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馬車の中での話し合い

パッカラパッカラ、ガタガタゴトゴト


蹄の音と、車輪の音が耳に心地よい。

騎士長サマたちと一緒にいなければ人生初の馬車に大はしゃぎしていたことだろうーーーー騎士長サマたちと一緒にいなければ!!


絶賛馬車の中だ。頑丈そうな木でできていて、赤いクッションがひいてある、高級そうな馬車の中。

騎士長サマたちさえいなければ、めっちゃくちゃ喜んでたろうな、俺。


今、馬車内の空気はかなり重い。もちろん物理的にじゃねぇ、心情的にだ。

なんで誰も喋んねぇの?俺を馬車の中に入れた騎士長サマでさえ何も喋らねぇ。

そしてこっちをチラチラ見てくる。時々緊張した面持ちで何かを喋ろうとしてくるが、喋ろうとするだけ。


こ・れ・は、俺が喋るしかなかったりするのか?

だって、ほら騎士長サマたちが何かを期待するようにこっちを見ている。

「この空気をどうにかしてください!」みたいな感じで。


はーっ、覚悟を決めるかぁ、幸い話したいことはあるしな、前々から思ってた疑問。

すーはー深呼吸よーし。じゃこの重い空気をどうにかしてやろう!


「あの、王国騎士ってなんなんですか?」


それを言った瞬間、こっちをチラチラ見ていた騎士も、気まずくて視線を外していた騎士も、こっちをガン見した。「本気で言ってんのかこいつ!?」みたいな感じで。

だってしょうがねぇじゃねぇか。本気でわかんなかったんだよこっちは。


なんかいきなり王国騎士長だとか言われてさ、なんとなく小説とかゲームとかに出てくる騎士を想像してたが、一般市民の周りを臨戦態勢で囲んでるし、わけわかんねぇよ。

あ、そういや騎士達の外見説明してなかったな、アーマー着ててイケメンのザ・騎士って感じだ。

ふーん、イケメン見てドキドキとかほっぺた赤くなるとかそういうのがないってことは精神は男なんだな。よかった。


「あ、あの!」


ん?騎士長サマが声をかけてきた。やばい、気のせいかもしれないが、ちょっと怒ったような顔だ。

俺、なんか怒らせるようなこと言ったか?どうしよう、殴られたら。

こいつら騎士っていうんだからけっこうマッチョだし。


「そ、それは我らがあまりにも軟弱すぎたり、だらしないからどうなっているのだ、お前ら本当に騎士か、という意味だろうか?」


え?俺の言ったことをそういう風に捉えるのか?ネガティブすぎねぇか?

あ、いや、王国騎士という職業があまりにもよくしられているから知らない人はいないだろう……と思ったからそう思ったのか?……後者の方だろうな。さっき王国騎士だってそのまんま言ってたから。

知られていなかったら一応説明するだろうし。

よし、速やかに訂正しなければ!


「違います!そういう訳ではなく、あなたたちがどういった職業をしているのか純粋にわからないのです。ただのおっさん……失礼しました、おじさんの集まりなのか、それとも偉い方々なのか、私にはわかりません。」


ちょっと口が滑った。おっさんなんて言って怒らせたらどうするつもりだ、俺。

慌てて訂正したが、なかったことには出来ないようだ。やばい。隣の騎士が明らかに怒っている。

「おっさん…?」とかつぶやいている。こええ。ご、御免なさい!


「うえっへん。こら、そんなことで怒るな。失礼した。そういうことだったのだな。王国騎士とは王国の騎士の中でトップの強さと賢さを持ち、その力を王に認められ、王に使えている騎士のことだ。王の名の下にこのエリウス王国の事件を解決する仕事をしている。」


へー…警察みたいなもんか。王国騎士って凄いんですね、と言おうとしたところで二つの重大な事実に気づいた。

一つは“事件を解決する仕事”ということ。

だから騎士が行くところに事件ありというわけで、俺のところに騎士ありというわけで……

俺、事件に巻き込まれた?多分、何らかの事件があって、その現場に俺がいたのだろう。

下手したら事件の犯人に疑われているかもしれない。


二つ目は“騎士の中ではかなりの地位を持ちそうだ”ということ。

騎士長サマは王国騎士の上に騎士長だ。もしかしてかっなーり偉い人なのでは?

