れる。
「は!? な、何だぁ!? 何で兄貴とCが……っうわぁ!? て、テメェなんで後ろに! 何しやがった!?」
「教えるわけないだろ、企業秘密だ」
今の大智の動きは誰にも見えなかったはずだ。その場から消えたと思ったらチンピラ2人が勝手に倒れたと思ったらチンピラ達の背後に居たのだから。
大智が1人だけ残した理由。それは
「金、出せや」
周りに聞こえないようにチンピラBに歩み寄り耳元で呟き離れ、ニヤリと口を三日月にし不敵な笑みを浮かべる。
「なんだと!? 何したかしらねえが調子に「うるせぇよ」……ッ!?」
まだ状況を理解できていないチンピラBに向けて威圧するように声を被せ、目を少しばかり細めて睨む。
するとチンピラBは体を小さくビクリと震わせた。
「お前ら三人の有り金全てだぞ? そしたら助けてやるよ」
「……! す、直ぐに!」
Bは直ぐに自分の分を出し気を失ってる2人の分も2人から抜き取り大智へと渡した。
「ふむ、金貨2枚と銀貨10枚、それに銅貨が40枚、まあいい、失せろ」
Bはダッシュでその場から立ち去った。
(……目付きが悪いと言われていたがこうも効果があるとは……何気に傷付くな)
これじゃあどっちがチンピラか分からない。
周りから視線を集めていたが、大智はそんな事は気にせず、ホクホク顔でその場から立ち去る。周りの傍観していた者達はただ呆然としてその姿を見つめていた。
ありがとうございました。