【彼の見た今日】
それは、ある晴れた日のことだった。
私が机に向かって仕事をしていると、あわただしくドアが叩かれた。
そういう叩き方の時は、大抵事件があった時なので、私は少々嫌がりながらも「どうぞ」という。
すると一人の兵士が駆け込んできて、「青い羽の不審者が飛んできました!!」
と叫んだ。何を言っているんだこいつは。
かなり気が動転しているようなので、落ち着かせてから詳しく話を聞き出す。
どうやら、王宮の門の上空から青い羽を背中につけ、ローブを深くかぶった何かがおりてきたらしい。
結構な騒ぎになっているようなので、急いで現場に向かうことにする。
現場に到着すると、部下の兵士たちがその不審な何かを取り囲み、臨戦態勢に入っていた。
……迂闊な。下手に刺激して暴れられたらどうするつもりだ。
そう思った瞬間、不審な何かが顔を上げた。同時に兵士たちが剣を向ける。
ジャキン!と音が響いた。
そして不審何かが辺りを見渡し、動きを止めた。
静寂が訪れる。
一人の兵士が私に「どうしますか?」と目で聞いてきた。……うむ、私が何か言うか。少々気が進まないが……
「お前は誰だ?」
おや、何かが驚いた。何か考え込んでいるようだ
「俺は……」
美しい声だ。まだ少女か。
いや、油断はできない。魔人かもしれない。
いやいや、御伽噺の中だけの話だ、それは。
「アーリだ。よろしくな」
不審な何か改めアーリが名乗った。偽名かもしれないがな
まぁ、よろしくということは少なくとも我々と友好的な関係を作ろうと思っていることだろう
よし、こちらも名乗るか……
「私はエリウス王国騎士長、ダスガだ。こちらこそよろしく頼む」