どうしよう、おっさんって言っちまった。やばい。

い、いやまだそうと決まったわけじゃねぇ!

見栄で言ったって可能性もちょっとは、ちょっとはあるだろう!


「ダスガ様は騎士長なんですよね?ということはかなり高い地位をもっているのですか?」


願いを込めて聞いてみる。


「いや、そうではない。わたしはただ王国騎士をまとめる仕事をしているだけで、地位は他の王国騎士と変わらな「違う!」…おい」


よかった、最悪の事態は免れた。とか考えた瞬間に女性の否定する声が聞こえた。

隣の騎士が言ったようだ。茶髪のショートカットの美人さんで、真っ赤なつり目が印象的である。

よく見るとその美しい顔を怒りに歪ませてこっちを睨み付けている。ひいっ


「騎士長様は!威張らない素晴らしいお心をお持ちだから!他の王国騎士とおんなじ地位だなんていってるだけよ!ほんとはとっても偉いんだから!それなのにあなたは!そんなことも知らないで!お、おっさんの、ただのおっさんの集まりなんて抜かして!不躾に地位を聞いて!挙げ句の果てに騎士長様を名前で呼ぶなんて! なんて馬鹿「ロレッタ、謝れ!」あっ…!」


突然立ち上がって一気にまくし立てる美人さんにはい、ごめんなさいと言おうと思ったら騎士長サマが間髪入れずに叱った。

いや、騎士長サマ、俺が悪いから!美人さんが怒るのはもっともだから!自分より上の人をただのおっさんとか言ったら誰でも怒るよ!…なんか周りの騎士がまたかーやれやれみたいな顔しとる。いつものことなのか?


「…ごめんなさーい」


これでもかってぐらいふてぶてしく謝られた。いやぁ、美人さんはどんな顔をしても美しい。

「いえ、私も悪かったですし」

美人さんに謝られたらすぐに許したくなるな、この件は百パーセント俺が悪いし。


「すまない、この子は王国騎士…騎士に強い憧れを抱いているのだ。はぁ、どうにかならないか…」


騎士長サマにも謝られたが本当に俺が悪いし、王国騎士に憧れてるっつーより騎士長サマに憧れてるんじゃねーか?…あぁ、鈍感ってやつか、いい年してよぉ。それとも結婚してるから無視してるだけかぁ?

今度結婚してるかどうか聞いとこっと。


「本当に済まない、騎士たるもの、男たるものは強さに関係なく女性は守らなければいけないのに…」


うっ…女扱い、か。確かに俺今女だが、こう、女の子!みたいな扱いされるとむず痒いなー…


「あの、女扱いはやめていただけないでしょうか?お気持ちは有難いのですが、女だと思われたくないので…」


試しに頼んでみた。なんか驚かれたがこれは譲れん!


「ふむ…わかった、女性扱いはやめる。あと、あなたが女性だということは王以外に言わないようにする。

知らなかったとはいえ失礼した。…おい、お前らも言うのではないぞ?」

「「「はいっ!」」」

「ありがとうございます!」


なんか事情があって性別を偽らなくちゃいけねぇ系薄幸少女だと勘違いされたがまぁ、いっか。


コンコン


ん?ノックされた。美人さんがドアを開けると、馬車を運転する人が立っていた。御者とか言うようだ。


「なに?」

「はっ!王宮に到着いたしました!」

「ご苦労さま」


どうやら目的地についたようだ。チンピラだった方が良かったかもな、冤罪かけられるよりは……


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